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自衛隊で1番怒られた時、私は、食いだおれ太郎の紙袋を下げていた

陸上自衛隊の新隊員教育には、それぞれ3か月の前期・後期教育がある。その前期教育が終わったお祝いに、班員6人で大阪へ旅行に行った。

休みは5日間。5日目は門限が昼の12時で、「躾(しつけ)時間」として11時30分帰隊となっていた。「躾(しつけ)時間」とは、門限に余裕をもって行動するために30分ほど早く帰隊するよう決められた時間のことだ。なので、実質11時30分が門限のようなものである。そのため、中3日の2泊3日で予定を組んだ。

地方から伊丹空港へ降り立った。辛い前期教育を終えた開放感と達成感、初めての大阪、USJ、本場の粉もん…全てが楽しくてたまらなかった。
底無しの体力をもちながらも外出を制限されお金の使い道がなかった私達は、ここぞとばかりに夜を徹して遊び回り、食べまくり、買いまくった。

そんな最高の2泊3日はあっという間に過ぎ、駐屯地へ帰る日がやって来た。しこたま買い込んだお土産を両手に、伊丹空港へ向かった。そしてカウンターで搭乗手続きをしようとした瞬間。

「申し訳ございません…お客様のお名前は、予約にございません。」

6人とも一瞬で静かになった。

「え?でもおととい伊丹空港に着いたんですけど…?」

「少々お待ちください。お調べいたしますので。」

え?どういうこと?

「お待たせいたしました。お客様、往路は伊丹空港着なのですが、復路は関西国際空港発となっているようです。」

えー!!!!!!!

「ただ、今から関西国際空港に向かわれても、もう間に合わないかと思います。伊丹空港もすでに最終便が出た後です…。」

全員が硬直した。
どうしよう。終わった。

しかし、このグランドスタッフさんが神であった。

「お客様、もしよろしければ今夜は伊丹空港最寄りのホテルに泊まっていただいて、明日の朝一の便に変更いたしましょうか。」

「ありがとうございますっ!!それでお願いします!!!」

神対応なうえに変更料も取られず、ホテルまで教えてくれた。神である。
思いがけず大阪滞在が1日延びたが、誰1人楽しめる心境ではなかった。すぐに班長(上司)へ報告の電話をすると、「分かった。とりあえず事故のないように帰って来い。」とのことだった。

そしてコンビニで買ったごはんをホテルの部屋で食べながら、空港から駐屯地までの所要時間を計算した。しかし、どう頑張っても11時45分にしか着かない。躾時間には遅れるが門限には間に合う。どうだろう、やっぱりだめだろうか。

翌朝の始発便に乗り、そこから高速バスに乗り、タクシーでなるべく飛ばしてもらって帰隊した。計算通り、11時45分だった。
恐る恐る教育隊に戻ると、激怒した班長が仁王立ちで待ち構えていた。

「お前ら、そこに並べ。」


6人でしゅんとしながら横一列に並ぶ。

「まず、遅れた理由を説明しろ。」


6人の中で1番年上だった班員が、報告済みの事情をもう一度説明した。明らかに自分たちの確認ミスが原因だったため、許される余地は微塵もなかった。

そこからは、人生でこんなに怒られたことはないし、後にもないだろう、というくらい怒られた。自衛隊において時間を守ることの大切さ、その自覚に欠けている、団体行動を乱している、という内容が延々続いた。自業自得であるため、ひたすら耐えるしかない。

最終的に立ったまま40分間説教が続いたのだが、最初の10分で頭がうなだれた時、ふと、自分の手に持っているお土産の紙袋が目に入った。
赤白青のストライプ柄の服を着た食いだおれ太郎が、にこやかに小太鼓を叩いている。班長は激怒しているのに、やたら穏やかな太郎氏に気分が紛れた。

ありがとう大阪、また必ず遊びに行くよ。

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