8月26日~8月30日 ドル円見通し
◆先週のドル円振り返り
◆閉会中審査:ジャクソンホール会合まとめ
◆今週のドル円見通し
◆先週のドル円振り返り
ドル円は今週、週末に行われる米国のジャクソンホール会合待ちの状態でスタート。最近の金融市場の混 乱を受けて開催が決まった日本の国会閉会中審査といった金融政策関連イベントを控えて上値の重 い展開が続いた。
様子見展開の進む中、21日水曜日の米労働省労働統計局による年次改定において、2023年4月から2024年3月まで1年間の雇用者数が最大100万人下方修正されるとの観測が19日に報じられ、ドル円は下落。
その後147円台前半まで戻りを見せたが、実際に21日には市場予想の範囲内ながらも81.8万人と大幅下方修正されたことから145円台前半まで下落。
同日公表された 7 月のFOMC議事要旨に「大多数が、経済指標がほぼ予想通りとなれば 9 月 FOMC で 金融政策を緩和することが適切となる公算が大きい」などと記載されたことも材料視され、一時 ドル円は144 円半ばに達した。
23日には注目されていた衆院財務金融委員会の閉会中審査で植田日銀総裁による「経済物価見通しが実現する確度が高まれば、金融緩和度合いを調整するという基本姿勢は変わらない」や「日本の金利は依然として低く、経済が回復すれば中立と見なされる水準まで上昇する見込み」、「内外市場は引き続き不安定な状況、当面は高い緊張感をもって注視していく必要がある」など、金融正常化に向けた姿勢継続との発言をしたことと、ジャクソンホール会議でパウエル議長による「旅の方向は決まっている」や「われわれは労働市場がこれ以上冷え込むことを望んでいない」との発言がドル売りにつながった。
日米金利差は更に縮まっている。
◆閉会中審査:ジャクソンホール会合まとめ
国会閉会中集中審議での閉会中審査
日本銀行の植田総裁は、23日午前に衆院・財政金融委員会(国会閉会中審査)に出席し答弁を行った。金融市場で注目度が高い点にも配慮し、全体的に慎重な答弁に終始した印象が強い。
世界的な株価下落のきっかけは、8月2日の米国7月分雇用統計が予想以上に下振れたことだと指摘し、日本銀行の利上げとの関係には直接言及しなかった。つまり、株価下落は日本銀行の追加利上げのせいではないとの主張を滲ませたのである。更に、参加者も「日銀の利上げが株価急落の引き金になった」と日本銀行を強く批判することはなく、日本銀行の正常化は遅れている、との認識を示す議員もいた。
先行きについては、日本銀行が展望レポートで示す2026年度までの予測期間の後半にかけて2%の物価目標は達成され、それに合わせて金融緩和を調整していくとの説明をした。また、経済に中立的な実質金利である自然利子率の水準を厳密に計測するのは難しいとしたうえで、それでも現在の実質金利は非常に低く、強い緩和環境を作っているとし、先行き、経済に大きな悪影響を与えずに追加利上げを進めることが妥当との説明となった。
追加利上げは株価下落の原因ではないことの主張と、植田総裁による金融正常化に向けた姿勢継続との発言をしたことから、日銀の追加利上げの警戒感が強まりドル円の上値を重くする要因となった。
ジャクソンホール会合
米国時間8月23日、パウエル議長がジャクソンホール会議で講演を行なった。9月のFOMC会合から利下げを開始することを宣言する内容であり、講演を受けてドル円は下がっている。
パウエル議長はアメリカのインフレ率について次のように言っている。「インフレは大きく下がった。労働市場はもはや過熱しておらず、コロナ前の水準よりも引き締まっていない」
失業率について「失業率はここ1年で上昇し始め、現在は4.3%だ。歴史的水準から見ればまだ低いが、2023年前半から見てほとんど1%も上昇している」と発言している。
失業率の上昇が前年との差で0.5%以上に達した場合、景気後退を逃れられたケースは戦後1度もないが、それについてパウエル議長は次のように言っている。「今のところ、失業率の上昇は景気減速期に見られるようなリストラの積み重ねによるものではなく、労働者の大幅な増加と、これまでの急過ぎた雇用増加の減速の結果だと言える。だが労働市場が冷え込みつつあることは間違いない。」需要減速ではなく供給増加の結果だと言いたいのだろうが、どちらにしても失業は容赦なく消費者の所得を奪ってゆく。パウエル議長もそれを認識しているのだろう。次のように付け加えている。
「われわれは労働市場がこれ以上冷え込むことを望んでいない」
この発言でドルは大きく下落した。
利下げについて、パウエル議長は「インフレ上昇のリスクは減少し、雇用の減速リスクは増大した。今こそ金融政策を調整する時だ。旅の方向は決まっている。利下げのタイミングとペースについては経済データや景気見通し、リスクのバランス次第となるだろう」と述べた。
残念ながら、パウエル氏は9月の利下げが0.25%なのか0.5%なのかについては明言しなかった。
金融市場はどう考えているか。金利先物市場の予想では76%の確率で0.25%、24%の確率で0.5%となっており、0.25%がメインシナリオという織り込みである。しかし、より重要なのは1回1回の会合における利下げ幅ではなく、合計で何処まで金利が下がるかだ。
金利先物市場のその後の織り込みによると、9月の初回利下げは25bpを100%織り込んでおり、50bp利下げが3割ほど見込まれている。再来週の雇用統計の結果次第では、初回50bp利下げが織り込まれる可能性は十分あるだろう。
まとめ
閉会中審査、ジャクソンホール会議におけるポイントとそれに対する市場の織り込みを纏めてみた。
円は植田氏の発言から強さを増し、ドルはパウエル氏の講演後に下落している。
◆今週のドル円見通し
パウエル演説では、利下げの具体幅は出なかったものの、「(利下げの)時は来た」と、予想よりも強いニュアンスでの利下げを示唆したため、市場は全面ドル安で反応。円高は生じず、リスクオフの動きもなく米国株価はソフトランディングを予測した動き。為替としては一番簡単な方向性となったと言える。
来週は特に大きな指標もなく、30日に7月のPCEデフレータが発表される。ドル円の方向性もほぼ決まった感があり、予想を上回ることがなければドル円の下降トレンドは変わらないだろう。
各ニュースに注目し、要人発言に注意しながら取引することが重要となる。
ゴールドについては変わらずに上目線を継続したい。米利下げ時には過去にゴールドの価格は必ず上昇している。
※本記事は投資助言に関するものではございません。投資判断は自己責任の上お願いいたします。