エブリデイ・ミリタリズム!?平和のためのポスター教材紹介(英国クエーカーより)
次の絵は、今、イギリスで見られる光景。
何がある?何をしている??
こちらは戦争が私たちの生活に、どんな影響を与えているかを考え、対話を促すためのポスター教材。
この教材の制作背景や絵に描かれたことの意味については後述するとして、教材活用法紹介(原文)を意訳!(かなり意訳多め。例えば、ペアじゃなくてグループでもよいよな、日本なら付箋使える、問い方はもうちょいいじれる…等思うがままに。5ページほどの簡単な英文なので気になる方は原文を!)
教材の使い方(意訳)
1.ペアワーク:ポスター読み取り
二人一組をつくる。一人がポスターを見て、もう一人には手元にペンと紙を準備する。
ポスターを見ている方が、60秒の間に描かれたものをできるだけ沢山説明し、もう一人がそれを書きとる。
その後、他のペアと書きあがったメモを見比べる。
・どのペアが一番多く書きだせたか?
・書けなかったこと(≒見逃したこと)には何があるか?
(同じイラストに注目しても持っている言語数・視点により描写は異なる。ペアごと比較により、自分にはない視点が分かって面白い!そして書き取り役は、理解できないことでも書きとれるタイプか、理解できないと書きとれないから説明者に問いを重ねるタイプか、放棄するタイプか分かる!)
2.ペアorグループワーク:ポストイットで種類分け
三種類のポストイット(あるいあシール)を用意し、ポスターに描かれたものの中で当てはまると思うものを色別に貼り分けする。
赤ー戦争の可能性を強めるもの
青ー戦争の可能性を弱めるもの
黄ーもっと知る必要があること(≒よく分からないこと)
その後ペアorグループ/教室で、それぞれがポスターから見つけたことを話し合う。
・他の人が意見・発見に同意する?
・それに別の見方はある?
3.グループワーク:意見交換・話し合い
ポスターを見ながら、グループで次の問いを話し合う
・このポスターの中で何が起きているか?
・なぜ、それは起きているのか?
・それは今後どんな影響をもたらすだろう?
・ポスターの中にあること同士はどうつながっている?
・ポスターにあることと自分たちはどうつながっている?
・ポスターを見て驚いたことはある?
・ここに描かれていないことで、日常で「軍事/軍国主義の影響」と思うことはある?
4.グループワーク:沈黙の会話
このグループワークは無言で行うこと。
2~4人のグループをつくり、ポスターを見て感じたコメントや質問を書きだす。グループメンバーそれぞれに違う色のペンを渡すか、違う色の付箋を渡し、どれが誰の意見か分かるようにする。グループメンバーが書いたコメントや質問にも、さらにそれぞれから意見を書き加えていく(黙ったまま!こうして沈黙の会話がうまれていく)。
付箋ではなく、模造紙など大きな紙の中央にポスターを貼り、ポスターの周りに余白部分に買いてもよい。上記「3.グループワーク」にあげた質問を投げかけてもよい。
初めのグループでいったん活動が落ち着いたら、他のグループのポスターを見に行き、そこにあるコメント・質問に自分の意見を加えていく(これも黙ったまま!)。
最後に、この沈黙の会話ワークを通して気づいたポスターの内容、見方、興味深い点について、教室の何人かに説明してもらう。
5.哲学ディスカッション
ポスターを共有し、子ども自身に「大きな問い」を出してもらい話し合う。ディスカッションの組み立て方は。p4cのTeacher's Guide を読むとよい。
(え!?と思ったが、p4cとは"Philosophy for Children" のことで教員経験者、研究者による非営利団体。子どもたちに哲学的な思考を促す教材やら参考情報を多く掲載していて面白く、これはじっくり読みこんで紹介したい!いつか!)
この教材に込められた想い
英国で軍事(国)主義が日常化している現実を憂い、平和を希求してこの教材は作られたようだ。この教材を通じ、現状を認識し、それがどこから来たのか、そしてどのような影響を及ぼすのか、何故戦争が起きるのか、平和を築くために社会はどうあるべきかを多様な他者と考えられる、と。
教材作成元は、キリスト教の宗派の一つのクエーカー(日本人では新渡戸稲造氏が信者として有名)の英国サイト。クエーカーは特に平和を重んじる宗派で、英国・米国のクエーカー組織は1947年にノーベル平和賞を共に受賞している。彼らのサイトの中に聖書関連の教材の他、主に平和教育に関する無料教材が多数掲載されているページがあり、この #EverydayMiritalism 教材もそこにあったのだ。
「エブリデイ・ミリタリズム」と書けばポップに見えうるけれど、和訳すれば日常軍事(国)主義。everydaymilitarismで検索してトップに出てきたサイトは、1934年から世界の国々と平和と人権のために活動してきた英国の団体によるものだった。英国で日に日に軍事(国)主義が「普通のこと」になっていること、そしてその影響もあり軍事費拡大、核弾頭上限引き上げなどの政策が成立していることを問題視し、行動を起こそう!とうったえかける。さらにあなたはeverydaymilitarismに地域/職場/学校/大学で取り組んでいるか?と問いかけ、過去、市民活動が政策に、社会にどんな影響を与えたか例示する(つまり「あなたの行動は、社会を変えうる」と)。
何の数字?お花は?描かれた絵の意味を解説
英国に特に馴染みがないと読み取りきれない情報も多い…が!教材活用法紹介(原文)に、絵や情報の意味と、それにまつわる発問例、さらに情報が欲しい場合の参考サイトがしっかりと紹介されていた!
またも意訳しながら、一部データが古いところ等補足してみる。
①ヨーロッパで16歳で軍隊新兵を募集しているのは英国とベラルーシだけ。多くの国が18歳になるまで募集しない。英国軍の若い兵採用は、退役時にリスクや課題により多く直面する傾向がある。
【問い】英国の兵士採用年齢は、何歳からにすべきか?
②2009年以降「軍隊をもっと市民に見えるように」という政策のもと、基地外での軍服着用、軍採用ブースの設置、パレードやスポーツイベントでの軍隊紹介等が行われ、子ども達に銃を持たせたり、軍用車に座らせたりすることもしばしば。
【問い】軍についてより多く見聞きするようになることは、私たちの考え方にどんな影響を与えるだろう?
【参考】英国軍サイト:Careers/The British Army
③英国兵の死者数は、戦争が起きている国の死者数より少ない傾向があるが、それでも英国兵は戦争で命を落としている。
アフガニスタンでは2001年~2014年に456名死亡
イラクでは2003年~2009年に179名死亡
2011年まで、兵士の遺体はウートンバセット(イギリスの町)に運ばれ追悼パレードが開かれてきた。
【問い】人々が追悼パレードを見るために、通りに並ぶのはなぜだろう?
④現在、英国では少なくとも1万3000人の元軍人がホームレスになっている。またその多くがトラウマによるストレス障害や依存症に苦しんでいる。そうした中には、これらの問題を解決するため慈善団体からの支援を受けている元軍人たちもいる。
【問い】戦争で傷を負った元兵士を支えることを、慈善団体に任せっぱなしにすべきか?
【参考】軍事化・軍と人権について調査する団体/ForcesWatch
⑤英国では第一次世界大戦が終戦した11月11日は戦没者を追悼する日。10月下旬から街のあこちで赤いポピーの花が飾られる。赤いポピーは英国・連邦軍の戦没者の追悼、白いポピーは軍人・民間人問わず、あらゆる国の死者への追悼・平和を意味する。
【問い】追悼のための2分間の黙祷の間、何を考える?
【参考】平和と人権のための活動団体:Remembrance & White Poppies/Peace Pledge Union
⑥英国は1914年から戦争を続けている。2018年はイラク・シリアで戦闘しており、世界じゅうで25回の軍事行動をとっている。この年は4つの大きな紛争があり、前年より1万人死者数が増え、他にも1000人以上が亡くなった14の紛争があった。
【問い】戦争を終わらせるために私たちは何かできる?どうやって?
【参考】欧州クエーカー組織:Building Peace Together/QCEA
⑦2018年現在、6500万人以上が自分の住んでいた場所から逃れねばならない状況にある。これはイギリスの人口とほぼ同じである。その多くは他国に逃げてきた難民で、しかしいまだ多くの人々は自国のどこかにとどまっている。国連によると難民の86%はより貧しい国にとどまり、英国やその他の豊かな国にたどり着くのはごく少数である。
【問い】戦争から逃れてきた人々は、英国の軍隊記念日をどう感じるだろう?
【参考】国連難民高等弁務官事務所・イギリス:Teaching about Refugees/UNHCR UK
【補足】数字で知る難民・国内避難民の情勢 | 国連UNHCR協会によると2022年末時点で故郷を追われた人の数は1億840万人。難民の76%が中低所得国に避難、全体の20%を途上国が受け入れ。
⑧英国は世界6番目の武器輸出国。2013年~2017年、このほとんどがサウジアラビア、オマーン、インドネシアへ。これらの国々には人権に関するよくない記録がある。英国の雇用の0.2%にあたる5万5千人はこの武器輸出に関わる仕事についている。なお、最大の武器輸出国は米国。
【問い】世界中で武器を販売することは、どんな影響を及ぼしうるだろう?
【参考】英国の武器輸出に反対する団体/CAAT
【補足】世界の武器輸出額 国別ランキング・推移 - GLOBAL NOTEによると2022年、武器輸出額においてイギリスは7位(6位のドイツと僅差、日本は38位)。
⑨英国では戦争への抗議活動が何世紀も行われている。2003年、英国のイラク侵攻に反対し1100万人以上がロンドンを行進した。平和のための退役軍人団体は「21世紀に我々が直面している問題の解決策は戦争ではない」と言う。この団体メンバーは古参は第二次世界大戦に参加し、若い者はアフガニスタンで戦っている。
【問い】なぜ『平和のための退役軍人団体』のメンバーは功労に受けたメダルを捨てたのだろう?
【参考】英国反戦団体/Stop the War
【補足1】いきなり問いで「メダルを捨てた」話が出てきたが、恐らくシリア空爆に反対してメダルを捨てた次の動画、のことか、それに近いことがあったのだろう:Veterans throw away their war medals in disgust at British air strikes in Syria - YouTube
【補足2】④のイラスト説明には元軍人という言葉を使っているが、former soldierという単語が使われていたから。こちら⑨はveteranが使われているので、退役軍人と翻訳。違いは何?と調べたところ、退役軍人は最低24カ月役務を果たした人、という説明「も」出てきた(違いはない、という説明もあるし何が本当なのでしょう?)
⑩この数年で、武装した警察の数が7000人にまで増えている。
【問い】警察と軍隊の違いは何?武装した警察は人々により安心・安全を感じさせている?
【参考】警察監視のためのネットワーク/Netpol
【補足】2022/2023年データによると6038人で、2009年の6976人より減少はしている:Armed police in England and Wales 2023 | Statista
⑪軍事・戦争に関わるゲームやおもちゃは多く、時に軍の支援を受け作られるものもある。英国軍は公式なおもちゃをリリースし、米軍のゲームは兵士募集に使われたが、それはプレイヤーが決して死なない内容だった。陸軍のドローンを操縦士の中には、その仕事をゲームを遊ぶのと同じ、という人もいる。
【問い】軍事に関するおもちゃやゲームは、私たちの戦争についての考え方にどんな影響を与えるだろう?
⑫学校での士官候補生募集拡大、軍に関わるキャリアトーク、教師の軍隊派遣等のプログラムを通じ、政府は軍が学校に関わることを奨励してきた。
【問い】軍がより学校に関わるようになることで、どんな影響がありえるだろう?
つぶやき(これから記事にしたいこと)
私が社会科教師になってやりたかったのは、生徒に情報の受信・発信能力を培うこと(メディアリテラシー、と私は捉えている)。残念ながら教師力がポンコツすぎたのでそれは叶わなかったけれど、未だにそれに関わる教材・授業には飛びついてしまう。このポスター教材も、見た瞬間「面白い、訳してみよう!」と勢いでnoteにしてみた(よーく読んでみたらちょっと誘導が多めだったが)。
なぜこのサイト見つけたかというと、これまた英国の「ウクライナ・ロシアを子どもと向き合うための8つのTIPS」的なサイトを見つけまして、そこに紹介されていたのです。この8つのTIPSについても、近日中にご紹介したいな。
なお、今回とりあげた英国クエーカーによる平和教材ページには、他にも「安全のための国家予算を考えるワーク」があった。BREXITを決断した英国でいったいどのように!?!?「パレスチナ・イスラエル問題、人権を考えるワーク」もあった。英国の二枚舌外交が現在におよぶパレスチナ・イスラエルの禍根を残したわけだけれど、いったいどんな!?このあたりchatGPTに頼って紹介してみたい。