UFOの操縦方法について*ショートショート#宇宙SF
UFOのパイロットになるために特別な資格はいらない、と宇宙人は言った。
僕は宇宙人とコンタクトがとれる唯一の地球人として働いている。
今回のプロジェクトは、UFOに乗ってお月見ならぬ”地球を眺めよう”というツアーの企画だ。
僕がこのプロジェクトで最初にやることはまずUFOのレンタルだった。
地球人の作ったロケットやカプセルより、より安全に早く宇宙を旅することができ、さらにレンタル料もないに等しい。
僕が交信している宇宙人は、UFOをレンタルする代わりの条件を言ってきた。
UFOは操縦するのも乗船するのも、資格はいらないが”素質”が必要となる。
UFOに乗るための”素質”があれば使ってもいいし、宇宙人との交流にもなるため、外交官としての役目も果たしてくれ、と。
僕が地球人としての知識でその”素質”は何か…解読した。これには多少時間がかかった。いろんな方法で試した結果、わかったことは僕がUFOに乗れたのはHSPだからだということだ。
僕はHSP(Highly Sensitive Person)…繊細な人と呼ばれている人種だ。
すばやく相手の気もちを読み取り敏感に反応してしまう…困った資質だと思っていたことが宇宙人との交流をなめらかにした。
彼らと波長が合うのだ。
彼らが資格はいらないというのも頷ける。
例えるなら霊が見える人が限られているというのと一緒だ。僕は宇宙人と波長が合う。
UFOは部品の一つ一つが”意思”を持っている。
UFOを操縦して目的地まで到着するためには、UFOのすべての部品の”意思”と心を合わせねばならない。傲慢さ、高飛車な態度、知識だけではUFOはピクリとも動かない。
まして安全な旅をするためには、心を合わせ、お互いの波長を合わせ、目的に向かうことが要求される。
僕は喜んでパイロットを志願した。
そしてようやく初めての”地球を眺めよう”ツアーが実施された。
乗員は全部で5人。
この人たちも”資質”を持った人たちだ。
その”資質”がないと乗船できないことも、あとになってわかり(そもそも資質がないと乗船しようにもUFOすら見えない)この5人が選ばれたカタチになった。
乗船した彼らに、まず自己紹介をしていただいた。
「イチローです。船内が居心地がいいことに安心しました。
とても緊張していました。ひとりで楽しみたいときは黙ってます。
無視してるわけではないのでご理解いただきたいです。」
「ニックです。ここに来れたことが何よりの自信になりました。
落ち着いてレポートできるように、そして楽しめたらいいなと思ってます。」
「ミツコです。よろしくおねがいします。」
(おどおど…)
「シローです。今日はアースなカクテルで乾杯したいと準備してます。」
「ゴンです。パイロット志望です。勉強もかねてます。」
僕は操縦席からアナウスした。
「さあみなさん、こころを宇宙に合わせましょう。
今日はみなさんにとっても宇宙にとっても記念すべき日です。心を目的地に合わせたら出発します。では…出発!」
次の瞬間、僕たちは宇宙にいた。
5人は窓の外の地球を見つめた。
それぞれの目が写す地球は美しいという一言では表せないほどの光り輝く星だった。…これは実は僕が初めてUFOから見た地球の感想なのだが、きっと5人にもそう見えてると確信した。
なぜならUFOの走行は安定している。
こころがあっている証拠だ。
そのうちイチローが涙していることにゴンが気づいた。
「イチローさん、なに泣いてるんですか。俺も泣けるじゃないですか。でも先に泣いてくれたおかげで俺も堂々と泣けます。
ちくしょーなんてきれいなんだ…地球って星は…。
なんでこんなに泣けるんだ…。
ありがとう…これからも大事にするよ…。」
「ゴンさん…わたしも離れて地球を見て、初めて愛おしいって感情になったわ。さっきまであって当然だと思ってた星が、こんなにも輝かしい星だったなんて。この美しさをもっと輝かせるのにはどうしたらいいんでしょう。」
「ミツコさん…ニックも…私たちは”資質”があるんだ。心配しなくても大丈夫だよ。こころを合わせよう。さあ、乾杯しよう。」
シローのアースカクテルを、5人は泣き笑いな顔で乾杯した。
***
第1回”地球を眺めよう”ツアーは大成功。
その後、たくさんの参加者が増えていったこのツアー…やっぱり”資質”だけは欠かせないが、ちらほら宇宙人との結婚もでてきたためか”資質”がもっと宇宙よりになっていったかな。
そのうちUFOの操縦に資格がいるようになるかもね。
それまで僕は外交官として、そしてパイロットとして役目を果たしていこうと思う。
まだまだ参加者募集しております。
料金はもちろんあなたの”スキ”です。
UFOツアーが心を込めて宇宙をご案内します。
こころを合わせて宇宙への旅をお楽しみください!
おしまい