📗【文書版】📗礼拝メッセージ『お金といのち、どちらが大切か』　2024年9月15日　新約聖書　マタイの福音書第8章28～34節

📗先日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
📗礼拝メッセージ『お金といのち、どちらが大切か』　2024年9月15日

新約聖書　マタイの福音書第8章28～34節

28　さて、イエスが向こう岸のガダラ人の地にお着きになると、悪霊につかれた人が二人、墓場から出て来てイエスを迎えた。彼らはひどく狂暴で、だれもその道を通れないほどであった。
29すると見よ、彼らが叫んだ。「神の子よ、私たちと何の関係があるのですか。まだその時ではないのに、もう私たちを苦しめに来たのですか。」
30そこから離れたところに、多くの豚の群れが飼われていた。
31悪霊どもはイエスに懇願して、「私たちを追い出そうとされるのでしたら、豚の群れの中に送ってください」と言った。
32イエスは彼らに「行け」と言われた。それで、悪霊どもは出て行って豚に入った。すると見よ。その群れ全体が崖を下って湖になだれ込み、水におぼれて死んだ。
33飼っていた人たちは逃げ出して町に行き、悪霊につかれていた人たちのことなどを残らず知らせた。
34すると見よ、町中の人がイエスに会いに出て来た。そして、イエスを見ると、その地方から立ち去ってほしいと懇願した。

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。
　皆さんはこのことをご存じでしょうか？先月くらいから、―まぁ会社名は伏せますけれども―「3週間で不登校解決」をうたったサービスを提供する会社がありまして、これが板橋区と連携するという話も出て、インターネット上で炎上していたんですね。
　まぁ私も不登校と引きこもりの当事者だったものですから、この会社のうたい文句から怪しいと思っていたんですけれども、ホームページには価格が4.5万円～であると言いながら、40万円を取るとか詐欺的な感じがあるというのもあるんですけれども、とにかくその内容を見てみると、親と子の上下関係を植え付けるとか、学校に行くまで、ゲームなどを断固として取り上げる、などといった、子どもの心にとっては逆効果であることが元当事者の目から見ても明らかなことが書いてあるんですね。精神科医やカウンセラーなどから、批判の声が多く上がっていたと思います。
実際に、利用者の親御さんの声としては、一時的に登校するようになったものの、すぐにまた登校しなくなって自傷行為が始まるなど前よりも悪化した、そして今では通信制の高校に通っているという声もあります。
　で、この会社の経営者の方は30代の男性で、カウンセラーや精神科医のような人ではないし、また支援関係の専門家ではないんですね。そしてその人が「教育立国推進協議会」のメンバーでして、これがですね、内容が、親学そのままだ、という指摘があるんです。
　この親学、というのがですね、親業とは違うんですね。親業というのはキリスト教会から始まったんですけれども、親学の方はですね―ややこしいですね―、統一教会とつながりが深いと言われています。
　おまけに、この会社の経営者の方が関わっている、「教育立国推進協議会」、これは、統一協会と大変関係が深いと言われている議員さんが会長をつとめられているんですね。ですから大変怪しい、要注意ということになります。
　まぁ、これらのことをお話しましたのは、カルト対策の注意喚起、ということもありますけれども、今日のみことばを、ひきこもり・不登校、に重ねて現代に適用する、という向きが、キリスト教会にも一部あるからなんですね。
　この悪霊につかれた人、という、現代にはなじみの薄い書き方で書かれている人たちを、安易に現代にあてはめて、精神病、というふうに解釈して適用したり、あるいは安易に、ひきこもり、不登校の当事者、というふうに解釈して適用したり、これは大変ですね、当事者を傷つけ、二次加害をすることになるわけですね。もし当事者の方が、やっとの思いで、教会になんらかの救いがあると思って来てみたら、悪霊付きなどと言われてしまう、それほど酷いことは無いと思いますね。
　林恭子さんという方が書きました、「ひきこもりの真実～就労より自立より大切なこと～」という本があります。これは2021年に出版された本ですが、大変いい本です。理解がそれまでより一歩進んでいるんですね。著者の方ご自身も当事者でして、全国で「ひきこもり女子会」を主催されています。
　最初に紹介しました、3週間で不登校を治すという会社も「予防」とかいうことを言っているんですけれども、この本を書かれた林恭子さんは、予防とか、早期発見とか、早期介入、そういうことに違和感があるっていうんですね。そしてこう言うんです。　

【早期発見、早期介入ということは、それが良くないことであり、予防しいち早く解決するべき“問題”として捉えているから出て来る発想だと思う、と。…「ひきこもり」は「生きるための手段」であり「生きるための撤退」である以上、それを早く発見して予防することが必ずしも良いことだとは思わない。】
と言っているんですね。
　またこの著者の林恭子さんは、ひきこもりと暴力事件報道についても書いていらっしゃいます。一時期マスコミでは、ひきこもりと暴力事件を結びつけて報道することがあったと思います。こういう報道によって、ひきこもりは怖い、得体が知れない、乱暴で暴力をふるう、などといった偏見が助長される、ということで、すぐに報道に対して緊急声明を出されたりなさった方なんですね。それもあって今は大分そういう報道は減っていると思います。
　そういう暴力とひきこもりを結びつける報道が植え付けたイメージも影響していたかもしれませんけれども、この聖書に出てくる2人の人たちが凶暴であったという記述もあいまって、教会が、この2人を、ひきこもりとか、不登校の子どもたちに安易に重ねるというのは、親学、のように、治すべき存在として、上から目線で見下す、ということになり、ひとりひとりを大切な存在として見る、キリストの愛から離れた、というか、逆方向なことであると思います。

　それで、今日神のことばとして与えられたマタイの福音書第8章28節以下の部分ですけれども、少し疑問に思われる方もいらっしゃると思うので、文脈も併せて、そのあたりを少し説明しながらお話して行こうと思いますけれども、先週は、嵐を静めるイエス様でした。風と湖を叱りつけると凪になった、けれども、凪になる前に、「なぜこわがるのか」と言ってくださった。凪になる前に、というのがポイントで、それはまさに私たち教会が、あるいは人生が、さまざまな嵐に巻き込まれているただ中において、イエス様が、起き上がって「なぜ怖がるのか」と私たちに声をかけて下さった、この「起き上がって」は復活して、と訳せることばで、つまり十字架の死から復活して、ということを連想させるようにマタイは書いています。そこに、嵐の中の教会が、あるいは嵐の中の人生が、しかしその嵐は滅びに至るものではないんだ、という、まさに初代教会からこんにちまでの教会が励まされ続け、希望を与えられ続ける神からのメッセージがあったわけです。
　そしてその続きで、向こう岸、ユダヤ人からは、けがれた地とみなされる、異邦人の地に渡って行きました。ガダラ人の地と言われています。ガダラ人の地、あれ？と思った方もいらっしゃると思います。これはゲラサ人の地ではなかったか？他の福音書にはそう書いていたんでは無かったんだろうか？とよく記憶している方は思われたと思います。実際マルコとルカ福音書にも載っていますが、マルコやルカでは、ゲラサ人の地となっています。
　これはマタイか、あるいは他の福音書が間違っているんだろうか？そうではなくて、これはある人の説明によれば、「この地方全体がギレアデのゲラサの町を中心とする、より大きいゲラサ行政区で、その中にガダラ地方も含まれていた」と説明されています。
　それで、もう一つの違和感があるとしたら、この墓場に住んでいた人の人数ですね。マルコやルカで記憶している方は、墓場から出てきた人は、一人である、と記憶していると思います。これもマルコやルカでは、一人であるかのように書かれています。
　これもどちらかが間違えたんだろうか？と思われるかもしれません。ある人はこう説明しています。これは実際には2人いたけれども、マルコやルカは、おもにイエス様にしゃべった１人にスポットライトを当てて、他の１人は省いたという説ですね。
　あるいは、もう一つの説は、マタイが編集している、という説ですね。マタイはもちろん事実、真実を書いているわけですけれども、マタイは伝えたい神学や信仰的な意味の方を優先して、いわゆる新聞記事のような正確さというものを重視しないというところがあるわけですね。その証拠に、マタイ第１章のイエス様の系図ですね、明らかに何人かの名前を省いたり、一人を二重に数えたりすることによって、１４代１４代１４代って数字を整えているんですね。これは当時認められていた書き方でして、７という完全数の２倍ということで、―マタイは当時のユダヤ人向けに書いたわけですから―神さまの契約の完全な受け手としてイエス様がお生まれ下さったんだと言うメッセージを、これに込めているわけですね。
　そういうわけで、ユダヤ人向けに編集してあると見れば、マルコ第１章で出て来る悪霊につかれた人をここに持ってきて、大胆にまとめて二人として書いたのかもしれないし、何よりもその意味ですね。なぜ二人と書いたのか？それはユダヤでは裁判でも何でも、証人は２人以上必要だからなんですね。マタイが伝えているメッセージは、彼らはイエス様の救いの確かな証人である、ということですね。そしてそれは、とりもなおさず、読者であり聞き手である私たちが、まさに、キリストの死と復活の証人であるという、そういうことをメッセージとして伝えてくれているのであり、それが、今ここにおられる生けるイエス・キリストからのメッセージでもあります。
　
　では私たちは、どういうキリストの証人であるかというのは、もちろん私たちが、悪霊に解放されたように、イエス・キリストに解放された者であり、先ほど申しましたように、主の十字架の死とご復活の証人であるというのが基本なんですけれども、今日のこのみことばから聞こえてくるのは、もっと広がりのあるメッセージなんですね。
　それが、今日の豚の話が大きなポイントになってくると思うんです。
　豚のエピソード、これは奇妙で、謎めいたメッセージに見えます。２人の人から悪霊を追い出す時に、悪霊たちがこの人の口を借りてでしょう。イエス様に、「私たちを追い出すなら、豚に入らせてください」と言う。
　そうするとイエス様は「行け」と言われる。豚はドドドドドドドと一斉に崖を下り、湖の中へドブンドブンと雪崩を打って飛び込んだ。おびただしい豚の死骸が、湖にはプカプカ浮いていたでしょう。
　それで、悪霊につかれていた二人の人は癒され、すっかり正気を取り戻したわけですが、町中の人たちがイエス様を迎えるんですね。そして、「いやー２人を助けてくださってありがとうございます。なんとお礼を言ってよいものか」などと言って、イエス様ご一行にご馳走でもして、もてなしてくれるかと思ったら、そういうわけでは全く無くて、逆に、イエス様ご一行に、どうかこの地方から立ち去ってくださいと懇願した、って言うんですね。
　まぁ豚飼いたちが逃げたって言っていますので、恐ろしくなった、ということなんでしょうけれども、なぜ恐ろしくなったのでしょうか？一つはその光景の異様さやインパクトでしょうね。そして、この方はどういう方なのだろうか？という、風や湖を静められた時に弟子たちが言った反応と同じ反応をここでしている、イエス様の得体のしれない権威ある力に驚いて恐れを感じている。ちょうど舟の中で、捕れるはずもない魚が大漁だったのを目にしたプロの漁師のペテロが、人間ならざる得体のしれない力をイエス様に感じた時に、「私から離れてください。私は罪深い者ですから」と、聖なる者の前に立つ恐れを感じたように、恐れを感じたのかもしれません。これは絶対にあるでしょう。

　それでもう一つはですね。それと重なることでもありますが、多くの人が、ここで、豚の経済的損失のことを指摘するんですね。これはよく分かる話です。マルコの福音書の方では、おぼれ死んだ豚は２０００匹ほどであったと記されていますけれども、大変な経済的損失です。ある人は豚一頭３万円か４万円と言っていまして、それで換算するなら６０００万円か８０００万円ということになるのでしょうけれども、それなら弁証しろとイエス様に迫りたかった部分もあったかもしれませんけれども、こんな巨大な力を持つ悪霊たちを追い出す方に太刀打ちはできないと思って、それならばせめて出て行ったほしいと願ったのかもしれません。
　いずれにせよ、多くの人が指摘していることですけれども、ガダラの町の人にとって、２人の人の救いよりも、あるいは２人の人が正気を取り戻して人生を取り戻すよりも、有り体に言えば、豚の商品価値、つまりお金の方が大事だった、ということです。悲しいことに、このイエス様の奇跡に、喜ぶ人は誰も記されていないことがとっても象徴的ですね。ある人は「全時代を通して、世は豚を選ぶことによってイエスを拒絶してきた(レバートフ)」と言います。いつの時代もそういうところはあるかもしれません。豚を、もっと言えばお金を選び、イエス様を拒絶し、そして共に生きるべき人間を拒絶するんです。
　
　ガダラ人の地は、ヘレニズム文明が浸透した、商業の栄えた地方であったといいます。
ですからある牧師先生は言います。この墓場に住んでいた２人は、高度な文明と経済成長の中で、そのひずみの犠牲になった人たちだと。
　
　で、こういうのは、まさに現代の話だと思うんですね。いや、２０００年前も今も全く変わっていないと言った方がいいでしょうか？一人の人間よりも、お金の方が大事。今日本でもそんな空気が、ますます強くなっているように思います。
　経済学者を名乗る人が、テレビに出演し、社会保障費をどうするかという文脈の中で「高齢者集団自決」というのを語ったりする、彼にとって、命より、お金なんですよね。
　また、能登の復興が大変遅れていることについて、ある女性が夫にそのことを話したら、「そんなところ助けてもコスパが悪いだろ」って言うんですね。その女性は夫の発言に驚きあきれてしまったようですが、そういう地方を助けても、大した経済的な貢献をできる地域ではないだろうから、助けなくていい、っていう発想なのでしょうか。まさにこれも、人よりお金、命よりお金、ということでしょうか。

　他にも、命、ということではないんですけれども、「稼げる公園」というのもあります。これは命、ということでもないんですけれども、うまいことやった、グッジョブ、なんていう声もあるかもしれませんけれど、それは結局、経済的に豊かな人もそうでない人も、皆が憩いの場所を利用できる、というものを削って、―つまり皆の権利とかいうちょっとずつ削って―資本・お金に換えた、ということでしかない。

　それから何よりも人よりお金、命よりお金、の代表的なものは、戦争や虐殺です。
　先日、「軍産複合体のアメリカ」という本を読みました。軍産複合体、というのはあまり耳馴染みがないかもしれません。軍産複合体を分かりやすく言えば、アメリカの軍需産業と政府と、それを取り巻く利益集団、くらいに理解したらいいでしょうか。これは陰謀論でもなんでもなく、１９６１年に、アイゼンハワー大統領が退任演説でこの言葉を使っているんですね。
　まぁそれを知らなくても、なんとなくアメリカの経済というのは、軍需産業で持っているところがあるので、常に世界のどこかで戦争が起こっていなくちゃいけない。そうでないとアメリカが保てない、といういびつな構造があることを皆さん聞き及んでいることでしょう。
　ロシアのウクライナ侵攻でもそうです。アメリカの兵器の良い見本市になった面があって、軍産複合体は物凄い儲かったと言います。
　さらにガザもそうです。アラブ文学がご専門で、パレスチナや中東研究で有名な早稲田大学の岡真理教授は、ガザとは、天井のない牢獄どころではないと言い、こうまで言っています(イスラエルはアメリカから多大な軍事費の援助を受けています)。

【ガザとは何か。
ガザ、それは巨大な実験場です。
イスラエルの最新式兵器の性能を、実戦で実験するところ。大規模攻撃を仕掛ければ、世界のニュースがそれを放映してくれる。ガザは、その兵器の性能を実演してみせるショーケースです。新兵器の開発で用済みになってしまう古い兵器の在庫も一掃できる、ガザはそういう便利な場所です】って。

　もちろん“便利”って皮肉です。まさに人の命よりお金、いやむしろそれどころじゃない。人の命をお金に変換して吸い取っている、そういう衝撃的なことがある。
　そして私たちの税金も、色んなルートでアメリカの軍産複合体に流れて行っているという構造もある。(日本の防衛相はイスラエルの殺人ドローンを買うなどということを言っています)そういうのに反対しないこと・声をあげないことによって、その罪に間接的に加担している、ということもあるかもしれません。
　
　そういった様々な世界のゆがみ、おかしさ、まぁ戦争や虐殺、とまで行かなくても、「コスパ・タイパの良い者・役に立つ者は生きてよい」「コスパ・タイパの悪い者・役に立たない者は生きるな」とでも言うかのような、まるで優生思想の空気のようなものが、日本にもじわじわと忍び込んでいるように感じる。それが今の日本の生きづらさの正体の一つなのかもしれませんけれども、その空気こそが、悪霊なのではないでしょうか？
　かつてナチスが台頭したときに、ドイツの牧師たちは、そういう優生思想の空気を「時代の霊」と言いました。時代の霊っていうことは、もちろん良い霊・聖霊のことを言っているわけではないわけで、悪霊のことを言っていると見ていいと思います。だからガダラの地方全体が悪霊の影響を受けていて、町中の人もその影響を受けていたのではないでしょうか。豚はおぼれ死んだから悪霊も一緒に滅びたかと思えば、町の人たちがイエス様に「離れてください」と言っています。「どうかこの地方を立ち去って下さい」と願い出た。これでは、まるで彼らが悪霊たちの言いぐさを借りたに等しいと、ある聖書学者は言っています。街の人たちも悪霊につかれていたんです。
　では私たちは、今の日本はそういう空気なのだから、とあきらめたり、絶望したりするのでしょうか？いいえ、決してそうではありません。私たちは、解き放たれた者として、悪霊の支配下に無い者として、証しする証人だと申しました。それは、おかしな空気に流されないで済む者だということなんです。

　悪霊の支配下にあった二人の人が、その支配から抜け出すためには、大勢の豚という、多大な犠牲が必要でした。これは何かを指し示しているわけです。その指し示しているものとは何でしょうか？それは、人が救われるためには、大きな犠牲が必要だということなんです。その犠牲は、大勢の豚よりももっと価値のある、神の小羊である、イエス・キリストのいのち、という犠牲、つまり、ゴルゴタの丘での、キリストの十字架の犠牲を指し示しているんです。
　この犠牲が、あなたのためだったんです。あなたを罪とその責めから解き放つために。
「あなたは、神の子の命に代えても救う価値がある」「あなたのためだったらわたしはいのちを捨ててもよい」そうイエス様はあなたに言ってくださって、あがないとってくださいました、というのは、ご自身のものとしてくださったのです。悪霊に対して、「この人はお前のものじゃない」と言っていのちを捨てて奪い返してくださったのです。それがイエス様が十字架上で取ってくださった勝利です。

じつはこの十字架上でのできごとというのは、終末論的なできごとなんです。悪霊が「まだその時ではないのに」と叫んでいますね。この「その時」というのは、神の時、なんです。世の終わりの時なんです。世の終わりの時とは、神の国の到来と、さばき、つまり、悪霊が滅ぼされる時なんですね。
そして―少しややこしいと思われるかもしれませんけれども―この世の終わりとは、神学者は申します。「もう来ている」と「まだ来ていない」の両方が正しいんだ、と。主イエスは来られました。来られて罪の力の支配の根を断ち切ってくださいました。ですから世の終わりというのは、主イエスの十字架であり、よみがえりである、と言ってもいいんです。この墓からよみがえって出て来られたイエス・キリストのよみがえりのいのちを、私たちもいただいているんです。
ですから私たちは、この方にいのちそのものを愛されている者として、―もしこの世においては敗北者のように見えることがあっても―圧倒的な勝利者として生きます。空気に支配されずに、身もたましいも主イエスのものとして生きることができるのです。お祈りをいたします。

恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
あなた様が送ってくださった主イエス・キリストは、十字架の上で勝利を取ってくださいました。罪と死と悪魔に打ち勝ってくださいました。およみがえりによって、わたしたちにも復活のいのちをお与えくださいました。私たちはもはや、悪霊の支配のうちにいません、神の国・神の愛によるご支配の中で安心して憩います。世間には妙な空気がありますけれども、私たちがそれに流されないようにお守りください。そして主イエス・キリストの死と復活を、愛と平和の神の国の到来を、ますます宣べ伝えて行くことができますように、私たちを力づけてください。主イエス・キリストの御名によって祈り願います。アーメン。