方丈宇宙™️ その② "優しさ"の距離
志村けんは優しかったと思う。新型コロナウィルスの自粛が始まってからも銀座や麻布十番の行きつけのお店に通っていたという噂があるが、「困っている人がいたら駆けつけて、その場にいてあげる」ことが優しさであるとは私が小さい頃から学んできた優しさだった。もちろん、いまでも病気の看病や、何か手助けが必要な方がいたら近くに寄り添って助けてあげる「優しさ」はある。
だが今の状況は「近くに居ない」ことが「優しさ」につながる。
「優しさ=近距離」と思っていたのに、いまでは「優しさ=遠距離」「優しさ=距離を置くこと」に、変化している。
東京および日本の7都府県に緊急事態宣言が出される前の週末、私は一人暮らしをしている母親のところに遊びに行きたかったのだが、「会いたい」と同時に「伝染したくない」という気持ちが強まり、結局会いにいかなかった。たかだか電車で40分ほどの距離である。今までだったら「会いに行って顔を見せてあげるのが優しさ」と思っていたのに、「自分が伝染しているかもしれないのに会いにいく、自分自身の状況が分からずに会いにいく。それって自分勝手な優しさなんじゃないか?」と躊躇してしまった。
優しさの意味の変容
シンガポールが感染拡大を封じ込めできたのは「TraceTogether(トレース・トゥギャザー(一緒に追跡))」というスマートフォンアプリがあったからと聞く。これは自分自身、自分の家族や大切な人、コミュニティを守るために、スマートフォンのBluetooth機能を使って、感染者との接触を通知してくれる。個人情報は隠された状態で「あなたは感染者と○月○日に接触されていました。しばらくは様子見をおこなってください」などと連絡がくるものだ。
シンガポールの取り組みは「コンタクトトレーシング(接触追跡)」という技術を用いている。これを政府も民間も使い効果を出している。スマートフォンの2OSを握るAppleとGoogleも手を組んで新型コロナウィルス対策のもとこの「コンタクトトレーシング」を進めている。
今までだったら少し体調悪かったとしても、自分の体調不良よりも相手のことを思うのが優しさであったかもしれない。だが、これからは自分の体調をスマートフォン経由で「見える化」して、何かあったときには接触した方々全員に連絡がいくような仕組みを行っている人が「人・組織・コミュニティに優しい人」となっていくんじゃないかな、と思っている。そして「感染=悪」ではなく「誰でも感染するので、感染した時にどのように迅速に対応するか?」を考慮し、行動できる人が「優しい」人と考えている。
「優しさ」の気持ちは普遍的なものかもしれない。
ただ、「優しさ」の態度は変容可能だとおもう。みんなで意識して行動できれば、と考えている。
方丈宇宙™️とは?
世界のあらゆる地域の人々がロックダウン・外出自粛で家のなかにいる2020年春、この状況を鴨長明が方丈=四畳半の庵で『方丈記』を記したかのように、自宅から世の中をみて、自然を感じた心や意識の変容を表していく徒然日誌。鴨長明のように、庵のなかにいても世界を感じることはできる、宇宙も感じられるのだ。