【鑑賞ログ数珠つなぎ】奇蹟
【数珠つなぎ経緯】
俳優の友人に『サラリーマンの死』を観に行くと話したところ、わたしは今度『奇蹟』を観に行くがチケットあるよと言われ、「もちろん行きます!」という流れで鑑賞することになった。
同じ三軒茶屋ということで、世田谷パブリックシアターはシアタートラムだと勘違いしており、行ってみると違う劇場だったのでビックリした。トラムはものすごく好きな劇場で(一度しか行ったことないけれど)楽しみにしていたので少し残念だったが、世田パブの中に入ったら、秒で好きになった。扇形に湾曲した3階まである客席は高貴なオペラ劇場を想起させたし、その割にコンパクトで舞台も近い。またしても座席が良かった。
主演は井上芳雄さん、鈴木浩介さん。鈴木さんは以前ケラリーノサンドロヴィッチさん作演出の舞台で拝見したことがあり、テレビもいいけど舞台マッチし過ぎる人だと思っていたので期待していたし、井上さんも間違いないだろうと信じ切っていた。あと歌も聞けるだろうと楽しみにしていた。
【あらすじ】
(HPより)
男の名は、法水連太郎(のりみずれんたろう)(井上芳雄)。警視庁などのコンサルタントも務める私立探偵である。
そして、何かとこの探偵を支えてきたのが、高校時代からの親友で、現役の医師である楯鉾寸心(たてほこすんしん)(鈴木浩介)だ。
ある時、探偵が残した「キキュウの依頼あり、出かける」との書き置きを見て、楯鉾は彼を追いかけ、深い森へと迷い込んだ。
そこで、傷を負い深い眠りについた探偵・法水を見つけ出したのだが、目覚めた探偵はあたりを見回し、こう口を開いた…
「誰だかワカラヌ私は、何処だかワカラヌここで何をしているのだ…」
探偵は、この”迷いの森“から何の依頼で呼び出されたのか…。一体、依頼者は誰なのか…。
記憶を失くした名探偵とその親友は、出口の見えない森の奥深くへ歩を進める…
そこに次々と現れる謎に満ちた人々は、現実なのか、はたまた忘却の記憶が生んだ幻なのか…
【感想】
セットは2D風というか漫画というか、立体だけど平面に見せる造り。舞台上にプロジェクションマッピングがバンバン写って場面転換をしたり、耳で聞いてもパッと理解するのが難しいワードを表示して手助けしてくれたりする役割も担っていた。
演出は寺十吾さん。寺十(じつなし)吾(さとる)とお読みすると恥ずかしながら今回知った。寺(てら)十吾(じゅうご)だと思っていた。大変失礼いたしました。
冒頭から鈴木さん演じるワトソン(楯鉾)が狂言回しとして、状況説明。ギャグも入れつつ、しかし医師の役どころなのでめちゃめちゃ難しいワードをキレのいい滑舌とテンポで進めていく。
そこへ井上さん演じるホームズ(法水)が加わり、記憶喪失ながらも爽快に推理を進めていく。ここまででもかなりのセリフ量。しかも説明ゼリフが多いのでとても大変そう。そんなことばっかり考えてしまうのは職業病なのか…
深い森、そこに住む美しい娘、消えた娘の祖父、森の奥にあるという祭殿…謎がいっぱい出てくるのだが、情報が多くて、しかも身近なワードではないというのもあり、理解しようと精いっぱい。だが、やはり難しくてついていけない状況になってしまった。キリスト教の歴史だったり、科学だったりの知識がないと、置いていかれる内容だと思う。
途中、井上さんの歌が入り、オリジナルのちょい面白歌詞で一息つけるのだが、結構頑張って見ないとただこちらはセリフの応酬を浴びているだけになってしまう。それを浴びるのもある意味贅沢なんだけれど。
内容としては自分自身消化不良を起こしてしまったけれど、演出は凝りまくっていた。プロジェクションマッピングのみならず、可動式のセットがダイナミックに動いたかと思うと、演者が手動で動かすようなアナログな装置があったりと、ちょっとツッコミたくなるような演出もあって面白かった。
『大豆田とわこと三人の元夫』で好きになった瀧内久美さんがその美貌を封印した役どころを担っていて、それも素敵だった。美貌溢れてたけれど。
友人と一緒に舞台を見ると、そのあと感想の共有が出来るのがいい。大抵はひとりで出掛けて、ひとりで考えたり、検索したりして終わりだけど、その感触が冷めぬうちにあーだこーだ語るのも、鑑賞の楽しみのひとつだなと感じた。
【次の作品】
映画『エレファント・マン』&『イレイザーヘッド』つまり、デイヴィットリンチ作品。の予定。