スタートアップのリーダーと組織の自由度を高める「曖昧さ・不確実さへの耐性」
これから話すことはなにもスタートアップに限った話ではなく、あらゆる人間に共通する話なのですが、不確実性の高い環境と周囲への影響力の大きさとを象徴するものとして、敢えて「スタートアップ」の「リーダー」という言葉を使いたいと思います。
スタートアップのリーダーに求められる「解像度を上げる力」「決断する力」
スタートアップは定義上、その性質に「革新性」と「成長性」を内包します。新しい市場や環境をつくること、あるいは新しいプロダクトで既存市場を代替していくこと。そこにスピードと高いスケーラビリティを持って成長していくことが求められます。
単に「複雑である」だけでなく「新しく」「不確実な」ことを「スピード感を持って」実行していく。それまでの世界を壊しながら、新しい世界をつくっていく。
そんな中でスタートアップのリーダーに必要とされるのは、 複雑で曖昧なことの解像度を高め、白と黒に分け、毎日数十数百の意思決定をおこない、失敗から学びながらも落ち込むことなく前に進んでいくことです。曖昧なものを曖昧なままにしない力が求められているのです。
それと裏腹の「曖昧さ・不確実さへの不耐性」
その「解像度高く捉える力」「決断力の高さ」と、ときに裏腹になってネガティブなインパクトを生み出すことがあるのが、「曖昧さ・不確実さへの不耐性」です。
事業は人がつくります。人は曖昧な存在です。その集合体としての組織はさらに曖昧な存在です。
筋の通っているように見えるロジックに混ざる「感情」、データドリブンの意思決定を方向づける「直感」、自他の境界、自分と組織の境界、歪んだ時間軸、価値観やバイアスという名の色眼鏡。関係性の中でそれがさらに増幅され、複雑さ・曖昧さを増していきます。
「耐えられなさ」がリーダーを極端に振れさせる
リーダーが一人一人の個性を大切にしようとしていたとして、それによって曖昧さ・不確実さが増していき、コントロールできない事態になったとき、「人は信用してはいけない」「ルールと仕組みだけを信頼する」「人は育たない」などと極端な言説に振れる現象はよく見られるものです。
リーダーがこうした曖昧さ・不確実さに対処できず(解像度を上げたり、コントロールすることができず)、かつそれらに耐えられないとき、組織のpolarityは動き、今度は異なる副作用が生まれていく。
曖昧さの不耐性は、このpolarity自体が振れる幅を大きくしてしまうインパクトも相俟って、二重で組織を混乱に陥れることがあるのです。
優秀なリーダーほど陥りがちな罠
組織においては「明確さ」が推奨されがちですが、実際に組織が変化するときには、人が捉えていた曖昧さを消化するためにかかる時間を考慮した上で、少しずつ変化するプロセスが必要な場合も多いのものです。
しかし、平時には高い解像度で捉え、決断力を持って進むことができる(それが求められている)リーダーほど、非常時において解像度が下がってしまったり、曖昧さが高まってしまうことに「耐えられない」ということが起こります。
リーダーが組織の状態をありのままに捉えることをやめて、拙速に明確な「答え」を出そうとすることで、現実の人や組織の曖昧さが内包していたさまざまな「調整」が効かなくなり、抑圧されていたエネルギーが噴出し、各所で綻びが生まれ、不満につながることもあります。
そしてもちろん、そこから曖昧さに振れ過ぎれば、再び曖昧さが過剰となり、副作用が生まれてくることでしょう。
安定・確実・直線的な成長は理想論にすぎない
そうは言っても、曖昧なままにしていると、「もっと明確に」という声が出たりする。明確にすると「もっと余白がほしい」という話が出てきたりする。個人差、価値観、バイアス、その相互作用にドライブされて、組織は常に、明確さと曖昧さに限らないpolarityを行ったりきたりしているのであり、それはつまり組織にとって絶対的な「安定して確実で直線的な成長」みたいなものが存在しえないということでもあり、リーダーは常に葛藤し、揺らぎ続けなければならないということでもあります。
きっとこれからも、人や組織が生きている限りその往来は止むことはありません。それだけは確実だからこそ、多くのリーダーがすでに鍛えておられる「明確にする(解像度を上げる)力」「行動を通じて確実なものを増やす力」に加えて「曖昧さ・不確実さにとどまる力」も同じくらい大切なものとして持っておいていただき、これらを主体的に行き来できる「自由」を手に入れていただくのが、polarityに振り回されないための戦略なのではないでしょうか。
人工知能に代替されない「曖昧さを扱う力」
そして「明確さ」のその先、いやその他方の極としての曖昧さと不確実さを扱う力は、相対的に言うならばAIにも代替されづらい、獲得難易度の高い力でもあり、これからのリーダーの資質として求められるものなのかもしれません。
スタートアップのリーダーのみなさま、そしてそれを支えるチームのみなさまも、スタートアップでもないみなさまも、今年一年、曖昧さ-明確さの軸に限らないたくさんの行き来、そしてそれに伴う葛藤や対立と向き合ってこられたこと、本当におつかれさまでした。
もしそこに、その行き来を支え、声をかける存在としてのコーチが必要なとき、そんなコーチ的な存在を組織の中に増やしたいときには、いつでもコーチェットにお声がけください。喜んでサポートさせていただきます。
CoachEdのメンバーでお届けしているAdvent calendarの23日目です😊