旋盤でできるIoTオプション
前回は旋盤における生産性向上案を幅広く紹介させていただきました。その中で、IoTに関しては後術するとしてましたので、今回は旋盤におけるIoTシステムに関して、どのような技術があるか、それらを活用してどのような生産性向上が測れるかをまとめようと思います。
※IoTシステムはそれ専用のSIerやメーカーがいますが、今回は旋盤メーカーが旋盤のオプションとして出しているものだけを考えます。
今年は設備投資の補助金が特に多く出ます。それらは一般的には、新分野や革新的技術のための投資ですが、正直老朽化更新に伴い、より良い設備を導入する費用が欲しいという企業は多いと思います。その際にIoT機能等を押して、デジタル化を押すことも一つの戦略です。
昨年発表されたものづくり白書2020でも製造業のデジタル化が求められており、IoT化に取り組んでいるところが多く紹介されていました。特集されていた会社がどのようなことをどのような目的で導入したのかを下記の記事にまとめてあります。
このまとめでは、IoT化の目的は、予防保全ではなく、変種変量生産への対応や技能継承である会社が多かったことがわかりました。
では旋盤のオプションでのIoTではどのようなことができるかを紹介させて頂きます。
1. 設備の稼働状況の見える化(遠隔) → 停止時間を短くする。
一般的に工場のIoT化で最も言われている、設備の稼働状況をリアルタイムで遠隔から監視できるようにするシステムです。ダッシュボードにしたり、2D工場レイアウトなど様々な表示方法があります。停止時にメールで通知する機能があるメーカーが多かったことからも、人が現場から離れている、自動化している工場での導入を想定していると思われます。
効果
工場全体の稼働状況を把握することにより生産計画を立てやすくなります。もちろん稼働状況だけでなく、計画も入力できるシステムが多く、どの機械でどの作業をするかを判断しやすくなります。
正確な停止時間・アラーム履歴を把握することで、原因の追求、分析ができ機械・工場全体の稼働率UPに繋がります。
よく見える化してどうするの?と言われますが、現状を把握してから自社で分析することが自社の強みにつながるため、見える化することは第一ステップになります。2020年のものづくり白書・コラムで出ている事例でも、変種変量生産に対応するため、見える化することが必要と考えている企業が多くありました。
2. 品質管理(ワーク毎の計測結果を残す) → トレサビ管理、ペーパーレス化
機械的に機上測定して工程集約する機械が増えてきていることからも、この分野が今後はますます増えてくると思います。ワーク毎の加工データ(プログラム、治具、工具、時間、負荷等)を計測結果とともに記録しておく機能です。トレーサビリティ管理にも使うことができます。
効果
加工データを記録することでトレーサビリティ管理を自動化できることです。さらに計測まで行い計測結果(OK,NGの判定)も自動で残すことで、いち早く旋盤側の異常に気づくことができます。計測機で品質データ管理を行う場合、別途旋盤のデータとの紐付けが必要になります。さらに旋盤側のデータではOK,NGの判定がわからないため、後から分析する際に不便です。
3. リモートサービス(リモート診断)
メーカーのサービスに連絡した際、メーカー側がユーザーの画面やNC状態を遠隔からも見れるシステムです。これはメリットしかなく、既に導入しているメーカーがほとんどです。今後はVR等で操作盤だけでなくメカ的な修正もリモートで支援できるようになると思います。
効果
サービス対応が早くなります。今まで電話やメールで写真を送付して診断を仰いでいたことが不要になります。メーカー側も電話対応の時間削減、現地調査時間の削減ができます。(シチズンは現在でも可能)
4. 予防保全、自動補正、自己診断
主軸や送り軸等の過負荷を検知して機械が故障する前に知らせる、停止する機能です。AIを使用して変化を検知して、自動で自己診断して結果を知らせる、自動で補正する等が可能です。中村留精密では、時間や測定結果に合わせて最適な熱変位補正モデルを自動生成するソフトも出ています。特に工具主軸の過負荷検知と熱変位補正で導入が進んでいる。
効果
主軸の過負荷等、作業者ではわかりにくい部分の変化を自動で検知、知らせる事により、大きな故障を防ぐことができる。熱変位は時間帯や季節によっても変わるので、AIで自動補正する事により、誤差を減らすことができる。
5. 工具監視
工具摩耗の補正値を監視するソフト(アプリケーション)です。補正値の更新履歴をグラフ化したり、摩耗限界値の設定でチップの交換時期を通知したりすることができます。
効果
工具交換時期や工具寿命の計画と実績を記録する事により工具寿命を製品精度に合わせて正確に管理することができる。
今回は簡単に旋盤のオプションでできるIoT化をまとめてみました。実際は、旋盤以外の設備も使用しているところがほとんどですので、工場全体でのIoTシステムの導入を検討したほうが、工場全体での生産性向上に繋がりますのでまたそのようなシステムも紹介できればと考えています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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