7月29日~8月2日 ドル円見通し
◆先週のドル円振り返り
◆市場の焦点
◆今週のドル円見通し
◆先週のドル円振り返り
今週はリスクオフの展開となり、ドル円は大幅な下落を見せた。しかし、この状況は驚くべき事態ではない。投資家は常に先を読む必要がある。このリスクオフの展開は続きづらいと考えており、来週以降で大きく流れが変わる可能性もあるので要注意である。ファンダメンタル分析を主軸にしているトレーダーにとって、材料が出そろうまでは「待ち」が正しい選択になると思われる。
先週ドル円下落要因
①アメリカの年内利下げが3回まで織り込まれていること、さらには7月に必要という意見も少なくない。つまりドルは「売り」であった。
②日銀による利上げの可能性をほのめかすニュース
「河野デジタル相」「自民党の茂木幹事長」「ロイターの日銀利上げ観測報道」
③トランプ氏の「ドル安円高」発言は根拠としては少し薄い可能性(インフレが起きるなどの記事が出ているが、前回も株価下落などの記事が出ていたが株価は実際には上昇)
④主要株や、世界的な株式相場による下落から市場は最近の「Bad news is sad news」とのリスクオフ相場になる可能性として判断したため、リスクオフ時に安全資産として買われてきたこれまでの相場の傾向から、円は「買い」に。
⑤中国の経済景気の悪化も懸念されてコモディティ価格の下落。
⑥CPIの直後という予想外のタイミングでの神田砲(円買いドル売りの財務省による為替介入)のよって、いつ介入してきてもおかしくないとの警戒感が市場で出始め、ドル円は上値が重くなり続ける。
⑦前回介入時にイエレン財務長官は「強い介入に対する不満」を示していたが、今回はの介入時にはなかった。日米金利差とドル円の相関関係も前回のイエレン財務長官による発言から、これまでは相関性が強く推移していたのに、日米金利差を無視したドル円の上昇が始まったが、今回の介入は、イエレン財務長官による前回のような発言がないため、同意したと思われる。そのため、介入警戒感がなかった以前のような青天井での上昇と、今回のようなリスクオフ感が出ている相場で(下落しやすい)上値は抑えられやすいドル円金利差とドル円の乖離から戻ってきたものと思われる。
これまでの相場
米経済の堅調さからリスクオン相場となり、ドルも米株も安定して上昇していた。つまり、安心して米に投資できたわけだ。しかし、年に3回の米利下げ期待や、これまで好調であった株価指数の下落。次期大統領候補のトランプ氏の発言や、日銀の利上げなどから流れが変わろうとしており、注目されている情報がで終わるまで(FOMCと日銀)中長期的な方向感を見出すのは難しく、現在は短期的な情報に反応しやすいため、デイトレードの優位性が高まると考えられる。よって、大統領選挙、日銀、FOMC、株式市場、米経済などの注目されている情報から市場への影響を予測することが重要となってくる。
22日(月)
東京市場
バイデン大統領の次期大統領選からの撤退表明があり、157.10台から157.60付近で振幅した後、円買いが入り157.01近辺まで下落。中国人民銀行の利下げや、リスクオフでの豪ドルも下落も、円が買われ円高要因に。
ロンドン市場
バイデン撤退表明の影響でトランプラリーが意識され円買いが先行し、156.20台まで急落。その後、欧州株が堅調に始まると円売りに転じ、157.90台まで反発。
NY市場
資源価格の下落、日本株の下落、円キャリー取引の巻き戻し、日銀利上げ折込み、トランプのドル安円高発言が円高要因に。
23日(火)
東京市場
見え始めていたリスクオフの流れと、自民党の茂木幹事長の利上げ要求発言が円買いを誘発。157円付近から156.20近辺まで下落。
ロンドン市場
茂木幹事長の発言による日銀利上げ観測が再燃し、ドル円は155.80台まで下落。
NY市場
9月のFRB利下げ期待が高まり、円キャリー取引の巻き戻しが続き、ドル円は155円台半ばまで下落。
24日(水)
東京市場
日銀の利上げ期待が強まり、ドル円は156円を付けきれず、午後には154.37近辺まで下落。
ロンドン市場
日銀の利上げ観測が続き、ドル円は154.29近辺まで下落。
NY市場
円キャリー取引の巻き戻しが加速し、ドル円は153円台前半まで急落。完全にリスクオフ時の値動きをしており、円買い優勢のドル買い円買いが継続。
25日(木)
東京市場
ロイターの観測記事で、来週の日銀会合での利上げ観測との報道が円買いを促し、152.23近辺まで下落。
ロンドン市場
日銀の利上げ観測と世界的な株安によるリスク回避の円買いが続き、ドル円は151.90台まで下落。
NY市場
米GDP速報値が予想を上回り、ドルが買い戻され、ドル円は154円まで反発。
26日(金)
東京市場
米GDP速報値が予想+2.0%、前回+1.4%に対し結果は2.8%と大きく上回り、同時に発表された個人消費指数も強いものとなり、ドル買い戻しが続き、ドル円は154.30台まで反発するも、午後には再び153.50割れへと下落。
ロンドン市場
欧州株や米株先物の堅調推移を受けて円安の動きが続き、ドル円は154.64近辺まで上昇。
NY市場
FRBが重要視するインフレ指標であるPCEデフレータが予想通りの結果となり、ドル円は再び153円台前半まで下落。
◆市場の焦点
市場は現在、日米による金融政策決定会合待ちの状態である。
日銀の注目点
前回の金融会合にてすでに決定した「国債買い入れ減額」がどれくらいの規模で行われるかであり、利上げがあるかどうかである。しかし、日本の全国物価指数 (19日発表) は日銀も重視するサービス価格が下げ止まりながら東京都の物価指数 (26日発表) では同価格が下落傾向を示していることもあり、早急に日銀が利上げを行えば日銀が第一目標とする「インフレ率2%の継続的な達成」に水を差すと考えられ、円安よりもそちらが優先されるが故に目先「日銀の7月利上げが行われない」可能性には注意すべきである。
FOMCの注目点
米中央銀行 (FRB) は政治からの独立を常に意識しており、大統領選挙直前で利下げを行えば民主党に有利に働く可能性があるため、FRBのパウエル議長としても可能であれば大統領選挙後 (11月FOMC以降) に利下げを行いたいと考えている可能性がある。この決定は、最近の弱い経済指標をFRBがどう捉えているかで変わってくると考えられ、①政策金利の市場への影響は時差があるため、ハードランディングを避けるために9月利下げを行う。②米経済指標には波があるため、今回の経済指標の軟化を去年末と同じようにとらえ、今月31日のFOMCでは「データ次第とする」とのスタンスを維持し、利下げを11月以降まで先延ばしにする。
のどちらかになるか、今回会合でのパウエル議長の発言に注目である。
◆今週のドル円見通し
来週の注目イベント
7月30日(火)
米7月消費者信頼感指数
米月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
7月31日(水)
日銀金融政策決定会合(30-31日)
植田日銀総裁記者会見
日銀会合では、国債購入減額の規模に注目。「2年程度で月間 3兆円程度に減額」というコンセンサスの範囲を大きく逸脱しなければ、円相場への影響は限定的となる可能性が大きい。
利上げはない可能性が大きいが、なんらかのヒントは施してくる可能性が高く、植田総裁の発言に注目。
米7月ADP雇用統計
米連邦公開市場委員会(FOMC、30-31日)政策金利発表
パウエルFRB議長記者会見
ディスインフレが順調に進捗している点は端々で示されるとは見ていますが、今後の政策に一定の柔軟性を確保する意味でも、9月利下げの地ならしは、8月のジャクソンホールにて行えば、スケジュール上は十分間に合うため、それを考慮にいれてのノーヒントの可能性。
8月1日(木)
米新規失業保険申請件数
米7月ISM製造業景況指数
ISMでは、小幅な持ち直しが予想されており、50を上回ることがあればドル買いにつながりやすい。
8月2日(金)
米7月雇用統計
米6月製造業受注
パウエル議長は7/9の議会証言にて「労働市場は完全に均衡を回復した模様」と発言しており、雇用面の悪化リスクをより警戒する様相を見せており、来週末の雇用統計の注目度も高い。
来週の日米金融政策決定会合は、結果によってはドル円の転換ポイントとなる可能性もあるので、注意が必要。買い材料となる可能性のほうが大きいが、その場合でも現在のリスクオフ市場が本格的なものとなった場合、ドル円は売りで反応する可能性もあるので注意。さらに、ドル円を動かす主要因は日米の金利差、とりわけ米国長期金利の動向である。という状況に戻ってきたため、金利差を意識したトレードが再開する場合、これまでのように一方的なドル円の買い相場になる可能性は以前に比べて低くなっていることにも注意して今週は取引したい。
※本記事は投資助言に関するものではございません。投資判断は自己責任の上お願いいたします。