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【経済指標】米ISM製造業景況指数(2024年11月)

11月:48.4 (予想:47.4、 前月:46.5、 前月比:+1.9p)


概要

2024年11月の米国ISM製造業景況指数は48.4となり、前月の46.5から上昇しました。これは5カ月ぶりの高水準ですが、依然として50を下回り、8カ月連続で製造業の縮小を示しています。

製造業の縮小ペースが緩やかになったことを示しています。新規受注の増加や価格上昇圧力の緩和はポジティブな兆候ですが、生産や雇用の低調さ、特定業種の縮小など、依然として課題が残っています。今後の政策動向や経済環境の変化が、製造業の回復にどのように影響するか注視する必要があります。

短期チャート(2019〜)

緑:結果、グレー:予想

主なポイント:

  • 新規受注: 50.4と、8カ月ぶりに拡大を示しました。

  • 生産: 前月からほぼ横ばいで、低調な水準が続いています。

  • 雇用: 48.1と、前月の44.4から改善しましたが、依然として縮小を示しています。

  • 価格: 仕入れ価格指数は50.3に低下し、価格上昇圧力の緩和を示しています。

業種別の動向:

11業種が縮小を報告し、特に輸送機器や機械などが含まれます。一方、コンピュータ・電子製品など3業種は成長を報告しています。

企業の声:

  • 輸送機器メーカー: 「ビジネスは依然として低調で、2025年上半期も同様の状況が続くと予想している。」

  • 機械メーカー: 「第4四半期の建設需要の減速により、完成品の余剰が生じ、クリスマス休暇期間中に追加の2週間の操業停止が必要となった。」


長期チャート(1970〜)

ISM製造業景況指数(PMI)は、1970年以降のデータを基にすると、製造業の景況感を示す重要な指標として、景気後退期との関連性が高いことが分かっています。PMIが50を下回る期間は製造業の縮小を示し、特に45以下にまで低下する場合、米国全体の景気後退と一致する傾向があります。

現在の状況分析

2024年11月のPMIは48.4で、8カ月連続で50を下回っています。このような連続した低迷は以下の特徴を示します

  1. 新規受注の改善
    11月は50.4に達し、拡大を示しましたが、全体感としては依然として製造業の活動が抑制されています。これは需要が局所的に回復しているものの、持続的な回復基調には至っていない可能性を示唆しています。

  2. 雇用と生産の停滞
    雇用指数(48.1)は改善傾向にあるものの、依然として縮小領域にあり、製造業が労働市場に対する影響力を失っていることを示唆しています。また、生産活動も停滞が続いており、供給チェーンの調整や在庫過多が影響している可能性があります。

  3. 価格上昇圧力の緩和
    仕入れ価格指数が50.3に低下したことは、インフレ圧力が軽減していることを示していますが、これは需要の弱さを反映しているとも言えます。

長期的な文脈での解釈

1970年以降のデータを見ると、PMIが8カ月以上連続で50を下回った期間は、多くの場合、米国経済が景気後退に突入しているタイミングと一致します。しかし、例外も存在し、例えば1995年や2016年のように、製造業の縮小が全体の景気後退に直結しなかった事例があります。

現在の48.4という水準は、歴史的な後退局面(例えば2008年の金融危機時には33.1まで低下)と比較すると軽度です。しかし、以下の点に注意が必要です

  • 経済構造の変化
    製造業が占めるGDPの割合が減少しており、景気全体への影響力が過去よりも小さくなっています。

  • 他セクターの強さ
    サービス業のPMIが依然として堅調であることや、個人消費の底堅さが全体の景気を支えている可能性があります。

結論

PMIの低迷が製造業の縮小を確実に示している一方で、米国全体の景気後退を直接示しているとは言い切れません。現在の状況を判断するためには、以下の追加指標を組み合わせて分析する必要があります:

  1. サービス業PMI

  2. 雇用統計(特に失業率と非農業部門雇用者数)

  3. 消費者信頼感指数

  4. GDP成長率の動向

これらを踏まえ、米国経済全体が景気後退局面に突入しているかどうかを精査するべきです。現時点では、製造業セクター単体の低迷が景気全体に波及している兆候は限定的であると考えられますが、今後数カ月の動向が鍵となります。


参考:ISM製造業景況指数について

ISM製造業景況指数(ISM Manufacturing PMI: Purchasing Managers' Index)は、米国の製造業の景況感を示す経済指標の一つ。この指数は、Institute for Supply Management(ISM、供給管理協会)が毎月発表しており、米国経済の健康状態を把握するための重要な指標として広く利用。

  • 50を上回る数値:製造業の活動が拡大していることを示す。一般的に、数値が高いほど経済が成長していると解釈される。

  • 50を下回る数値:製造業の活動が縮小していることを示す。50を下回ると景気の減速や後退の可能性があると見なされる。

ISM製造業景況指数は毎月1日に発表され、前月のデータを反映。このタイミングは他の経済指標よりも早いため、投資家や経済アナリストにとって重要な先行指標とされている。
経済全体の約12%を占める製造業の動向を示すため、株式市場や為替市場、債券市場にも大きな影響を与える場合あり。指数の結果が予想を上回ったり下回ったりすると、市場が敏感に反応することが多い。

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