【8月13日】米景気後退の確認と金相場
今朝までの為替市場では、ドル円が一時的に148円台に上昇したものの、147円台前半に急落している。元日銀委員の「年内の追加利上げは無理」との発言から円売りが進んだことがうかがえる。全体として、円高が一服しており、再び円安が始まるかどうかは、今週の米経済指標でリセッション懸念が再度広がるかどうかにかかっている。
ゴールドは中東情勢の緊張、米9月利下げ折込み、キャリートレードの巻き戻しの減速から上昇を見せている。再度伝えるが、金価格は米利下げ時に必ず上昇している過去のデータがある。
朝方までの振り返り
NY連銀の調査
米消費者の滞納予想がパンデミック以来の高水準に上昇。クレジット・アクセスに対する認識が悪化し、家計支出の伸びも低下。
ウクライナ情勢
ウクライナ軍がロシア・クルスク州の一部を支配下に置いたことが伝えられ、緊張が続いている。
イスラエルとイランの緊張
イスラエル軍が厳戒態勢に入り、米国も中東地域に軍を増強。
本日の注目ポイント
経済指標
生産者物価指数 (PPI): 21:30 発表予定
要人発言
ボスティック・アトランタ連銀総裁の発言: 26:15 発表予定
市場の意思
市場は、今後の米インフレ指標(CPI、PPI)や小売売上高に注目し、9月FOMCでの政策動向を見極めようとしている。ドル円は上値を追う動きが慎重になっており、今週の米経済指標を見極めたい動きとなっている。
今後の推移
米インフレ指標が市場予想通りか、それを上回る場合、米景気後退懸念の後退からドルは再び強含む可能性がある一方、予想以下の数値が発表され、リセッション懸念再燃からリスクオフの動きが強まると、円やフラン、ゴールドといった安全通貨が買われる展開になると考えられる。
現状で最も買われやすい通貨
ゴールド
ゴールドについて
日銀利上げ継続示唆でゴールドが売られた件
ヘッジファンドや大手の投資家はお金を借りて金を買っている。
ドルで金を買うとすると、年率3~4%の社内金利を払って、資金調達するのに対し、円で借りれば、ほぼゼロ金利で資金調達が可能となる。
そこで、まず円を借りて、即、外為市場で売り払い(円売り)、ドルに換えて、金を買うという手法が人気化した。俗にいうキャリートレードである。
金の値段が上がれば、利益確定売りして、同時に、借りた円を返済する。外為市場でドルのレートも上がったので、為替差益も出る。
ドル高なのにNY金高という、教科書とは反対のことが現実になった背景である。
7月31日までは上記のような取引が魅力的であった。
しかし、日銀が利上げに踏み切り、更に、追加利上げを示唆したことで、円で借りて、金を買うメリットがなくなった。
それどころか、円高が想定外に進行すると、為替差損が生じる事態となった。
これまでの利益が減っていくのは見逃せないということで、ヘッジファンドや大手の投資家達は、円キャリーを巻き戻し、円を買い戻し、買っていた金も売却に動いた。
これが、円キャリートレードの巻き戻しであり、日銀利上げ時の金下落要因だと考えている。
通常時、リスクオフで金は買われる。
これまでの米利下げ時に金は5%以上の上昇を見せている。
現在は米国の消費者滞納予想が高水準にある。つまり、米経済に対する不安要因となり得ることである。これにより、リスクオフの動きが強まる可能性がある。
地政学的リスクが高まっていること(ウクライナ情勢、イスラエルとイランの緊張)にも注目である。紛争が激化すれば安全資産の金に資金が流れる傾向がある。