楽天IR戦記 第1章(9)ディールの完了
2006年3月23日に増資払込が完了しました。約1060億円を調達しました。うち860億円が銀行借入の返済に充てられ、200億円はカード会社のシステム投資に充当することとなりました。なんとか財務上の危機を乗り越えることができました。
発行済株式総数は9.7%増加し約1300万株となりました。EPSの希薄化が起こり、理論上の株価は、同程度下がったことを意味します。しかし株価は、増資公表前の9万7200円からいったんは希薄化を嫌気し下落しましたが、募集価格の決定の前提となった3月14日には9万8100円とむしろ上昇しました。ロードショーを通じた投資家との対話で、希薄化以上に、見えていなかった価値を新たに見出していただいた証左です。投資家からの評判もまずまずで、特に海外から多くの注文が集まりました。証券会社からの割当数が足りなかった投資家は市場で買い増したようで、3月中には株価は10万円を超えました。
潜在的な成長が期待できる日本のインターネット市場で、楽天が様々な分野でマーケットをリードする状況を妄想させ、シェアや成長率などのトラックレコードを用いて期待値をしっかりコントロールした結果だったと思います。2週間のロードショーで、買う、買わないを投資家に判断してもらわなければならないディールでは、確実なやり方でした。
大妄想に向けたビッグチャレンジではなく、中くらいの妄想とチャレンジに投資家の賛同を得たと言えましょう。
しかし私にとっては、この転職が人生のビッグチャレンジだったと実感する6カ月でした。
第1章 終わり
*写真AC studiographic
IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!