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Appleの戦略:部品を自社設計にする理由とその影響

Appleは、革新的なデバイスを生み出し続ける一方で、部品の供給戦略にも独自のスタンスを持っています。その一例が、他社製部品を自社設計に切り替える取り組みです。しかし、この戦略にはリスクも伴います。本記事では、AppleとQualcommの関係を例に、Appleが自社部品化を進める背景や歴史、リスクについてまとめました。


1. AppleとQualcommの関係

1-1. Qualcomm製モデムチップとは?

iPhoneのモデムチップは、スマホが5Gや4Gネットワークに接続するために欠かせない部品です。Qualcommはこの分野で圧倒的なシェアを持つリーダー企業ですが、Appleは現在、これを自社設計に切り替えようとしています。

1-2. 紛争と和解の歴史

AppleとQualcommは、特許料や使用契約をめぐって過去に激しい法廷闘争を繰り広げてきました。

  • 2017年:AppleがQualcommの特許料が高すぎると提訴。

  • 2019年:全世界での訴訟を取り下げ、和解に至る。この際、AppleはQualcommと6年間のライセンス契約を結びました。

しかし、Appleはその間も独自モデムチップの開発を進めており、2025年以降、自社製モデムへの切り替えを目指しています。


2. Appleが部品を自社設計に切り替える背景

2-1. コスト削減

他社製部品を購入する場合、特許料や供給コストがかかります。自社設計にすることで、これらのコストを大幅に削減できます。

2-2. 独自性の確保

自社設計の部品を使うことで、Appleは製品の性能や機能をより最適化し、他社との差別化を図ることができます。

2-3. 他社への依存を減らす

特定のサプライヤーに依存することは、製品の遅延や価格競争力の低下につながるリスクがあります。自社設計に切り替えることで、これらのリスクを軽減できます。


3. Appleの自社設計部品化の歴史

3-1. プロセッサ(Aシリーズチップ)

2010年、Appleは他社製のプロセッサを自社設計のA4チップに切り替えました。これにより、iPhoneやiPadのパフォーマンスが飛躍的に向上しました。

3-2. Mac向けMシリーズチップ

2020年、Intel製プロセッサから自社設計のM1チップに移行。この移行により、Macのバッテリー寿命や処理速度が大幅に改善されました。

3-3. Wi-Fiチップと5Gモデム

現在、Broadcom製Wi-FiチップやQualcomm製モデムチップの自社設計化を進めています。特に2025年以降、iPhoneに自社製モデムを搭載する計画が注目されています。


4. Appleの自社設計化のリスク

4-1. 開発の遅延と失敗のリスク

自社で新しい部品を開発するには高度な技術力と多大な時間が必要です。

  • 例: Appleの5Gモデム開発は当初予定より遅れており、2025年以降までQualcommに依存せざるを得ない状況です。開発がさらに遅れれば、他社との競争で不利になる可能性があります。

4-2. 高額な初期投資

新しい部品を開発するためには、研究開発費や専用設備への投資が必要です。これらのコストが収益を圧迫する可能性があります。

4-3. サプライチェーンの複雑化

自社設計の部品を生産するためには、信頼できる製造パートナーが必要です。しかし、TSMC(台湾積体電路製造)や他の製造業者への依存は完全には解消できず、新たなリスクを生む可能性があります。

4-4. 特許問題のリスク

他社の特許技術を侵害してしまう可能性があります。過去にQualcommとの特許紛争を経験しているAppleにとって、このリスクは無視できません。


5. 投資する上でのポイント

  • 競争力強化への期待: 自社設計により、Apple製品の性能やコスト競争力が向上する可能性があります。

  • 短期的なリスク: 技術開発が難航すると、他社製部品に依存し続けるリスクがあります。

  • 長期的な収益改善: 自社設計部品が普及することで、利益率の向上が期待されます。

  • 市場競争の注視: QualcommやBroadcomなど、従来のサプライヤーとの競争も注視する必要があります。


まとめ

Appleの自社設計部品化は、同社の競争力を高める重要な戦略であり、投資家にとっても注目すべき動きです。

ただし、リスクが伴うため、これをどのように乗り越えるかがAppleの成長を左右します。投資を検討する際は、こうしたリスクとリターンのバランスを考慮することが重要です。


参考

参照:バフェットコード
参照:バフェットコード


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