「技術は、新聞紙」??
広島県の三原市に、ある商品で世界市場の7割近くを占めている小さな優良企業があります。その優良企業を、一代で築き上げた経営者を取材した時の話です。世界市場で優位に立つことが出来たのは、世界初の技術を開発したからですが、その技術について質問したら、こんな言葉が返って来ました。
「技術って、新聞紙なんですよ!」
黙って次の言葉を待っていると、語ってくれました。
「新聞は出た時は、ニュース‥。つまり新しいものですけど、翌日には資源ゴミになってしまいますよね。技術もそうなんです。出た時は新しいですが、次の瞬間、もう古い技術になっているんです。」
今はかつてないスピードで、新しい技術が生まれています。車が、普及するには、80年かかったそうです。インターネットが普及するには、20年だったそうです。携帯が普及するには、10年。でも、スマホが普及したのは、なんと‥5年未満だそうです。年々、新聞紙が資源ゴミになる時間が短くなっているのです。「技術って、新聞紙なんですよ!」と聞いたのは、20年前ですが、有能な経営者は、危機感を持ちながら、未来を見据えていました。そして、その危機感をちゃんと言葉に表していました。スゴイ人だな~と感心してしまいます。
もう1つ、忘れられない言葉があります。それは、取材の最後に「座右の銘」を聞い時に返ってきた答えです。
「そのまんまで、いいじゃないか!?」
これまで様々な経営者から聞いてきた「座右の銘」とは少し趣きが違ったので、肩透かしをくらったような気がして‥。無言で、次の言葉を待ちました。でも‥きっとキョトンとした顔をしてたのだと思います。それを察して語ってくれた言葉も‥記憶に残るものでした。
「自分の欠点を直すには随分エネルギーが要りますが、自分の長所を伸ばすのは、そんなにエネルギーも要らないし、誰にでも出来ることなんです。経営者になると社員の欠点を直そうとして、ついつい口うるさく説教したり、忠告したり‥。でもその人間にとって、欠点を直そうとするのは、非常に労力の要る作業だと気が付いたのです。そうだ社員の長所を伸ばせばいいんだと。ある意味、この言葉は私自身が、自分を諫めるための、社員に向き合うための座右の銘なんです。」
私もサラリーマン生活の最後に、経営者になりましたが、どうしても社員の欠点が気になって仕方がありませんでした。「なんで‥こんなことが分からないのだろう?」「コイツは、やる気があるんだろうか?」「甘い考え方をする男なので、任せて大丈夫なんだろうか?」などなど。口には出して言わないものの、経営者の仕事って、心配事を抱えるのが9割、夢に向かって進むのが1割‥そんな気がしていたものです。でも成功する経営者は、やっぱり違います。「社員の長所を伸ばす」‥そんな気概を持った経営者のもとで働く社員は、きっと幸せな会社人生を送れるに違いありません。
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