米国ファンダメンタルズとマーケットの展望
① 11月1日FOMCを終えて
11月1日に開催されたFOMCでは、「政策金利の据え置き」が決定された。市場では、主因として長期金利の上昇が追加利上げと同等の効果があるとの判断がなされたため、との意見が多数だが、これは政策金利据え置きの"理由"ではなく、長期金利市場への純粋な"牽制"だったのではと考える。長期金利の上昇というマーケットのスポットの要因で金融政策は決まる訳ではなさそうなので、やはり消費者物価や雇用は抑制のトレンドが感じられるもののこれら指標が一定程判断基準となったと考える。しかし、債務問題や地政学リスク等の多くのリスク要因を抱える米国では、物価と雇用を形成する企業の業績見通しも不確実さを増している。物価と雇用の強さのみに焦点をあてて適切な金利水準を定めても、企業側の雇用や社員の個人消費を刺激する以前に企業側の重荷となるだけになりかねない。以上を踏まえても、今後の利上げは考えづらく、「いつまで据え置かれるか」が焦点となろう。
② 米国10月雇用統計を受けて
11月3日発表の米国10月雇用統計を見ると、米国雇用市場が傾き始めてきたことが窺える。各種統計は対市場予想で、非農業部門雇用者数は下回り、平均時給は下回り、失業率は上回る、という総じて弱い結果となった。高金利がじわじわと企業サイドに反映されてきた結果と言っても過言ではない。金融政策の修正・変更等には"政策ラグ"があるため、即時の影響は出にくく、今までの高金利の影響が今後も少しずつ企業に反映されていくだろう。雇用市場の冷え込みは、今回だけのスポットの事象とは考えがたく、トレンドとして今後の雇用統計にも織り込まれていくと考える。
ここまで、米国金融政策と雇用統計をまとめると、
①Fedの利上げは終了。今後はいつまで金利を据え置くかが焦点となる。
②今後の雇用市場は徐々に落ち着きを取り戻してくるだろう。
③ 現米国マーケットの方向感と今後
米国の市場環境は方向感が定まっておらず、調整局面入りか。政策金利は天井が見え、米国10年金利は上昇基調にあったものの下落。金利下落に伴って株式市場ではリスクオンの姿勢を強めた投資家の買いが一時的に株式市場の上昇要因となったか。今後の米国金利は総じて下落基調を予想するも、唯一の懸念点としては、また"逆イールド"に戻りかねない、ということだ。これに対処するには、Fedは早急な利下げを開始する必要があるが、現実的ではない。一方、原油という側面から金利市場を見ると、地政学リスクを孕む原油価格は物価に反映されるため、消費者物価のアップサイドリスクが懸念される。これは債券市場にはプラスに働き、金利の大幅下落といった債券市場の機能低下は抑えることができると見ている。金利市場についてまとめると、「金融政策の側面からは金利は下落トレンドも、原油価格の側面からは金利は上押し圧力となり、次回FOMCまでは、米国10年金利は横ばい~若干下げの展開となる(4.5%~5.0%間の推移)」と予想。一方、株式市場は金利の下落トレンドに影響され上昇していくのが教科書的であるが、雇用の冷え込みや個人消費の落ち込みが懸念材料となり、株式市場は下押し圧力を受け、上値の重い展開が続くと予想。VIX指数を見ても、20を割り込むことが何回か確認でき、全体として米国株式市場に対して警戒感を高めているか。米国株式市場については、「今後数ヶ月は、金利下落以上に個人消費や雇用などのマクロ的な要因が重しとなることで、上値の重い展開が続く」と予想。また、今まではドルの価値が購買力平価の観点からも異常に高く、米国企業・経済を下支える一因となっていたが、金利の天井が見えたことでドル高は一服か。対円のドルについては、日銀の金融政策修正が命運を握っており、市場は早くも来年4月の大幅修正を完全に織り込んでいる。しかし依然、対米国における日本の金利水準は低く、高金利の据え置き予想の強い米国と比較し投資妙味は薄い。ドル円は今後暫くはドル高が引き続きのトレンドと予想。ドル円については、「今後数ヶ月は、日米間の金融政策の違いが完全に埋まるまではドル高基調にある」と予想。
以上が、今後数ヶ月(とりあえずは12月FOMCまで)のマーケット感である。
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