両親と海外に行ってみた①
事の発端は今となっては不明だが、とにかく、両親と海外旅行に行くことになった。それも、ハワイやバリ島などリゾート地ではなく、アメリカやヨーロッパの最先端都市でもない、独特の世界観を持つ国、トルコとエジプトである。
最初はイタリアのピサの斜塔が見たい、ギリシャに行ってみたいと地中海から選んでいったことは間違いない。しかし頃合いのいいツアーがなく、どうせならエジプトにしてみるか、だったらトルコも行けるツアーがあるぞ、と流れに流れて、この結論に至った。元を正せば、どこでも良かったのかもしれない。
そうして某大手旅行会社のツアーに申し込み、入金を済ませ、出発まであと2週間となったころ。ちょうど旅行と同じ時期に撮影の仕事がダダ被ってしまい、旅行を取るか仕事を取るかの選択に迫られる事態が発生。このような世界(芸能)ではよくあることで、もちろん私は仕事を選ぶわけなのだが、そこで両親に相談をした。案は以下の2つ。
・私だけキャンセルする
・旅行の日程を変える
その結果、
父 → マリオだけキャンセル。寒い時期の旅行は無理。
母 → マリオがいないと不安。日程変更したい。でも2月以降しか無理。
私の目論見では日程変更オーライ!と来ると思っていた。しかし実際はそうではなく、結局「私だけキャンセル」論が一番現実味を帯びていた。でもそれでも仕方ないと思った。両親ふたり、仲良く海外旅行に行ってくれるもの悪くない。私の都合なのだから、私だけキャンセルするのが妥当であると言い聞かせた。
旅行会社に問い合わせると、出発3日前までキャンセル料は20%で変わらないと言う。撮影スケジュールというものは変更になることもあるから、最後の最後の望みをかけて、マネージャーからの連絡を待つことにした。
しかしそう甘くないのも現実。やはり現行通りの日程で事が進みそうであった。普段だったら届くとテンションの上がる旅行スケジュール表も見る気にならず、もちろん荷造りさえも出来ない。添乗員からの電話で事前連絡があったが「どうせ私行けないし」と適当に聞き流していた。両親の出発を見届けるためだけに成田空港へ向かうなんて・・・腹を括ったつもりだったが、まだ未練タラタラだった。
そして、キャンセル規定日の前日。
マネージャーから連絡が。。。
「撮影スケジュール、うしろ倒しになりました!」
状況を知っていたマネージャーは少し息を弾ませ報告してくれた。「行けますよ、海外!」と奇跡を電話越しに手を取り合うように喜んだ。あまりによく出来た話なので何か悪いことが起きるのではないかと不安になったくらいだ。すぐさま両親に報告。が、コチラのテンションとは裏腹に「えーそうなん?良かったね」くらいの反応だった。きっと私が腹を括ったのと同様、両親もふたりで行くことの覚悟を決めていたのだろう。だから拍子抜けしたんだ。うん、きっとそうだ。
そうとなったらやることが多い。準備諸々していたら、あっという間に出発の日となった。
空港に到着すると、父親は異常な荷物の少なさで、母親はすでにメディキュットを履いて待っていた。土壇場で行けることになった私は、意外と落ち着いている両親とは反対に、異常にノリノリで、おのぼりさん感が溢れており、クリスマスのオブジェでいの一番に撮影を始めた。
両親にも撮影するよう促した。この旅では両親の写真をたくさん撮ろうと決めていた。思い出はプライスレスで形がなく、心の中に大切に閉まっておくもの。だけど写真が残っていたら、より鮮明に思い出せる。
そうこうしているうちにツアーの受付時間となった。ツアーと言えば、高齢の方が参加するものと思っていた私は、同じツアーの参加者が集まったとき、とてつもない衝撃を受けることになる・・・
続く。