知らない世界を見たい?~「S」hiranai sekai wo 「M」itai?~①
私は長所を聞かれたら、「好奇心が旺盛」というタイプである。
なんでも体験したいし、見たことのないものを見たいし、食べたことのないものは食べたい。いろんな国に行きたいし、様々な国や分野の人と話したいし、知らない世界を見たい。
・・・とか思っていたけど、実際にそういう場面に出くわすと、知らない世界は非常に「怖い」ものだと痛感させられたのである。いかに私が保守的で、慎重であるか(これは単にマイナスの意味だけではなくて)気付かされもしたのである。
私がフリーライターならぬ、”フリ”ライターとして、様々なことに「好奇心を持って」、「いろんな世界の人に出会い、話を聞き」、「自分の力で」何かがしたいとイベントを開催することに決めた。その意思に賛同してくれ、協力をしてくれたのはなんば紅鶴の店長。幅広い交友のある店長にゲストの手配もお願いすることにした。
そして店長から送られてきたのがこのメール。
「SMクラブのお世話係兼緊縛師の方にお願いできました」
そこで選択肢は二つあった。
①自分のタレントイメージを考えて、断る
②自分の知らない世界を広げるために、受ける。
私は後者を選んだ。そのとき好奇心が勝り、知らない世界への扉を開けることに決めた。普段の生活では絶対に会うことも話すこともないであろう人、いろんな話が聞けるであろう人に会いたいと思った。
正直言うと、この時は深く考えていなかった。いい意味でも悪い意味でも使える、得意の「なんとかなる」の精神で。
イベントが近づき、ゲストのことを下調べしておこうと、「SM」をWikipediaで調べ、「緊縛師」の人をググってみて、ゲストの働くお店のHPを見て、その世界を覗いてみた。
「やばいかも・・・」 そう思った。
だけど、まだ、「なんとかなる」とも思えた。
そしてイベント当日。
ゲストに挨拶と打ち合わせに行ったら、なんと、女性だった。勝手に、私は、その方が男性だと思い込んでいた。作務衣を着て、そば職人のような出で立ち。物腰は柔らかく、丁寧で、不安そうな表情の私に「大丈夫ですよ」と言った。打ち合わせをしたいと申し出たが、「知らない方が面白いでしょ」と返されたことで不安は一層深いものとなった。
ゲストのOさんは自身で用意した出囃子(ゴジラの登場曲)に乗って、スーツケースとお土産を持って登場。いいとも風の演出である。
最初はゲストの紹介から始めるのだが、紹介するにも何も知らない。ゲスト自ら自己紹介をしてもらった。そのままの流れで、なぜかOさんは私の「色気」について話しだした。Oさんは私のブログを事前にチェックして下さり、私の仕事や人となりを把握して臨んでくれていたのだ。
「まりおさんって皆さんに表面上の応援はされているようですが、本当に愛されているんでしょうか?」
「健康的な色気はありますけど、果たしてそれだけでいいと思いますか?」
「人に発信するような仕事をしているのだから、女性の、そして人間的な色気が出れば仕事に幅が出てくるはずですよね」
「見てて、聞いてて、この人に惹きつけられるという魅力、そういうものを開発をしていこうではないですか」
Oさんのペースに飲まれ、どっちがゲストだか分からない。だから聞くしかない。と言うのも私は「色気」に対して苦手意識がある一方で、とても身につけたいとも思っていて、その話にとても興味をそそられたからだ。「聞きたい」「知りたい」と思う一方で、このまま思いもよらぬ方向に話を持って行かれそうで怖かった。
Oさんは私のためを思い、そして、SMの世界を少しでも身近に感じてもらおうと話を考えてくれていた。しかし、私は求めていたはずの『知らない世界』を目の前にしながら、纏っているプライドとかイメージ(タレントとしての)を剥がされかけたために、その波に乗っていいものか戸惑ってもいた。
「どうしよう」「どうしたらいい」「どうなるの」・・・
自分の意思を見いだせない中、とりあえずOさんがトランクいっぱいに持ってきてくれた道具を紹介してもらうことにした。
最初は乗馬用の鞭である。馬に使うけれど、人間にも使えるそうだ。
「実践をしてみましょう」ということで、お店のスタッフさんに協力してもらい、実際に道具を使ってみることになった。
SMで言うSは「サディズム」加害行動によって快楽を得る嗜好(を持つこと・人)で、Mは「マゾヒズム」苦痛に関して快楽を得る嗜好(を持つこと・人)である。つまりSは鞭で叩く(Oさん)、Mは叩かれる(スタッフさん)。
SとMは好き放題に叩き叩かれればいいかというとそうではなく、叩かれるための姿勢があり、叩くための方法がある。叩かれる方は足を肩幅ほどに開き、膝は軽く曲げ、前傾姿勢になって腕を壁などについて、その腕に頭を入れ、いわゆる受身の姿勢を取る。叩く方は背中の肩甲骨の下から筋肉のつき方を確認し、叩いても支障のないところを探す。そして、相手との距離感(ストローク)の確認も忘れない。いきなり強く叩くのではなく、最初は触る程度でコンディションを確認し、ウォーミングアップのようなレベルから始まり、徐々に力を入れていく。そこには2人のコミュニケーションがあるのだ。
そこで2回目の『知らない世界』への扉が開かれようとしていた。
「やってみます?」
②へ続く・・・
Oさんが持ってきてくれたお土産は、緊縛されたクマのぬいぐるみ
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