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残響の血脈~mode of Withering to death.~

※映画のネタバレを含みます。2024年10月3日まで上映されているため、読みたくない方はスルーで。

「DIR EN GREY LIVE FILM 残響の血脈~mode of Withering to death.~」を観てきたので、感想など書いておきます。
2回観たけど、記憶を頼りに書いてるので間違ってるとこもあるかもしれません。DIRの曲は一通り知ってて国内ツアーはたまに行くゆるい虜、多少趣味で動画編集できる程度の素人目線です。

映画の概要

2024年3月、4年ぶりに開催されたDIR EN GREYのヨーロッパツアー。ツアーファイナルを飾ったドイツ・ベルリン公演を追ったLIVEドキュメンタリー映画。3月30日(土)公演の「mode of Withering to death.」のライブ映像をメインに、メンバーのインタビュー映像、舞台裏のドキュメンタリー映像を交えた113分の作品。
監督は、DIR EN GREYのライブ映像作品も手掛ける濱﨑幸一郎監督

過去アルバムをフィーチャーしたツアーは以前から国内では開催されていたが、海外では今回が初。「Withering to death.」は2005年3月に発売された5thアルバム。
(10/4~公開の「UROBOROS」は2008年11月発売の7thアルバム)

後編の「~mode of UROBOROS~」編の記事はこちら


Shinya Channelで、Shinyaさんと濱﨑監督の対談も観れる。(1分の予告編をネタに20分語るという盛り企画。撮影機材の話も出て見ごたえあり)

余談ですが、ヨーロッパツアーでは客席からのスマホ撮影が許可されており、ツアー中は連日YouTubeに現地参加した方々の動画がアップされていた。
数本見てみたが、固定位置から撮影されたライブ映像は正直20分見るのが限界。2階席の最前からスタンド使って撮ったっぽい動画がギリ見れるレベルではあったが、編集されてない長尺動画は飽きる(どれだけ曲が良くても)

同じ公演でも、プロが複数台のカメラ使ってガッツリ編集した映像は雲泥の差。もし自分が撮影可のライブ行っても、撮影に気を取られるよりはライブ楽しんで、後から公式の動画や写真見たいなーと思った次第。

2024年3月30日 ベルリン公演のセトリ

  1. Merciless Cult

  2. Spilled Milk 

  3. Jesus Christ R’n R 

  4. 愛しさは腐敗につき

  5. 13

  6. 悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱

  7. dead tree 

  8. 朧 

  9. Machiavellism

  10. GARBAGE 

  11. Beautiful Dirt

  12. 朔-saku-

  13. C

  14. THE FINAL

EN
1.鼓動
2.Beautiful Dirt
3.Eddie
4.T.D.F.F
5.アクロの丘

映画では途中にインタビューや移動やリハ等のドキュメンタリー映像が挟まれるが、ライブ映像は全曲セトリの曲順で入ってる。

ライブシーンの編集が素晴らしすぎる曲

全編素晴らしいんだけど、強いて上げるなら以下

「朧」
音源とは異なり、がなり系で鬼気迫るパフォーマンスで歌う京さん。ダークなAメロBメロは、フレームアウト気味に煽り位置からアップで京さんが撮られている。視線を集中させてる観客の視点。
サビで引きの画が入り、音的な広がりが一段と際立つ。各パートの楽器の見せ場も切り替わっていく。静と動の差が特徴的な曲に対し、主観的な寄りと客観的な引きの画の使い分けが効果的な映像。

バックスクリーンにはMV(そこそこグロいが規制なし)が流れていた。権利的な関係か、グロさ緩和のためか、あまり映り込まないように編集されているため「朧MV、生理的に無理…」って人も見れる映像になっている。

DIRでは、ステージのバックスクリーンで映像が流される演出が多い。グロくて有名なMV三部作「朔」「鼓動」(開演前「Revelation of mankind」)も流れていたので、全編引きで撮ってしまうと近藤廣行映画祭みたいになる(個人的には近藤監督のMV好きですよ、ぶっ飛んでて)。
自分もライブでつい映像に意識持っていかれがちなので、見せ場を編集してあるのはありがたいな、と改めて思った。

「GARBAGE」
映像の面白さ、斬新さで言うとダントツ。DIRの他のライブ映像作品には無かったような撮影方法および編集がされている。ステージ脇?天井近くからの360°カメラ、ドラムセット前の魚眼の超広角、画面が一回転するような編集など。VRっぽい非現実的な画が面白い。

Shinya Channelに濱﨑監督が出演された回では「会場が狭く、カメラ入れる場所がなくてやむを得ず360°カメラで撮った」と話されていた。制限のある条件下でいかに面白い映像撮るか?に全振りしてる感じが良き。

激しめのノリの良い曲なので、観客視点もステージ見るよりはヘドバンしたり暴れてる人も多く、客のノリや心情の映像化のような印象。

「THE FINAL」
珍しくステージ全体に明るめの照明が当たっている演出。(Shinyaさんの顔が見える貴重な曲。)海外公演でも合唱が起きる曲で、この日も合唱が起きていた。メンバーやステージメインというよりは客席や観客の表情を多めに入れてあり、一体感を感じられた。シンプルさが際立つ映像。

「アクロの丘」(「T.D.F.F」~のツナギ含む)
ベルリン1日目ラストの曲。アンコールは激しめの曲で締めることが多いDIRなので「T.D.F.F」で終わりかと思わせて、一瞬夕暮れの鳥(注:神聖かまってちゃんではない)のシーンがインサートで入ってから、青い照明の下でDieさんがアコギ弾き始める「アクロの丘」って、ズルいわ。美しすぎる。

バックスクリーンの映像は、MVではなく国内ツアーでも使用されている、大自然(どこかの丘)のドローン撮影の映像に人物が多少入る映像。
引きでステージ全体を入れて、バックスクリーンを借景的に使い、より壮大で解放感のある映像になっていた。

ドキュメンタリー

移動や観光、会場での仕込み、リハなど(CDの特典映像についてるようなドキュメンタリーをイメージしていただけると)。一部モノクロ映像も使用されていてメインのライブやインタビュー映像と差別化されている。

開場待ちや終演後にファンの方々へのインタビューも入っていた
(ドイツ人の方々と思うが、みんな英語で答えてくれている)。
「今日はアートを観に来た。彼らの音楽はアート。」
「言葉は分からなくても伝わる。」
「20年来聴いてる。」などベタ褒めしてくれていた。

インタビュー

細かく何の質問に対してどの回答だったかは覚えてないため、ざっくり要約と抜粋。相変わらず、メンバーのストイックさが凄まじかった。

Dieさん
「普通の人間ではステージは務まらない。体力的にも、見た目も」
「自分がクビになると思うなよ」
「DIRをやるのは楽じゃない」
けっこうシビアな話を、デカいビールの飲みながら話す酒豪。

薫さん
バスが停車してる付近の倉庫っぽい場所での撮影。スプレーの落書きとかあって、ちょいワルな薫さんのファッションにハマる背景。
今回ヨーロッパツアーが決まった経緯や、そこに至るまでの数回に渡り企画倒れになったこと、なぜWitherとUROBOROSをフィーチャーするツアーにしたのかの話をされていた。
さらに、ツアーバスの紹介もしてくれていた。内装おしゃれでトイレもキレイなんだけど、ベッドが本当に狭い…。
京さん公式Xで「シキョヤ」が爆誕した2段ベッド(上がShinyaさん、下が京さん)も登場。

Toshiyaさん
予告編に「Wither出してDIR EN GREY終わると思ってた」のシーンが入ってるが、ネガティブな話多めでもなく、
「あのタイミングで海外出たのが転機になった」
「今は対外よりは、この5人が一番の敵でありライバル」
(PRADAのダウンのインナーが、なぜか喪服のような白シャツ黒ネクタイで気になる。)

Shinyaさん
いい意味でトークはいつもの感じで、YouTubeとあんまり変わらない。
インタビューとイメージ映像の幻想的な背景は、ベルリン先史博物館前にある通路で撮影されている。抜け感の強い構図と彩度低めで青緑がかった色味が美しい。特に画面が中心で分割されて、左右にShinyaさんが分身していくシーンの美しさは必見。

京さん
「人気があるとも1ミリも思ったことない」「外人が歌舞伎やってるみたいなもんじゃないですか?」と、いつものドライな回答。(ライブではクッソ熱く煽りまくるのに。ジェスチャーでモッシュもやらせてた笑)

本人談「クソしか言ってない」とのことだが、Wither編では1回のみ使用されていた。
食事の話のくだりで「焦げた焼き鳥みたいなのにパクチー乗っててクソ」「カップ麺とホテルの朝飯のブルーチーズしか食ってない」の箇所。(UROBOROS編はクソ連発🤣)

ゴールとは?
ライブのラスト「アクロの丘」の後、監督が各メンバーに「ゴールとは?」と質問していくシーンで映画は幕を閉じる。
BGMは「PHALARIS」の中でも重くて暗い「カムイ」が使われており、不穏な空気を感じる。
Toshiyaさん「ゴールは死」
Shinyaさん「ゴールは全員が天国に行く時。いつ死んでもいい。」
京さん・Dieさん「ゴールはない」
薫さん「分からない。もう過ぎてるのかもしれないし、まだ先かもしれない。辞める時はゴールを過ぎてる。」

(メンバー各自の言葉は違えど、総じてカムイの歌詩とリンクするような絶望と達観が、この5人らしい。無理に続けたり、解散・再結成を繰り返したりはせず、終わる時はアッサリ終わるんだろうな。)

若干重たい空気で終わるのかと思いきや「予感」(再構築ver)のイントロが流れ、明るい雰囲気にガラッと変わり、スタッフロールが流れていく。一瞬UROBOROS編の予告映像も入り、また予感に戻り、続きが気になる感じで爽やかにまとめられて終わった。

映画に関しては以上で、せっかくなので舞台挨拶に触れておきたい。

9月22日(日) 新宿ピカデリー(登壇はメンバー5人と濱﨑監督)

自由すぎる舞台挨拶
新宿ピカデリーでの舞台挨拶は、12時上映の終了後の1回目と、15時半上映前の2回目があった。私は1回目に参加した。
メディアに報道されたのは2回目のみである。物議を醸した「みたらし団子」の回。

SNSでのネガティブな投稿の引用は控えるが、芸能人やアイドルの「一般ウケの良いきちんとした舞台挨拶」と比較してごちゃごちゃ言ってる人達がいた。

実は9/22時点で、上映開始3日目にして、Xでは地方の劇場で観た人達からの客入りが危うい現状が投稿されており(料金が他の映画より高く、夜間1回のみ上映の劇場もあるため致し方ない…。)話題作りとしてあえて目立つことをやったのでは?

正直、1回目のトーク内容の文字起こしでは、読者に素っ気ない印象を与える可能性もあった。
京さんのキャラクターおよび直近の過密すぎるスケジュール(前日、前々日がプチブラのライブ、三連休はプロデュースしてるアパレルMADARANINGENとMILK BOYのコラボ展示会、舞台挨拶後はsukekiyoのリハ)を分かった上で見ている虜さん達なら「笑える、和む、かわいい」とかの感想が湧くだろうが、一般人からは理解されにくかったかもしれない。

そこで2回目は、小道具があった方が…的な発想で「みたらし団子」を持ち込んで食べたとも推測される。たぶん一般人が思ってるファンサと虜が思ってるファンサが違う。
(もちろん虜の中でも意見は割れていた)

床に座るのも、舞台挨拶だけで20分ほどあるにも関わらず、椅子が用意されていなかったのだ。前日、名古屋でキレッキレのライブやって東京戻って来た人にですよ?

ネットで文句言ってた人達は、同スケジュールで同クオリティの仕事やれますか?
目ん玉ひん剥いてデスボで絶叫してる京さんに向かって同じこと言えますか?(無理っすわ、猛獣だもん)

【追記】UROBOROS編の大阪?か京都?の舞台挨拶行った人達のレポによると、京さんはガチでメディアが入るのを知らなくてみたらし団子食べたらしい。天然すぎ、最高。

9月29日(日) 横浜ブルク13(登壇は薫さんとShinyaさん)

司会者に「映画の裏話ありますか?」の質問を受けてのお二方の解答

オープニングとエンディング

「最初に上がってきた映像は、オープニングとエンディングがあっさりし過ぎていた。監督も映画好きのはずなのに、本編で力尽きたんかな?」
薫さんの要望でより印象に残る映像に変更してもらったらしい。

確かにオープニングのインパクトは強い。ライブ映像、ドイツの街並みのドローン映像、白地に血液が垂れる映像や、血管らしき網目がドクドクしてる映像から、黒地にゴールドの文字の派手めなタイトルが入る。

薫さんが「エンディングが何で予感なのか?もっと新しい曲の方がいいのでは?」と疑問に思って監督に聞いてみたら、「昔から受け継がれている血脈のようなものを表現したくて、予感に決めていた。」とのこと。

なるほど。懐かしさも感じられる曲かつ、映画の前後編の前編に当たる作品なので、明るめに締めて良かったのかも(再構築verだからいいけど、旧verだとちょっと合わなかった?)。

ドラムの尺が短い問題
曲によっては0.5秒位しか入ってなくて、Shinyaさんの要望でドラムの尺を長くしてもらった曲もあったのだとか。

動画編集する側の視点だと「顔映ってないと悪いな…」と思ってカットする心境は分からんでもないですが、ドラマーからするとむしろ動きメインで撮ってくれ的な感じだと思う。(公式の写真は照明当たってかつ前向いてる瞬間を撮影されてるけど、動画だと音的な見せ場と見た目的な見せ場の一致が難しいのだろうな)

その他、もろもろ詳細の裏話は映画の公式X(@direngrey_film)にて、濱﨑監督のコラム#残像の脈々にアップされているので興味のある方は読んでみてください。
監督がどんな心得でDIR EN GREYを撮っているのか、深いことまで書いてあります。(「ナショナルジオグラフィックの野生動物」は言い得て妙だと思う)
カメラ図面も載ってて、動画編集やライブ撮影してる人はかなり面白いはず。

余談:2回観た経緯(席選びの参考までに)

映画館で同一作品を2回観ることは普段はないが、1回目の席が選べず、やむなく翌週2回目を観てきた。

舞台挨拶は新宿ピカデリーだけかと思って、FC先行でチケット取ったらまさかの最前(厳密には1列目は使用されてなかったので2列目)。しかも一番広いキャパ580席のスクリーン1である。座った瞬間にヤバいと思った。スクリーンの歪みが気になるレベルの近さ。

本編始まっても、高画質で撮影されているはずなのに、画面のザラザラが気になる。「今日は迫力と音響と至近距離の舞台挨拶を楽しもう」と割り切った。ライブの最前と映画館の最前はありがたみが違う。

2回目の横浜ブルク13のシアター1は、キャパ400席でこちらも同劇場では最大。新宿の逆で後ろから2列目で観た。ザラザラ全く気にならない。純粋に映画観る目的ならこれぐらいの距離がちょうどいいが、当然ながら舞台挨拶は遠くて見づらかった。

まとめ:ちょっと高いけど映画館の音響で観よう

意外と長文になってしまい、ここまで読んでくださった方ありがとうございます!
他の映画と比べるとお値段は高めで、特別料金:3,500円、障害者割引(付添1名まで)2,500円ですが…ライブのチケ代よりは安いです。
DIRのライブ行ってみたいけどなんか恐そうとか、体力的にキツそうとか、昔の曲は分かるけど最近の曲知らなくて行きづらかった方、ANDROGYNOS予習中のピエラーのみなさん(Witherの中でライブの定番曲は限られますが…)ぜひ、映画館に足を運んでいただき、最高の音響とスクリーンで楽しんでもらえると嬉しいです。

#残響の血脈
#DIRENGREY
#Witheringtodeath .
#SONYFX6

ANDROGYNOSは両日参戦するので、気が向いたらレポ書きます。
【追記】書きました。


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