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【経済の原理】逆イールドを警戒すべき理由

2022年7月以来続いていた逆イールドは、2024年9月のアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の利下げによって解消されたと判断してよい水準となりました。

経済が不安定な局面では、多くの投資家が市場の動向を注視し、特に「逆イールド」という指標に注目しています。

逆イールドは、過去のリセッション(景気後退)の前触れとして多くの注目を集めてきました。

本記事では、逆イールドの原理や発生する理由、経済全体と株価への影響について解説させていただきますので、ぜひとも最後までご一読いただけますと幸いです。


逆イールドとは

逆イールドとは、米国債において短期金利が長期金利を上回る現象です。

通常は、長期債の方がリスクが高いため、長期金利は短期金利よりも高くなるのが一般的です。

しかし、逆イールドが発生すると、投資家が長期の不安定性を強く懸念し、長期債券に対する需要が増えるため、長期金利が低下し、短期金利を下回る状況が生まれます。


逆イールドが発生する要因

逆イールドが発生する背景には、次の2つの主要な要因があります。

利回りと債券価格の関係

債券の利回りは、債券価格と反比例します。投資家が長期のリスクに対する懸念を抱き、長期債券を買い求めると、その価格が上昇し、利回りは低下します。

これにより、長期金利が短期金利を下回る「逆イールド」が発生します。特に、短期金利がインフレ抑制のために中央銀行の利上げで上昇しているときに、この現象が見られます​。

債券価格と金利の関係については以下の記事にまとめております。


逆イールドが解消される時の経済状況

逆イールドが解消されるのは、経済がすでに悪化している可能性が高い局面です。

これは、投資家が経済成長の減速や景気後退を予測し、長期債券に対する強い需要が続いているためです。

また、逆イールドの解消後に株価が下落することが多く、景気後退の手前にあると見られています。

逆イールドが解消された後、中央銀行が利下げに転じるケースが多く見られますが、これはすでに経済が深刻な状態にあるため、株価に対する影響も大きくなります​。


景気後退を判断する指標

景気後退を予測するためには、逆イールド以外にもいくつかの指標があります。


  • GDPの成長率
    経済が2四半期連続でマイナス成長を記録する場合、リセッションが公式に認定されます。

    ただこちらはタイムリーに分かる指標ではないため、答え合わせに使用する情報となります。


  •  失業率
    失業率は、労働市場の健全性を測る重要な指標です。急激な失業率の上昇は、企業の雇用調整が進行していることを示し、消費者の購買力が低下することで、景気全体の需要も減少します。

    現在の米国の失業率は4.1%で、まだ歴史的に低い水準にありますが、失業率は急激に上昇する傾向があるので、今後の動向に注意が必要です​。


  • . 消費者信頼感指数
    消費者信頼感指数(CCI)は、消費者が将来の経済状況や個人の収入についてどう感じているかを示す指標です。

    この指数が低下すると、消費者は将来に対して不安を感じ、消費を控える傾向が強まります。

    2024年9月の消費者信頼感指数は98.7で、8月の105.6から大きく低下しました。特に短期的な経済見通しを表す期待指数が低下しており、景気後退の兆しを示しています​


  •  製造業の指標
    製造業の活動も、景気の健全性を判断する重要な指標です。特にISM製造業景況感指数が50を下回ると、製造業の縮小を意味し、景気後退の兆候とされます。

    9月の米ISM製造業景況指数は47.2で市場予想を下回り、6ヵ月連続で50を下回っています。景気後退とまでは言えない状況ですが、その兆しを見せているとも判断できます。


株価への影響

逆イールドは通常、景気後退の予兆とされており、逆イールドが解消された後、株価はしばしば大幅に下落します。

これは、投資家が将来的な企業の利益の減少や景気全体の低迷を織り込み、株式市場から資金を引き揚げるためです。

また、逆イールドの解消後、しばらくしてから株価の下落が発生することが多いため、慎重な対応が求められます​。


過去の事例

  • 2000年のドットコムバブル崩壊:逆イールドが発生し、その後株価が急落。テクノロジーセクターの過剰評価が修正され、多くの企業が倒産しました​。

  • 2008年の金融危機:逆イールドが解消された後にリーマンショックが発生し、株式市場が大きく崩壊しました​。


まとめ

逆イールドは、景気後退の予兆として歴史的に注目されてきました。2024年10月の現在の状況では、逆イールドが解消されており、これはすでに景気後退が迫っている可能性を示しています。

そのため、今すぐ株式を購入するのではなく、慎重に市場の動向を見極めるべきタイミングです。

過去の事例からも、逆イールドが解消された後に株価が大きく下落することが多いため、投資余力を残しておいた方が賢明でしょう​。


最後までお読みいただきありがとうございます。
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