朝がまた来る
もう何十年も生きてきて、雨に降られることなんて慣れてるはずなのに、ちゃんと傘だって持ってるのに、出来るだけ濡れずに駅までたどり着けるルートだって開拓したのに、どうしていつも舌を鳴らすほど嫌な気分になるんだろう。
子供のころは雨が好きだった。水たまりに映る自分を踏ん付けて遊んだし、かたつむりやカエルを拝める貴重な機会に胸が躍った。しかし、ながぐつを履いても足が蒸れた記憶がないのは何故だろう。
雨は悪くない。自然現象なんだから。バランス考えたらむしろ降ってくれないといけないくらいなのに。かつて人々が祈りを捧げてお呼び立てしたくらい求めてやまなかったのに。
止まない雨はないというが、病まない雨もない。
かれこれずっと雨に慣れない。人は痛みにすら慣れると聞いたことがある。「慣れ」というのは人間に備わった生きていく上で必要不可欠なシステムだ。雨は例外なのか。バグなのか。
人間は体内の60%が水分だという。だからか。雨と反発しているのか。絶対に濡れないという謳い文句のカッパがあったとして、それで1mmも濡れなかったとしても、雨を好きにはなれない。
雨は慣れないし、好きになれない。
でも実をいうと、嫌いでもない。
彼が家を出て行った夜。
雨が降った。しかも大雨。ゲリラ豪雨。
彼は大きな荷物を持って、もちろん傘は持っていなくて、家から駅までの15分歩いたはずだ。びしょ濡れだ。ざまあみろ。
あなたのいない朝には慣れた。
でもやっぱり雨には慣れない。
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