
【小説感想】シャーロック・ホームズの凱旋
■なんという爽やかな読後感!
森見登美彦の全てが入った集大成と言っても過言ではなかろう!
いや、過言かも。
まぁ、とにかく面白かったということであります。
タイトルや紹介文から漂うトンチキ臭!
まさにそれはそれなのだが。
そこから想像する想定を
軽やかに飛び越えた物語が広がっていったのです!
■舞台はヴィクトリア朝京都。
どこだよ!
謎の京都とロンドンが混じったような町に
名探偵ホームズは暮らしていた。
寺町通221Bに住んでいた。
ってなんだそこは!
■しかもホームズさんはスランプだという。
何も事件を解決できない。
確かにあったと思えるあの頃の才能の煌めきはどこに!?
というところで森見登美彦、
作者本人もスランプ状態があったので
その体験がきっちり反映されているし。
相棒のワトソンは彼の活躍を小説にして書いているという、
小説家が小説内部に現れる。
こちらにも作者の影が現れる。
■しかし前半のわちゃわちゃ感は
作者お得意の京都のボンクラ大学生の感じであり。
スランプから抜け出せない
ホームズの詭弁をとても愉快に楽しめる。
■そしてここはロンドンの
本物のシャーロック・ホームズの物語のパロディであり
並行世界的存在なので
そちらに出てくる登場人物たちが現れ。
あちらで起こった事件と似たような事件がこちらでもある。
そういう感じで愉快なホームズのガワを借りた
二次創作的面白小説なのだなぁ、
なんて思っていたらトンチキチン!
■これまた作者のお得意であり
ボンクラ大学生小説の反面的な存在である、
幻想小説のイメージが侵食してくるのだ。
■おやおや、これはいったいどうなるのか。
ホームズは言う
「この世には解くべきでない謎、いや、解く必要のない謎が存在する」
世界の裏と表、
物語世界と現実世界。
小説に書かれる人物と
小説を書く人物。
誰も自分が小説の登場人物なんて自覚することはない。
自分では分からないと言うこと。
つまり、これを読んでいるあなたも
物語の中の人物ではないとは言い切れない。
■そして物語には終わりがある。
かといって人生にも終わりがある。
それは何か大きな仕組みで動いているのかもしれない。
世界は私たちが思っているより
ずっと面白いのかもしれない。
■そんなことを思ってしまいましたよ。
最高。
イェイ!

シャーロック・ホームズの凱旋 (単行本)
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