勝ち運をもたらす、日本最初の舶来動物「鵲(カササギ)」 - 『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第四十九回)』
「神使」「眷属」とは、神の意思(神意)を人々に伝える存在であり、本殿に恭しく祀られるご祭神に成り代わって、直接的に崇敬者、参拝者とコミュニケーションを取り、守護する存在。
またの名を「使わしめ」ともいいます。
『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界』では、神の使いとしての動物だけでなく、神社仏閣に深い関わりのある動物や、架空の生物までをご紹介します。
動物を通して、神社仏閣の新たなる魅力に気付き、参拝時の楽しみとしていただけたら幸いです。
神使「鵲(カササギ)」
「鵲(カササギ)」は体長約40cmほどの大きさで、肩から腹部にかけて白く、尾や羽の一部は濃青や濃緑、頭部から背中にかけては光沢のある黒い色をしています。
「カチカチ」と鳴くことから、日本の主な生息地、繁殖地である佐賀県では「カチガラス」とも呼ばれます。
佐賀県鳥栖市をホームとするサッカーチーム「サガン鳥栖」のシンボル、マスコットキャラクターは「ウィントス」の名がついた佐賀県の天然記念物でもあり、県鳥でもあるカササギです。
チームに「勝ち」をもたらす、「勝ちガラス」の語呂合わせが由来となっています。
「カラス」の名がつく通り、サギではなくカラス科の鳥です。
雑食性で、昆虫、ミミズやカエル、穀類や果実、木の実などを食べるほか、秋にはイナゴなどの害虫も食べることから益鳥とされて来ました。
10月の下旬頃になると巣作りのための営巣地を探し始め、12月から3月までにはクスノキ、ポプラといった樹高の高い木や、電柱などに球状の巣を作ります。
北米やヨーロッパ、中央アジアなど、北半球のほぼ全域に分布するカササギですが、日本ではそのほとんどが佐賀平野に集中し、生息しています(他、福岡県筑後地方、長崎県、熊本県など)。
カササギは、古くから日本に生息する在来種ではないようです。
豊臣秀吉朝鮮出兵(1592-1593)の折、肥前佐賀藩主の鍋島直茂、筑後国柳川藩主の立花宗茂など九州の大名たちが朝鮮半島から日本へ持ち帰ったとする説があります。しかし、裏付けとなる文献がなく、はっきりとした由来は分かっていません。
カササギは七夕伝説で、牽牛(けんぎゅう)と織女(おりひめ)のために天の川に橋をかけたことで知られますが、この伝説が日本に伝わった当時、カササギは日本に生息しておらず、知る者はほとんどいませんでした。
以前、お届けした「神使・白鷺」に出て来る「鷺舞」の起源は七夕伝説のカササギでしたが、当時の人々は「カササギというくらいだから、サギの仲間であろう」と、白鷺をモチーフとしたという経緯があります。
日本にカササギが持ち込まれた最も古い記録は『日本書紀巻第廿二・推古天皇紀六年(598年)の条』にあります。
推古天皇が新羅に派遣した使者、難波吉士磐金(ナニワノキシイワカネ)が、新羅からカササギ2羽を連れ帰り、難波社で飼育を始めたところ、木の枝に巣を作って子を産んだ。とあります。
これは、日本に舶来動物がもたらされた最も古い記録の一つとされています。
その他に、新羅からは孔雀、水牛、駱駝、馬などが日本に流入しており、日本からはお礼として鹿などが送られています。
新羅から献上されたカササギが飼育された「難波社」は、現在の「鵲森宮(かささぎもりのみや)」であるといわれ、社名の由来になっています。
鵲森宮は、カササギを神使とする唯一の神社です。