自粛生活note 2020/5/24
香りは遠い彼方に忘れ去られた記憶も一瞬でよみがえらせる力がある。
わたしは一応、香水を付けている。そんなに多くはつけていないし、自分は慣れてしまっているので匂わなくなっているが、たまに「香水、何つけてるの?」と聞かれることがある。聞かれてはじめて「あ、つけてたんだ」と気付く。自分よりも周りの人の鼻孔に残っていくものなのだろう。
だから、かつて好きだった人の香水の匂いが街中でフッと流れてくると、思わず振り返ってしまう。いるはずもないのに。同じ香水を使っている人なんかごまんといるのに。
エジプトに旅行した時、香水瓶のお店に連れていかれ(ツアーに含まれていた)、瓶と香水を買った。流暢だがクセの強い日本語をしゃべるエジプト人は、瓶よりも香水を猛プッシュしてきた。きっと利益率がいいのだろう。色んな香りを嗅がせ、2本ならいくら、3本ならいくら、とまとめ買いを勧めてきた。一組にひとり、店員が付いて回る。「あなたにだけよ」とこっそりと値段を書いた紙を見せてくる。さらに「ボスに相談してくるからね。秘密よ」と次のステージへいざなう。そのやりとりが楽しくなって、原価とか分からないけど面白いからいいや、というノリになって、最終的に買ってしまった(べらぼうに高い金額ではない)。
正しくは、香油と言われる香水の元になるもので、水やアルコールが添加されていないもの。蒸発しないので香りが長時間続く。香油は古代エジプトから使われていて、肌の香りつけや保護のために使われたと言われている。
なにがステキかって、その名前。「クレオパトラ」「ネフェルタリ」などエジプトの王様や女王たちの名前を冠したり、「ロータス」「ローズ」など花の名前だったり、「アラビアンナイト」などエキゾチックな名前をもらったり。
わたしは一番セクシーなネーミングの「Secret of the Desert」を選んだ。香りももちろん気に入って。
クセの強い日本語を話す店員の話の中で一番印象深かったのは、香水をつける場所のお話。
普段は両耳の下とおでこの真ん中のスリーポイント。
だけど、大切な日は、乳首と〇〇のスリーポイントです。
エジプト女王たちは大切な日にはそうやって戦に臨んだらしい。わたしも「砂漠の秘密」をスリーポイントに置いて、戦に行く日を待ち望んでいる。