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【鑑賞ログ数珠つなぎ】かそけきサンカヨウ

ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:映画『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』

https://note.com/marioshoten/n/n65ec0f3a053d

【数珠つなぎ経緯】

目黒シネマでの「~父と娘、家族の絆を結ぶ2本立て~」。『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』に続いて見たのは、『かそけきサンカヨウ』。

井浦新さん出てる映画は理由はないけど何だか見たくなる。アラタ時代から好きだからか、単純に。そして監督が今泉力哉さん。名前はよく聞くけどちゃんと見たのは『愛がなんだ』に続きこれが2本目。原作は窪美澄さんの短編集「水やりはいつも深夜だけど」所収の一編。

【あらすじ】

幼い頃に母が家を出て、ひとりで暮らしを整えられるようになっていった陽は、帰宅してすぐに台所に立ち、父とふたり分の夕飯の支度にとりかかるのが日課だ。
ある夜、父が思いがけないことを陽に告げる。「恋人ができた。その人と結婚しようと思う」
ふたり暮らしは終わりを告げ、父の再婚相手である美子とその連れ子の4歳のひなたと、4人家族の新たな暮らしが始まる。新しい暮らしへの戸惑いを同じ高校の美術部に所属する幼なじみの陸に打ち明ける陽。実の母・佐千代への想いを募らせていた陽は、それが母であることは伏せたまま、画家である佐千代の個展に陸と一緒に行く約束をするが・・・。

公式HPより引用

【感想】

”かそけき”も”サンカヨウ”も意味が分からない。あらすじを読む暇も、調べる時間(気)もなく、また映画が始まった。

オープニング。
放課後にクラスメイトと喫茶店でだべるのが習慣のような高校生男女5人組。その中に陽はいる。ただ、中心的な人物ではなく、聞き役に徹するタイプで、「陽は?」と振られてようやく話し始めるような女の子。陸がみんなに「覚えている中で一番古い記憶は?」とみんなに問う。それぞれが次々と答えたが、陽は思い出せずに答えられずにいるとアラームが鳴る。晩ご飯をつくらなければならない陽に、その時間を知らせていたのだ。
晩ご飯をつくりながら、陽は思い出す。キャリーでおんぶされている陽に母親がサンカヨウの話をする。だが母親の顔は見えない。

そこで初めて、サンカヨウを理解。水に触れると花びらが透明になるというとても珍しい植物らしい。そして陽には母親がいないということも。

そして、いつだって父親は突然カミングアウトする(パーフェクト・ノーマル・ファミリー然り)。

「恋人ができた。その人と結婚しようと思う」

アラタ~!!(父親が井浦新)
いきなり言わないでよぉ~。娘の気持ち考えてよぉ~!
どう話したっていきなりにはなるんだろうけど、それでも、日常の何気ない食卓で突然ポソポソ言うことかね、と少し陽の気持ちになって怒っちゃった。陽は動揺を見せることも、否定することもなく、受け入れた。いや、受け入れたように見せた。それはきっと父のため。

そこからは新しく母になる人と、その連れ子の5歳の天真爛漫な少女との4人暮らしが始まる。どうしても5歳児に合わせた生活になっていく。服を汚されたり、わがまま放題されたり。でも陽は甘えることを知らなかったから、我慢強さがMAXレベルで高いので、淡々と振る舞うことができる最強の戦士である。それがカッコよくもあり、切なくも見える。

そこから、新しい家族のカタチ、そしてこれまで会うことのなかった産みの母との関係、陸との恋愛模様、陸の家族のこと、などが絡み合いながら進んでいく。

陽は自己表現は少ないけれど、意思はしっかりあって、自分の気持ちを伝えたり、感じたりすることに物怖じしない。そしてとにかく純粋で優しくていい子。だから見ていて、応援したくなる。

志田彩良ちゃん、初めて見たけれどこれから注目しよう。あと陸役の鈴鹿央士くん。これは来るよ。今の時代に求められる完璧すぎないイケメン。中性的で、儚さと弱さを持ちつつ、芯の強さを感じるような。役柄もあるだろうけど、めっちゃ誉め言葉として言うけど「いい塩梅」なんだ。狂気じみた役も似合いそうだし。要チェックや!!

ちなみに、見終わって真っ先に調べた「かそけき」の意味。

かそけき(幽けき)
今にも消えてしまいそうなほど、薄い、淡い、あるいは仄かな様子を表す語。古語「幽けし」の連体形であり、現代でも雅な表現として用いられることがある。

https://www.weblio.jp/content/%E5%B9%BD%E3%81%91%E3%81%8D

サンカヨウを形容するにふさわしい言葉。
窪美澄さんの著書を読んでみたくなった。これこそが数珠つなぎ。

【次の作品】

『命、ギガ長ス』
作・演出 松尾スズキ
出演 宮藤官九郎、安藤玉恵

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