音大卒から投資助言業CEO、起業するためにはリスキリングは不可欠だった
私は現在3つ目の学士号の取得に挑戦しています。これまで、武蔵野音楽大学音楽学部を卒業し、青山学院大学のMBAを退学し(TOEIC以外の単位は取得)、慶應義塾大学法学部(通信教育課程)を卒業し、そして今年10月に心理学の資格の取得を目指し産業能率大学に入学しました。これだけ経験してきたので、人生の半分以上は学生です。
リスキリングを始めようと思ったきっかけ
私は、武蔵野音楽大学を卒業し、社会に出ました。音楽大学では音楽について学ぶため、ビジネスに関することは学習しません。そのため仕事に就いてから、非常に苦労しました。ビジネスマナーもわからないし専門用語もわかりません。そこで仕事に役立つスキルを身に付けたいと思いました。新聞をはじめ、ビジネス書(ビジネスのノウハウが学べる本やハーバードビジネスレビューなど)を読んでいましたが、それだけで知識は身につきません。そこで仕事の後に社会人向けの講座に通うことにしました。まずはマーケティングから学習しました。そこで学んだ知識は今も覚えています。他にも経済に関することや事業戦略に関することなどいろいろ学びました。当時、どの講義を受けても新鮮そのもので、楽しかったです。講座を通じて社会人の学びがとても面白いことを知りました。
「大学に行こう」と思った理由
しばらく講座に通っているうちに、これらの講座に通い知識を身につけても、「私はビジネススキルを身につけた」と証明することができないということに気づきました。授業料は自分で払っていました。毎期受けていたので、それなりにコストはかかります。「こんなにお金を払って、時間も費やして勉強して知識を身につけても、証明するものがなければ何もやっていないのと変わらない」と思ったのです。ちょうど通っていたのが、早稲田エクステンションセンターということもあり「勉強したことを証明するなら、大学に行くことだ!」と思いました。そこで「ビジネスに関して総合的に学ぶならMBAだ」と思い、青山学院大学の国際マネジメント研究科に入学しました。ここでの学びは楽しかったです。マーケティングやビジネス戦略をはじめ、当時の仕事であった投資に関しても深く学びました。授業を聞きながら、「これは私の仕事のヒントになるアイデア!」と何度も思ったことがあります。英語が苦手な私はTOEIC以外の単位を習得し退学となります。しかしビジネスに関する基礎を学ぶことができたので、自信がつきました。
次は、慶應義塾大学の法学部の通信教育(以下、慶應通信)に入学しました。当時、投資助言業の代表取締役で法律の知識が必要だったことと、以前より法律の勉強をしたかったというのが理由です。慶應通信といえば、日本で一番難しい通信教育の大学と言われています。卒業するまでの間、何回もレポートにも試験にも落ちました。正直落ちても、あまり落ち込まないので、めげずに受けていました。「本当に卒業できるのかな?」と何度も思いましたが、気がつくと卒業論文の申請をすることができるだけの単位を取得していました。卒業論文に時間を費やした大学最後の1年は起業1年目と重なり大変でしたが、法律(刑法)に自分が持つ金融の視点を取り入れ論じることができた点においては、とても楽しかったし、勉強になったと感じました。これは社会人にしかできない卒業論文だなと思ったものです。
慶應通信のいいところは、他学部の講義のスクーリングも履修できるところです。私は法学部なので法律を中心に履修しますが、投資に関する仕事をしていたので経済学部のスクーリングもたくさん受けました。そこでの学びは業務に役立ったものです。そのためスクーリングに関する単位は、卒業に必要な単位の約2倍取得しました。
現在は、AI音楽やAIアートをビジネスとしていますが、私は単にプロンプトだけに頼るのではなく、音楽の場合は「自分で演奏したもの+AI」、アートの場合は「自分で3Dモデリングしたもの+AI」などと「人間の知識+AI」で作品を作ることを大切にしています。プロンプトだけで作るものと、「人間の知識+AI」で作るものでは、どのような差が出るかなども実験しました。後者の方がより優れたものができます。このような作品を作る中で「人の心理」をよく理解しておくべきだと感じることが増えました。そこで心理学の資格を取得するために、産業能率大学の通信教育に入学しました。
大学に通ってよかったこと
大学で学ぶともちろん「卒業資格」を手にすることができます。それはメリットの1つと言えます。しかしそれだけではありません。講座に通う場合や資格を取得する場合は通常「自分の学びたいもの」しか選びません。「余計なものにお金も時間も使いたくない」というのが本音でしょう。しかし大学の場合、卒業するために必要な単位を取らないといけません。好きなものだけでは単位が十分取得できない場合もあります。そうすると「好きではないもの」「こんな教科なんて知らなかった」というものも履修することになります。そういう教科を履修することで世界が広がります。例えば私は、慶應通信で学んだ行動経済学がそうでした。法律の勉強に行ったのに、そこでたまたま履修した経済学部のスクーリングで行動経済学という学問に出会いました。それはまさに目から鱗で、その講義を受けてから行動経済学の本を何冊も読みました。この知識は投資の仕事にも多いに役立ったものです。大学で学ぶと、視野が広くなると思いました。
私の勉強方法
社会人の勉強はラクではありません。時間がない中で多くのことを覚えていかないといけません。そして復習する時間も限られます。特にスクーリングの場合、授業から試験が近いということもありました。そのため、授業中にとったノートやメモを試験勉強用に役立つようにするために、色々工夫しました。
通学・通信教育を通じて私は以下の学習方法を身につけました。
授業中(スクーリングなど)は、配布物がない授業の場合は、授業内容を全てパソコンで入力する。配布物がある場合はそれに直接書き込む。あとで見返した時に思い出せるようにする。
自分の仕事に関係する授業の場合、自分の仕事をイメージしながら授業を聞く。そうすると、全体のイメージが掴みやすい。その結果理解が早まり、覚えることもできる。
レポート(4000文字)や卒論などまとまった文章を書かなければいけない時は、夜や週末にまとめて時間を取る。徹夜することも多くある。
通信教育のテキスト教科の場合、移動中のカバンの中には教科書と赤ペンを入れておく。時間があると教科書を開き、重要なところは赤ペンで線を引いたりメモを書き込んだりする。
質問がある時は積極的に行う。自分がした質問は忘れないから暗記にも役立つ。
子供の頃の勉強のように、ただ暗記するという勉強方法はやめる。何かイメージしやすいものと結びつけるだけで、暗記がラクになる。
<例>
・ビジネスモデルを学ぶ場合:よく行くお店・好きなブランドなどを想像する
・法律を学ぶ場合:自分の仕事や具体的な事件をイメージする
通信教育という選択肢
私は通学も通信教育も経験しました。通学は仕事との両立がハードです。特にグループワークなど、仲間と一緒に課題をこなす時は、自分のスケジュールだけではできないので大変です。それに比べ、通信教育は自分のペースでできるのでやりやすいです。
学費の面から考えても、通信教育は勉強しやすい環境です。以前は通信教育というと、あまりいいイメージがなかったかもしれませんが、リスキリング時代の今、「通信教育=社会人大学」のようなものです。積極的に活用すべきだと思います。
通信教育を継続するポイントは、「諦めないこと」です。思うように勉強する時間がとれなかったり、テストで不合格になり落ち込むこともあるかもしれません。しかし卒業というゴールを目指し、諦めず努力し継続すれば、いずれそれを手にすることができるでしょう。
もちろん業務でも知識を身につける
ここでは大学での学習を中心に書きましたが、それだけで十分学べるわけではありません。業務を通じて得られる知識はどんどん吸収していくべきです。私は、DTPをきっかけにデザインなどを学びました。またAIも業務を通じて学習しました。それにより今、「AI+音楽」「AI+アート」など幅広い活動を行うことができるようになりました。
業務で身につけた知識をよりプロフェッショナルにするためには、資格の取得をするといいでしょう。例えば、私は業務でデザインについて学びましたが、より美しいものを作るために色彩関係の資格を取得しました。
同時に複数の資格を受験することはできますが、大学は資格のように同時にいくつもというわけにはいきません。だからといって「大学だけ」だと学びの範囲が狭くなります。また全てのものが大学で学べるわけではありません。だからこそ、業務や資格を通じた知識の習得も大切だと考えます。
複数の大学を経験する中で気づいたこと
私は以下の投稿をしました。
これまで異なる学部で学んできたので、専門教科において同じことを学ぶことはありませんでした。ところが、心理学の資格を取得するために入学した産業能率大学は「情報マネジメント学部」ということでビジネスに関することを学ぶ場で、一部の教科がかつて青山学院で学んだことと重なります。私は心理学に関するコースを選択しているので、履修する教科は心理学が中心となりますが、とはいえマーケティングなども学習する教科に含まれています。そこで久々にマーケティングについて学んだのです。マーケティングの基礎知識については、かつて学習したことと変わっていません。しかし、前回の青山学院で学んだ時から、これまでの間にマーケティング理論は進化しています。例えば、今ではSDGsやESGなどという言葉が一般的に使われており、ビジネスにも取り入れられています。しかしこれらの用語が登場する前には、似たことはあったとしても同じものがビジネスの場で議論されることはありませんでした。他にも以前なかった理論がこの10年ほどの間に登場するということもあります。このように学問は時代に合わせてどんどん進化しています。特にマーケティングは新しいものが出てくる分野です。そこで、「一度リスキリングしたことも、再度学び直さないと時代に置いていかれる」と感じたものです。
一方、衰退する理論もあります。かつて「ガラケーのマーケティング」を学びました。私が学んだ時はガラケーが主流でしたからこのような講義があったのです。しかし今はもう時代が違います。ガラケーの知識は、スマートフォン&SNSにブラッシュアップしないといけません。
今、日本では「リスキリングしよう」と言われていますが、いずれは「リスキリングした知識をブラッシュアップする学びの場」というのも求められるのではないかと感じたものです。
リスキリングは未来を変える
私はリスキリングがあったから、現在の私があると思います。それがなければ、音楽大学から株式投資の世界で活躍したり(「週刊ゴールデンチャート」という証券会社・投資家向けの情報誌に記事を執筆していたこともあります)、起業したりすることは不可能だったでしょう。私は「この知識を身につけたい」と思うものを積極的に学ぶようにしてきました。その結果、今の私があると思います。
学びに終わりはありません。私自身、まだまだ学びの旅を続ける予定です。たくさん新しいことを学び、やりたいことを諦めずに実現していきたいと考えています。この記事をお読みの皆さんも、もし「何かに挑戦したい」と思っているなら、今まさに始めるタイミングなのではないでしょうか。大学に関する情報を調べる、学びたい分野の本を買うなど、どんな小さなことからでも始められるといいでしょう。私の経験が皆さんの一助になると幸いです。リスキリングは一歩を踏み出す勇気があればできると私は思います。
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