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Core Web VitalsはSEOに効果あるの?背景や理由も解説します。

こんにちは、フリーでSEOコンサルタントをしている小林(@genki_iii)です。

--- Who I Am ---
・本名:小林元気
・生まれ:長野県松本市(いいところです)
・最初はWebエンジニア
・フリーランスでライター兼SEO支援
・SEOコンサルティング会社にてSEOコンサルタント
・独立し、SEOコンサルティング事業(現在)

2021年にCore Web Vitalsが公式リリースされランキングシグナルに含まれるようになってから約2年が経ちました。現在Core Web Vitals改善に取り組んでいる企業様は多くいらっしゃると思いますし、僕もよく改善効果についてもお客さまから質問を受けたります。

僕自身、今までいくつものサイトで複雑なCore Web Vitalsの問題改善に取り組んできました。
また、リリース前にはCore Web Vitalsのソースコードを読んだり、Chromeのエンジニアチームと話し、問題があった場合には開発用GithubリポジトリでIssueに挙げてもらったりもしていました。


↓↓↓実際のTwitterでの会話の様子↓↓↓
LCPに関して、恐らく意図されていないであろう挙動を指摘するための質問。

ChromeのエンジニアであるNicolasさんの返信。質問に対して簡易テストを行い挙動を確かめてくれただけでなく、議論後にはこの議題について、GithubのIssueにも挙げて解決してくれました。


こんな感じで、リリース前から検証をしながら仕様を確認してきたため、Core Web Vitalsに関しては結構知っているつもりです。そしてもちろんそれに伴い実装もしてきたため、その効果も把握しています。

2023年現在、ある程度Core Web Vitalsの意味を理解して改善を行っている方もいれば、よくわからないがランキングにも重要そうだからやっているという方、どちらもいると思います。

そこで今日は、Core Web VitalsはSEOに効果があるのか?ということと、その理由や背景についてお話ししたいと思います。

まず、いきなり結論です。

結論:直接的な順位影響が見られることはほぼ無い

僕は複数のサイトで、複雑なCore Web Vitalsの問題改善を行ってきました。
その経験を以て、ほとんどの場合、直接的には順位にほぼ影響は出ないと言えます。

僕は順位影響が出ないことがわかっているので、順位上昇目的での提案はしません。あくまでお客さまがUX改善の指標の一つとして使いたいという場合のみ、お手伝いするだけです。
そのように、あくまでUX改善目的で数万ページを対象に改善を行い大半のページで「良好」を達成したことが何度もあります。が、順位に明確に影響が出たケースはほぼありません

ただ、元々指標が「不良」であるだけでなく、数値としてもめちゃくちゃ悪く、実際の直帰率も非常に高かったページを改善した結果、直帰率等のユーザー行動指標も大きく改善され、その影響なのか若干の順位上昇が起きたことはあります。ただ、まあその程度です。

Googleは、あれだけ大掛かりな発表をして、動画やブログ、オフィスアワーなどで布教活動を行ってきた指標なのに、なぜランキングへの影響をほとんど無い程度に設定しているのでしょうか?

Googleは意図的にランキング影響を大きくしていないというのもありますが、そもそも影響を大きくできないのだと僕は思っています。

なぜGoogleはCore Web Vitalsのランキング影響を大きくできないのか

なぜ、GoogleはCore Web Vitalsのランキング影響を大きくできないのでしょうか?理由は主に2つあると思います。

1. 全世界の達成率
2. ユーザー体験と関連が低い評価軸の存在・ハックの可能性

1.全世界の達成率

GoogleはChrome UX ReportのRelease notesで、全世界のサイトの何%がCore Web Vitalsの「良好」を満たしているかを毎月公開しています。

徐々に増えてはいますが、2023/6時点で44.1%です。
Core Web Vitalsがリリースされた2020/6は25.34%ですから約20%の増加です。
が、リリースから2年経って半分以上のサイトが上手く対応できていません。

現在Core Web Vitalsの対応できていないサイトのコンテンツ品質が良かった場合、Core Web Vitalsの重要度を高めてしまった時に検索結果に及ぼすネガティブな影響は非常に大きいものになります。

2.ユーザー体験と関連が低い評価軸の存在・ハックの可能性

一般的には「実際のユーザー体験を考慮した指標」であるということがCore Web Vitalsの価値とされています。しかし実際には、ユーザー体験とは関係のない部分での評価要素があります。

最も簡単で代表的な例を挙げると、CLSです。CLSはユーザーの意図しないレイアウトのずれを検知する指標です。ユーザーのインタラクションと関係なく起きるアニメーションなどによるレイアウトのずれは、基本的にCLSの数値を悪化させます。

しかし、そのCLSでは、CSSプロパティを変えるだけでその数値が大きく改善するケースがあります。例えば、アニメーション等によるレイアウト変更の際に使用するCSSプロパティを、以下のように変えるとCLSの数値が「不良」から「良好」に改善されることも少なくありません。
top / right / bottom / left → transform: scale()
width / height → transform: translate()

これは、ユーザー体験とは全く関連のない「コードの書き方」だけに対して為されている評価です。

他にLCPという指標においても、表示に時間のかかる最大コンテンツをsvgにしてエントリから外したり、表示に時間を必要としない要素を調整して最大コンテンツにするといった、ハックに近いような方法で数値改善することもできてしまいます。

この単なる「コードの書き方」や「ハックされたDOMの変化」をGoogleが評価してランキングに影響させてしまうのは、関連性の高いコンテンツを出すというGoogleのポリシーからは外れてしまいますし、検索ユーザーからしてもこんなことで自分の得る情報が変わってしまうなんて、たまったものではありません。

このような理由で、やはりGoogleとしてはCore Web Vitalsをランキングを実際に動かすほどの指標には出来ないのだと僕は思っています。

※細かい話をすると、他にもCore Web Vitalsの仕様はHTML・CSS・JavaScriptの「自由度」と相反することの問題や、Chromeのみでのユーザー体験が計測対象であることの問題などもあるのですが、少しGoogleの都合というところからは逸れてしまいますし書ききれないので、主なこの2つの理由だけ書き残しました。

そもそも根本的な計測システムに問題もある

このような「コードの書き方」や「ハックされたDOMの変化」を評価してしまう問題が生まれるのは、 そもそもCore Web Vitalsが根本的にブラウザ内ビューポートの視覚的な要素変化を捉えたものではなく、「DOM(またはノード)をベースに計測するシステムである」ことに起因すると思っています。

ブラウザ内ビューポートの視覚的な変化を捉える仕組みであればこういった問題は起こらないかもしれませんが、まあそれも現実的ではありません。もしやるとしたらブラウザ画面を録画してユーザー体験上問題のあった動きをAIを用いて数値化するというような重い処理が必要になると思うのですが、Googleからしたら運用リソース的にも開発コスト的にも全く割に合わなくなってしまうからです。

Googleの言葉ではなく結果を信じることが大事

GoogleのJohn Mullerは、2021年6月にRedditという質問サイトにて、Core Web Vitalsについて以下のように言及しています。

It is a ranking factor, and it’s more than a tie-breaker, but it also doesn’t replace relevance.

https://www.searchenginejournal.com/google-core-web-vitals-ranking-factor/415533/

つまり「タイブレーカーよりも大きいランキングファクターだが関連性に取って変わるほどではない。」ということです。

リリース直後には、タイブレーカー程度のものでしかないと言っていましたが、その1年後にはタイブレーカー以上のものだと表現を変えました。

いくつものサイトで、数万にも及ぶ大量のページで数値改善を行なっても全く効果が見られないのにこれを言われても納得感は無いのですが、、、。しかしまあ私の対応したページではタイブレークに近い状態のページがほぼなかったという事かもしませんね。。。
どちらにせよ結果として、大量のページに手を施して効果が見られないので、SEO目的で行う必要は特に無いと僕は思っています。

UX改善目的なら、Core Web Vitals数値改善をゴールとしないこと

とはいえ、最初の方でも少し触れましたが、Core Web Vitalsが全く使えないわけではなく、利用価値はあると思っています。UX改善です。

最近ではその手のつけやすさや計測のしやすさなどからCore Web VitalsをUX改善指標として採用されるPdMの方が増えてきているように思います。

僕も、お客さまが順位上昇目的でCore Web Vitalsを改善したいと考えている場合にはほぼ効果でないということをお伝えしますが、UX改善の指標として使いたいという場合には特に止めることもなく、お手伝いもします。

ですが、そういう場合に重要なことがあります。それは、

Core Web Vitals指標の数値改善 = UX改善

と捉えないことです。

ここまででお話しした通り、実質的なUXを改善していなくてもLCPやCLS、FID(INP)を改善することができるケースも多くあります。各指標の数値改善だけがKPIになってしまうと、本来のUX改善が達成されない可能性があります。
ただ数値を見て改善されたかどうかを判断するのではなく、ハックを使わずに、LCPの改善に至るまでに具体的にどの数値が改善されたのか(TTFB、JS解析など)を理解すること。さらに結果的に離脱率や滞在時間などのユーザー行動指標に直接的に影響を与えることができたのかによって判断することが大事だと思います。

さいごに

何か全体的にCore Web Vitalsの存在自体を否定しているような記事に見えてしまっているかもしれませんが、そういうわけではありません。

各サイトでCore Web Vitals改善が行われることによって、Google自体の検索体験の向上にも繋がっているのだと思いますし、もしかすると通信技術が十分でない地域や国でもWebにアクセスしやすい環境を整えてくれているのがGoogleなのかもしれません。

Chromeのエンジニアチームも素晴らしい活動をされていると思います。(リードエンジニアのAnnie SullivanもNicolas Morenoも、こちらの問題提起に快く対応をしてくれました)

ただ、あくまで一般的なサイトオーナーにとって重要なのは、どのくらいSEO面で順位影響があるのか?という部分だと思います。各サイトオーナーがSEO業界の人間のポジショントークで無意味な施策を行わずに済むように、という想いも込めて説明しました。


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