見出し画像

8月12日~8月16日 ドル円見通し

◆先週のドル円振り返り
◆パニック相場の原因を考える
◆今週のドル円見通し

◆先週のドル円振り返り

先週は米国のS&P 500VIX (恐怖指数) が瞬間的に65を超え、市場がパニックしたことは衝撃的であった。このパニック相場は、米国の景気後退の可能性が警戒されているところからきており、7月30日(火)から8月5日(月)のわずか5営業日で米10年債金利は最大で12%ほどの下落が確認できた。これは、コロナショック時における14%の下落規模と同じであり、瞬間的なパニックも大きかったことがうかがえる。
さらに、日銀の追加利上げの可能性から円高日経平均の下落が発生し、内田副総裁の発言から追加利上げの可能性が後退し日経は急上昇を見せた。市場はリスクオフ相場から円買いが優先していたが、先週の米経済指標の好結果などからドル円は少し持ち直し141円台から147円台後半を往復したボラティリティの高い一週間となった。

VIX値の瞬間的な上昇

5日(月曜日)

東京市場
前週の米雇用統計が弱含み、リスク回避の円買いが進行。日経平均が急落し、ドル円は一時142.22円まで急落。その後、株安が一服したこともあり、143円台半ばまで反発。しかし、日経平均の大幅下落で再び142円台前半に戻った。

ロンドン市場

円高・ドル安が進行。ドル円は141.70円まで下落後、144円手前まで反発。その後、再び141円台後半まで下落。ユーロドルやポンドドルも弱含み。

NY市場
景気後退懸念からリスク回避のドル売り円が鵜が発生していたが、ISM 非製造業景気指数が 市場予想を上回ったことで安心材料となり、米金利が上昇し、ドル円も 145 円 手前まで反発した。

6日(火曜日)

東京市場
米ISM非製造業景気指数が予想外に好転したこともあり、リスク警戒の動きが一服。ドル円は141円台から146円台まで急上昇。日経平均の大幅高も円安を助長。

ロンドン市場
東京市場での円売りが一服。ドル円は146円台に一時乗せるも、その後、売り圧力により144円台半ばまで反落。

NY市場
ドル円の上値が重く、144円台前半まで再び下落。円キャリー取引の巻き戻しが一旦収まる兆し。

7日(水曜日)

東京市場
内田日銀副総裁が「金融資本市場が不安定な状況 で利上げすることはない」などと発言したことが伝わり、円が急落。ドル円は一気に147円台半ばまで上昇。その後、146円台前半に一旦調整されたが、午後には147.90円まで再び上昇。

ロンドン市場
ドル円は再び147円台へと買い戻されたが、146円手前で売りが入り、一時下落する場面も。

NY市場
ドル円は147円台を維持したが、上昇は一服し、146円台後半で推移。

8日(木曜日)

東京市場
朝方の円高から反発し、146.87円まで上昇したが、午後には再び146円台を割り込む場面が見られた。

ロンドン市場
方向感のない取引が続く。米新規失業保険申請件数の発表を控えて、一方向には動きにくい相場展開。

NY市場
米新規失業保険申請件数が予想を下回ったことで、ドルが買われ、ドル円は再び147円台に上昇。

9日(金曜日)

東京市場
ドル円が147.82円まで上昇したが、その後、146.70円まで下落。三連休を控えたポジション調整が影響した模様。

ロンドン市場
為替市場は小動きとなり、ドル円は146円台後半で推移。

NY市場
ドル円は再び売りが優勢となり、一時146.30円まで下落。今週の急激な値動きが一服し、再び下値を試す展開となった。

◆パニック相場の原因

さて、今回のパニック相場の原因は何だったのであろうか。植田総裁のタカ化と日銀の利上げ、キャリートレードの巻き戻し、米国の景気後退懸念、様々な理由が考えられるので、1つ1つについて触れていきたい。

日銀の利上げについて考える

日経平均は次のようなチャートを見てほしい。

なかなかの急降下である。7月の史上最高値から見ると25%程度の急落となっている。

株価下落の原因は何かと言えば、それは世間で言われているように日銀植田総裁の利上げではない可能性が高い。0.25%の利上げに株価を暴落させる力はない上に、長期金利はそもそも上がってすらいないからである。だから金利が株価下落の原因だという議論はただの理由付けであり、株価下落の根本的な原因は日銀の利上げではなく、株価が下がった時に群れをなして売ろうとした人が多かったことである。
しかし、ドル円は度だろうか?
7月31日に日銀による予想外の利上げが行われ、植田総裁がタカ派的な発言をしたことにより、円はドルに対して上昇した。
円高は日経平均の下落に繋がる。よって、直接的ではないにしても間接的に日銀の利上げは日経平均の下落要因の一部になっているのである。

キャリートレード解消について考える

日本銀行が利上げを継続するとの観測に連動し、円高が劇的に進行した後、ヘッジファンドの売り越し激減が示された。日本のような低金利国の通貨で借り入れ、高金利国の資産に投じるキャリートレードの見直しに世界中で拍車が掛かった。

以下のリンクはブルームバーグのFXキャリートレード指数であり、高ければキャリートレードに適した環境、安ければその逆だということを示している。
ドル円とほぼ同じ動きだが、代表的なキャリートレードのパフォーマンスが計算されているとのことなので、キャリートレードが意識されている相場であれば参考になる。
5年単位で見ると、キャリートレードはまだ初期段階だということを示しており、今後さらなる解消が続けばドル円の下落幅も拡大する可能性がある。
しかし、現在の日本経済は最悪であり米景気後退懸念がぬぐえた場合はさらなるキャリートレードからの円安相場も考えられる。

BGSFXC 銘柄 - Bloomberg GSAM FX Carry Index 名称 - Bloomberg Markets

キャリートレードに触れたロイターの記事を下に貼っておく。

米国の景気後退懸念について考える

米国の景気後退が大きく意識されるようになったのは、経済指標が鈍化してきたことに加えて、米国雇用統計で失業率が上昇して、景気後退シグナルの1つとして注目されるサーム・ルール」のシグナルが点灯したことが上げられる。

鼠色の部分は米景気後退時を表している

しかし、これはもともと景気後退を予測するものではなく、景気後退を確認するための経験則であり、実際に過去の景気後退とサームルールの関係は、「サーム・ルールのシグナル点灯→景気後退」へというものではなく、「景気後退→数か月後にサーム・ルール点灯」というのが正しい理解である。さらに、パウエルFRB議長も、「サーム・ルールは過去の事例からの統計的観測と捉えており、理論的な裏付けがある経済学的な法則ではない」と発言している。
実際にはサーム・ルールが適応されるから景気後退は絶対。と考えるのではなく、「これまではそうだったので今後もそうなる可能性は高い」と考えるのが正しい。
トレードで意識するべきポイントは。サーム・ルールを市場は意識しており、米重要指標で悪結果が出た場合は更に懸念が強まるという点。反対に好結果が出た場合の市場は「サーム・ルールは絶対ではないかもしれない」という安心感から景気後退懸念は少し後退するかもしれない。
今回結果は、一時的解雇が増加したひとつの理由に米国におけるハリケーン「ベリル」の被害から間接的に失業者が増加したことや、急増する移民が求職する間に失業者の計算に含まれている可能性が高い。よって次回は、失業率の上昇がこれからも継続するか同課に注目である。

更に細かく米経済について確認してみる。

経済学的法則では、本当に景気後退になれば、就業者数が大きく減少する。しかし、就業者数は「まだ」減少していない。

雇用者数は景気後退に入ると格段に下がることがこれまでのデータより確認できる。チャートを見ると景気後退前から横這いで推移し、景気後退時は下落している。事前に予測することはできないが、実際に悪結果になった場合は景気後退懸念は高まるのは必須なのがわかる。雇用関係の指標が悪化した場合は景気後退が懸念される取引をすることが重要になる。

2020年のコロナショックにおける「雇用者数」および「小売売上高」も一度下落に転じている中、現在はどちらも下落に転じる様子を見せていない。

まとめると、現在の米景気は減速しているが、絶対に景気後退になるわけではないが、可能性はある。
今後は1つ1つの材料に反応するトレード中心で攻めていきたい。

◆今週のドル円見通し

8月12日の週の米経済指標では14日の7月の米消費者物価指数(CPI)や13日の米7月生産者物価指数、15日の米7月小売売上高、米新規失 業保険申請件数などが注目される。インフレについては以前より注目度が落ちているものの、良好な結果なら米景気後退懸念の後退からドル買いに、逆なら米景気携帯への突入の可能性が上がり、ドル売りに傾きそうだ。
FRBが利下げを開始するのは、ほぼ確定している。問題は、利下げの幅が1回あたり25bpになるのか、50bpになるのかという議論だが、利下げの幅を決めるのはインフレの鈍化ではなく、労働市場の状況や米国の景気状況だ。
小売売上高は足元、景気後退懸念が強まっているだけに、これまで堅調に推移する個人 消費に変調がでないか注目度が高まっている。

日本の経済指標では、15 日に発表される日本の 4-6 月期実質国内総生産(GDP)は、前期比年率 2.3%と予想され ており、1-3 月期の-2.9%からの大幅改善が見込まれている。もしGDP がプラス圏に改善した場 合、6 月の実質賃金が前年同月より 1.1%増加して 2022年3 月以来 27 カ月ぶりにプラスに転じて いることもあり、追加利上げ観測が再び高まることになりそうだ。

来週のシナリオとしては、経済指標1つ1つや、要人発言に素直に反応する一週間になると予想しており、米景気後退懸念がどの程度市場に織り込まれるかを判断する一週間となりそうだ。

※本記事は投資助言に関するものではございません。投資判断は自己責任の上お願いいたします。

いいなと思ったら応援しよう!