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残響の血脈〜mode of UROBOROS 〜
※映画のネタバレを含みます。2024年10月17日まで上映されているため、読みたくない方はスルーで。
「DIR EN GREY LIVE FILM 残響の血脈~mode of UROBOROS~」を観てきたので、感想など書いておきます。
記憶を頼りに書いてるので間違ってるとこもあるかもしれません。
DIRの曲は一通り知ってて国内ツアーはたまに行くゆるい虜、多少趣味で動画編集できる程度の素人目線です。
ベタですが、DIRのアルバムでどれが一番好きかと聞かれたら「UROBOROS」。という理由で、かなり公開を楽しみにしていた作品。
前編の「~mode of Withering to death.~」の記事はこちら
映画の概要
2024年3月、4年ぶりに開催されたDIR EN GREYのヨーロッパツアー。ツアーファイナルを飾ったドイツ・ベルリン公演を追ったLIVEドキュメンタリー映画。3月31日(日)公演の「mode of UROBOROS」のライブ映像をメインに、メンバーのインタビュー映像、舞台裏のドキュメンタリー映像を交えた122分の作品。
監督は、DIR EN GREYのライブ映像作品も手掛ける濱﨑幸一郎監督
過去アルバムをフィーチャーしたツアーは以前から国内では開催されていたが、海外では今回が初。「UROBOROS」は2008年11月発売の7thアルバム。
なお、2012年1月に「UROBOROS[Remastered & Expanded]」が発売されており、ベルリン公演での「GLASS SKIN」と「DOZING GREEN」は、こちらに収録されている日本語版だった。
2024年3月31日 ベルリン公演のセトリ
SE. SA BIR
1.VINUSHKA
2.RED SOIL
3.GLASS SKIN
4.蜷局
5.御伽
6.INCONVENIENT IDEAL
7.朧
8.BUGABOO
9.慟哭と去りぬ
10.HYDRA-666-
11.凱歌、沈黙が眠る頃
12.冷血なりせば
EN1.DOZING GREEN
EN2.STUCK MAN
EN3.Eddie
EN4.T.D.F.F
EN5.アクロの丘
映像について
10月5日投稿の映画公式Xの「#残像の脈々」で、使用された機材が明らかになった。SONY FX6とiPhone15Pro。
FX6は100万円超のプロ向けのシネマカメラ。SONY公式サイト曰く「シネマの映像表現と、デジタル一眼カメラα(TM)の技術を融合したコンパクトな映像制作用カメラ」。
暗所でのあの色味とボケみ、流石プロ用の機材。
しかし、速い曲ほどShinyaさん映ってる率が低いのは、やはり動きが速すぎる上に、手前に京さん(動きまくり&照明当たりまくり)がいるのでフォーカスが合いにくいのか?
ステージ上手の固定カメラの映像が使用されがち。
「BUGABOO」「HYDRA-666-」「Eddie」は曲の疾走感を出すために短いカットを細かくつないであり、盛り上がるフロアの引きのカットや、Wither編よりもフロアで観客の目線の高さで撮られた映像多めだった。
今回特に映像が素晴らしかった曲
「VINUSHKA」
照明が明るめなためか、メンバー5人ほぼ均等の尺で映ってると思われる貴重な曲。約10分と長尺の曲ゆえに可能なカット割り。一瞬入るToshiyaさんのアップの美しさにビビる。
リアルタイムに戦争が続いている2024年3月、バックスクリーンにはいつもの原爆の映像。それをあえて引きの画で入れてあった。
この重たい1曲目から、Wither編とは別のインサートの映像につながり、オープニングのタイトルが入った。
「GLASS SKIN」
バックスクリーンに白の額縁の映像が投影されている。
その中でステージには青い照明が当たっていて、輪郭がものすごくパキッとして見える不思議な映像。グレーディングで作ってるというより、現地でもこう見えてたのかも。改めてFX6の画質凄い。
インタビュー
インタビューはほぼiPhone15Proで撮影されていたらしい。FX6の映像とつないであっても遜色ない。スマホで映画撮れる時代…。
Wither編と同じロケ地で撮影されたシーンと、別シーンもあり。
京さん「クソ」連発
「自分の家以外クソ、家からコンビニ行くのもクソ、便所以外クソ」
「キャンセルできるなら今すぐ帰りたい」
「どうせ便所なんだし」
「海外の人が見たいなら日本来ればいいのに、安いし」
(参考:2024年3月31のユーロ円は160.46円。2023年同日は133.53円)
現場重視の薫さん
上記の京さんと対照的
「結局は人。どんな奴が、どんな目して、どんなこと考えて演ってんのか?そこで好きになる」
「京がそこに立って、歌ってるだけで、その歌や歌詞に(ファンは)共感したいわけで」
「THE MARROW OF A BONE」からの「UROBOROS」
2007年2月発売の6thアルバム。ベストアルバムを除いて「UROBOROS」の1つ前のアルバム。それまでのDIRの作品からすると異色の作品。
Shinyaさん「海外を意識し過ぎてた」
Dieさん「海外の音楽はハンマーみたいなもん。俺らが真似してもトンカチにしかならん。もっと別の武器…鋭いナイフとか」(いつもながらDieさんは言語化の解像度高い!)
Toshiyaさん「もっと自分達にしかできない音楽、日本的な…。それで作ったのが、UROBOROS」
「死」「老い」に関して
3月31日と言えば、Toshiyaさんのお誕生日。ケーキに花火みたいなローソク立てて祝ってた。笑顔でケーキ食べるToshiyaさんかわいい。
とはいえ、このシーンの前後に「死」「老い」に関するインタビューがつながっている神(闇?)編集。
京さん「老いたら老いたでやれることやればいい」「やりたいことしかやらないし、やれない。」「あと20年として、何枚アルバム作れんの?」
Shinyaさん「老いは確実に感じる」「いつ死んでもいいからストレスなく生きたい。」
Toshiyaさん「何かを残したいとかはない。やってきたことが結果的に残るならそれでいい。」
Dieさん「2023年は先輩方が亡くなった年。落ち込んでた時にTHE ALFEEのライブ見て吹っ切れた。70代でもあれだけやれる。」
薫さん「死ぬのは別に怖くない」「やり残したこといっぱいある。やらないと死ねない」
締めの一言的なやつ
Toshiyaさん「怒りと孤独と救済」
京さん「無、クソ、クソ」
Shinyaさん「音楽と、YouTubeと、謎解き。YouTubeは生活の一部。謎解きは生活の一部。」
Dieさん「心・技・体」
薫さん「怒りと妬みと愛」「自己嫌悪強くて、足りない物だらけでどうしようもない」「負けん気だけでやってるようなとこなんで」のナレーションとともに、イタズラっ子のような笑顔でステージを去って行く薫さんの姿で終幕。
ファンの方々へのインタビュー
Wither編同様、たぶんドイツ人のみなさんが英語で答えてくれていた。
メガネのお兄ちゃん(長めに話してくれてた人)めっっちゃ良いこと言ってる。
「僕が自分を愛せるようになった。」
「DIR EN GREYの音楽は息抜きであり怒り」
「人生でいろいろあったから。感情を発散する手助けをしてくれた」
字幕制作時に日本語訳を寄せてあったのかもしれないけど、終盤のToshiyaさんの「怒りと孤独と救済」の話に通ずるものがあり、作り手の想いが聴き手にちゃんと伝わってるのがこうして映画として残るって奇跡的。
大学で日本語を専攻していた人や、日本語分からんって人たちも「音楽が言語」「言葉は分からなくても伝わる」と口々に言ってくれるのは嬉しいが、海外虜勢にひとこと言いたい。
日本語ネイティブからしても、京さんの歌詩は難解!!
京さんに限らずだが、日本語は主語が略されることが多く、DIRやsukekiyoは英訳を読んで、主語を補完して分かる部分もある。プチブラに至ってはCDに歌詩が付かないので、今のところ全部聞き取れる曲はない。
聞き取れると分かるは違うし、全部理解できると思うのはアーティストに対して失礼な気もする。(「ヱヴァンゲリヲンって難しいよね?」→「庵野秀明以外分かんないと思う」の感覚に近い)
※比較的初期の曲に関しては、2003年10月刊行の『読むロックマガジン READ 京「痛みの原点」4万字インタビュー』から、歌詩の背景となった出来事は分かるが、より抽象度の高い歌詩になると捉え方も多様になると思う。
2024年に戦争がテーマの曲を演ること
おなじみの原爆の映像が堂々と流されていた「VINUSHKA」
歌詩に「アウシュビッツ」入ってる「凱歌、沈黙が眠る頃」
「INCONVENIENT IDEAL」へのツナギの部分。讃美歌っぽいパイプオルガンのインストに、爆破される海辺の街のビルの映像、血を流して倒れている兵士の映像。祈るような表情を浮かべる京さん。「鎮魂」のようなシーン。
いわゆる「先進国」が支持している、某国がやってる惨劇を改めて見せつける演出だったと思う。その表現に対し、理解あるファンが来てくれていて良かった。
なお、メンバーさん達がSNS等で直接的にテロに言及しないのは、事務所からストップがかかっているから(Shinya Channel フランス編参照)。ライブ会場がテロの標的にならないように、メンバー、スタッフ、ファンを守るため、細心の注意を払って発信をされている。
そこらへん分からずにリプに私情を書き連ねてるフォロワーをたまに見かけるが、社会運動は別でやろうぜ。デモ参加するとか、寄付するとか、研究者やジャーナリストの講演行くとか。
エンディング
9/29の横浜での舞台挨拶での薫さんの話から、濱﨑監督がエンディングに初期曲をもってくるであろうことは大体予想がついた。さて、どの曲か?
2024年に再構築版がリリースされているのは「ゆらめき」「残」「アクロの丘」「Cage」「予感」の5曲。
このうち「予感」はWitherで使用済。「アクロの丘」はベルリン公演両日ともアンコールラストの曲で、重複して使用される可能性は低かった。
「残」はShinya Channelの「映画『残響の血脈』の試写会に潜入しました!」の動画で、パネルのタイトルを差しながら、藤枝マネージャーと「残聴ける?響聴ける?脈聴ける?血?」「ないっす!!」のくだり(×2)があったので、ナシが確定していた。
(「残」で締めるならちょっと見てみたい…余韻もクソもなさそうww)
「ゆらめき」か「Cage」の2択が残った訳だが、エンディングは「Cage」
この曲は6畳ぐらいの薄暗いアパートで、毒親に育てられてる子供のイメージが強かった(「明日カノ」の雪みたいな)ので、ちょっと意外。
25年前、鬱屈した中学時代に聴いてた曲を、まさか壮大なドイツの風景とともに、シネコンで最高の音響で聴ける日が来るとは思わなかった。
席選びの最適解
![](https://assets.st-note.com/img/1728119072-CKvnckz2S970w5P8QxoWiaYM.jpg?width=1200)
公開初日の10月4日、TOHOシネマズ川崎のスクリーン9の3列目で鑑賞。
このスクリーンは4DXシアターのため、席の前後が広めに空いており、1列目と2列目の間に通路がある。席の前後狭めのシアターならスクリーンから5列目相当の距離かと。
結論:狭めのスクリーン中央前方席で観るとライブハウス感満載
ベルリンの会場、Astra Kulturhausはキャパ1,500人。都内だとZepp新宿、GARDEN新木場FACTORY相当の箱。
会場がドームやアリーナだったら、新宿ピカデリーのスクリーン1並の大きいスクリーンが合うと思うけど、個人的には小さめのスクリーンで観るのがおすすめ。
余談:既出「UROBOROS」映像作品との比較
既出の「UROBOROS」映像作品に、2010年1月9日・10日の武道館2daysの「UROBOROS -with the proof in the name of living…- AT NIPPON BUDOKAN」がある。
(こちらは濱﨑監督ではなく近藤監督作品)
当然セトリは似てるけど、広い会場でカメラの台数や置ける場所の制約が少ない状態で撮れる映像と、狭い会場で制約が多い中で撮られた映像は全くの別物。それぞれの良さがある。
しかし機材や編集ソフトの進化もすごいので、映像美+インタビューの充実度で言えば、「残響の血脈」に軍配が上がる。(完全に好みの問題)
ちなみに、2010年の京さんも歌唱力はえげつないのだが、1日目の後ろ姿が際どい…。腰に付けてるマイクの機材の重みで腰履きしてるデニムが下がってきて、最終的にアンコールの「CONCEIVED SORROW」でボクサーパンツ(豹柄)上半分見えてて、どうしても目が行ってしまう(Wアンコールの「残」でちゃんと上げてた)。
パンチラ見たい人は買ってください。
ベルリン2日目の京さんの衣装は、ロングスカートにコルセットでがっつり腰回りが守られていて、首から上と手以外露出度ゼロの完全防備だったので、見えてはイケナイものが見えたりはしません。
まとめ:複数回観た方が面白い
Wither編と舞台挨拶から「こう来るかな?」と予想しながら観る面白さもありつつ、インタビューは初見なのでもう1回観たいと思う内容。ライブ映像も情報量多いので消化しきれてない。
鑑賞リピートキャンペーンもあるし、地方の舞台挨拶もあるし、お時間ある方はぜひリピートしてみてください。
またまた長文になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
【追記】ANDROGYNOSで「UROBOROS」(「VULGAR」も)の曲全く演ってくれなかったので、三連休最終日に「残響の血脈」をおかわりしに行った。
たまたま時間が合ったのが横浜ブルク13のスクリーン13
![](https://assets.st-note.com/img/1728921665-PIpkOgtAa5xqUfCvHiDduohj.jpg?width=1200)
改めて観ると、京さんの衣装ジナス2日目と同じ?
コルセットの場合は、マイクの機材を背中中央(コルセット上部)に付けてるということは…逆さの赤子に機材が仕込まれてた?
謎が深まる赤子
#残響の血脈
#DIRENGREY
#UROBOROS
#SONYFX6
ANDROGYNOSは両日参戦するので、気が向いたらレポ書きます。
【追記】書きました。