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5年ぶり2度目のユーロバイク出展記

irukaとして5年ぶりに、ドイツで開催される欧州最大の自転車展示会、ユーロバイクに出展した。

7月3日の開会に合わせて、7月1日の朝の便で日本を発つ。ロシアのウクライナ侵攻開始後、欧州便はロシア上空を避けて北極の上を飛ぶため飛行時間が長い。成田から14時間半飛んで会場のあるフランクフルトに着く。

前回出展した2019年は、スイス国境近くの湖畔の町フリードリヒスハーフェンでの開催だったが、その後コロナ禍による中断を経て、昨年からフランクフルトに会場が変わったのだった。

宿はホテルではなくエアビーでフランクフルト中央駅至近のアパートの一室を借りた。ホテルと比べると不便な点もあるが、洗濯と料理ができるメリットには替えられない。下の写真は借りた部屋から見た風景。昼間のようだが既に午後9時。夏のドイツは日が長い。

翌日はブース設営のため、直前に完成して日本からハンドキャリーで持参した外装変速新モデルiruka Xのプロトタイプで会場のMesse Frankfurtへ。15分ほどで到着。

前回は日本自転車産業振興協会の斡旋による日本ブランド共同ブースでの出展だったが、今回は知人の台湾AOI.CYCLEの社長Kenから「ブースをシェアしないか」と誘われ、独立ブースを出すことになった。スペインの物流パートナーのIgnasiから展示車として事前に送ってもらっていたiruka Sとiruka Cを引き取り、Kenが用意してくれていた展示台に設置する。

Ken(右)は経営者であるだけでなく、デザイナーかつクラフトマンでもある。ブースの什器類は全て彼の自作。

Messe Frankfurtは日本の幕張メッセの3倍近い敷地面積を誇る巨大施設。12あるホールのうち、ユーロバイクは8,9,11,12の4つを使う。通常、アジア企業はホール8,9に割り振られるが、AOI.CYCLEはデュッセルドルフにドイツ法人を持っているため、BoschやRiese & Mullerなどのドイツの有力ブランドと大手グローバルブランドを集めた、German hallと通称されるホール12が割り当てられたのだった。

初日の朝、会場を一回りしてみる。展示の大半はEバイクか、Eバイク関連のコンポーネントである。特に5年前に比べると、Eカーゴバイクの存在感が格段に高まっていた。

日本ではBirdy(旧名称BD-1)で有名なRiese & Mullerも祖業である折りたたみ自転車メーカーの影はなく、巨大Eバイク・Eカーゴバイクメーカーとして生まれ変わっている。

が、日本は電動アシスト比率に関して世界的に極めて特殊な規制があるため、これらのEバイクのほとんどは日本で走ることができず、したがって日本で販売もされることもない。かつての携帯電話市場などと同じく、日本のEバイク市場はガラパゴス化の一途をたどっているのである。

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さて、今回の出展の最大の目的はヨーロッパ、特にドイツにおけるirukaディーラーを開拓することである。

irukaはSmall but globalなブランドを志向し、延べ出荷国数を現在の15ヶ国から30ヶ国まで増やすことを当面の目標としている。その一環として昨年バルセロナに倉庫を構え、ヨーロッパでは1台単位でオーダーを受け付けて1週間以内にデリバリーできる体制を整えた。

その後イギリス・フランス・スペイン・ポルトガルにディーラーができたが、実際のセールスはまだまだであり、またヨーロッパの中でも一大マーケットであるドイツにはまだディーラーがいない状況であった。

ブースを訪れる人々にデモンストレーションを行って試乗を促し、販売に興味を示した相手と名刺を交換して商談に移る。を、繰り返す。

結果、4日間の出展でヨーロッパ5ヶ国目となるドイツの第一号ディーラーが決まり、また、オランダなどいくつかの国のディーラー候補を見つけることができた。

というわけで、目的はクリアできたと言ってよいと思うが、次回以降はより効率と確度を上げるため、事前に潜在顧客に連絡してブース来場を促しておくなどの工夫が必要とも思った。

もっとも、出展の果実はディーラー獲得だけではない。これまでオンラインでしか会ったことのなかった仕事相手とフィジカルに会って話せたり、5年前の初出展時に会った人々と旧交を温められたり。そしてもちろん、新たな出会いがある。極めて月並みな感想だが、やはりビジネスにおいては対面のコミュニケーションに勝るものはない。

右から、5年前の出展時に他ブランドのスタッフとして来ていながらirukaを気に入ってその場で展示車を買い取って帰り、その後も友人関係が続いているJose、iruka発売前からの付き合いで現在はイギリスのディーラー開拓を任せている沈さん、Joseの紹介でスペインでの販売と欧州全体の物流パートナーを務めてくれているIgnasi。

ある日の夕食。日本・台湾・中国の東アジア輪界人の集い。

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他ブランドの折りたたみ車を見るのも、いちユーザーとして楽しみのひとつ。ブロンプトンがふたつ隣のブースだったので、開場前にirukaを置いて記念写真を。

日本には入ってきていないが、欧州では大人気のVELLO BIKE。電動モデルが人気と聞いていたが、尋ねてみると一番売れているのは非電動モデルとのことであった。意外。

同じく日本未発売ながら人気のAhooga。前回出展時に、創業者がわざわざirukaのブースを探し当てて「発売おめでどう」とお祝いを言いに訪ねてくれて感激したことを覚えている。

フランスのフルサイズ折りたたみ車のニューカマー、Bastille。創業者は世界中で大ヒットしたベビーカーを作ったデザイナーとのことで、さすがのクオリティ。秋には出荷を開始する計画というが、高い工作精度が要求される折りたたみ構造で独自開発パーツも多いためファーストロットの生産は楽ではないだろうな、と経験者として思いを巡らせる。

スタートアップブースに出ていた、韓国のMIKALON。デザイナー本人の溶接によるモールトンを思わせる美しいオールチタンフレームに、分割+折りたたみを組み合わせたフレーム構造、レバーひとつで自動的にケーブルを分割・結合する機構、ハンドル高さセッティングを記憶して自動再現する機構といったギミックが詰め込まれている。同じアジア発のブランドとして大いに応援したい。

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朝夕のわずかな時間に、走行テストも兼ねてフランクフルトの街を走る。レーマー広場。カラフルな木組みの家がかわいらしい。

夕暮れのマイン川沿い。

中央駅から空港まで輪行して帰国。ドイツの鉄道輪行についてはまた別に書く。ユーロバイク、また来年。




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