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虚構新聞展

「虚構新聞」は、2004年の創刊以来20年にわたって、時事などを題材にしたくすっとできる虚構記事をネット上で配信してきたウェブサイトのこと。そして、そのリアル展示会が大阪で開かれ、続いて東京でも開催された。

訪れたキッカケ

とある方のインスタを見て、「あ、面白そう」と思い、すぐに予約した。
それはこの虚構新聞展in東京の参加アーティストであるケイタイモさん。

今年の夏に行った「須藤寿 GATALI ACOUSTIC SET」のライブで(もちろん長岡亮介目当て)ベースを弾いてたのがケイタイモさん。その特徴的な風貌と対照的な物静かな佇まい、そして彼の描くゆるゆる漫画に惹かれ、ちょこっとだけ追いかけてたのだ。

そして、虚構新聞展の存在を知った。

アーティすぎる会場

虚構新聞展の会場は、BnA_HOTELという、ホテル。

そのコンセプトは

「アートに泊まる、パトロンになる」
BnAは宿泊費の一部がアーティストに還元される、「泊まれるアート作品」です。

https://www.bna-hotel.com/

なにそれ、めっちゃ面白いし、素敵やん。

どうせならついでに泊まってみたいと思い、BnA_HOTELのサイトを見たのだけど、正直高い。まだまだパトロンにはなれそうにない…

1階が受付と売店&カフェバーになっていて、地下が展示場、上の階はホテルになっている。

地下に下りる階段からもう、アートが溢れている。

螺旋階段にはオシャレな絵や展示物
これも作品のひとつなのだろう

いざ、虚構新聞展へ

実は何の前情報も持っていない。
タイトルからして【虚構】の【新聞】なのだろうというごく単純な印象だけを持って、ここまでやってきた。

虚構、つまり想像であり、創造であり、妄想である。

足を踏み入れると、素人なのか玄人なのか分からないニュースを読む声が耳に入ってくる。よくよく聞いていると、とても適当なことを言っていて、しかも読みながら寝落ちしたりしている。だんだんいい感じのBGMになってくるから不思議だ。

そのBGMを聞きながら、まず見入ったのが年表である。

虚構新聞の歴史と、代表的な記事と、実際の年表。
読んでいると思わず「ふっ」とにやけてしまう事件が多数。

【令和生まれ、見えぬ将来「なりたい職業」無回答が100%】が好き。

目についたのが【誤報】というワード。
この記事は全部虚構なので、事実になると【誤報】になってしまうのだ。

上の写真の【誤報】は《ジョン・ケージ「4分33秒」トリビュート盤発売決定》なので、本当に発売されたということ。

近代。【桃太郎、犬とキジを解雇 鬼退治の効率化図る】がお気に。

なんかありそう。でもなさそう。
痒いところに届きそうで届かない感じの記事が面白い。

ドドンと虚構壁新聞

デザインやイラストなど様々な分野で活動するアーティスト6人がそれぞれ選んだお気に入りの虚構記事を、そのアーティストが得意とするタイポグラフィで直描きしているという。

6m×6mの巨大な壁はこのホテルのトレードマークでもあるそう

色んなタイポグラフィ(字体)があって面白い。
正直、読めないタイポもあるけど、とてもいい。暗号のようで。

わざと擦れているように描いたり、文字のイメージにあった字体にしたり、文字だけでこんなにもデザインとして遊べるのが素晴らしいの一言。

怪談師としても有名なApsuさんも参加していて驚いた(この日知った)。

ケイタイモさんは右上の「虚構壁新聞」の下の広告欄を担当したそう。

サイン達もそれぞれ個性的で独特

実物があって笑い倍増

記事に合わせて実物が展示されていたのだが、このコーナーが一番好きだった。

究極の初心者向け「2マス将棋」発売

発売したら、売れそうじゃない?

「将棋の醍醐味の99%は駒音。勝ち負けは二の次です」にはワロタ。

幻の「フライエビ」全身化石見つかる

下側のちっちゃいのは尻尾部分

『化石の周りには捕食された後のフライエビの尾の化石が6個散乱していたことから、「エビフライの尻尾は食べるべきか」という長年の論争についても、古生物学的には「可食部ではない」との結論がまとまりそうだ』

えー、尻尾食べる派なのに…

ダイヤモンドから炭の生成に成功

費用対効果が悪すぎる…

バーベキューパーティに食材とダイヤしか持って来ないことってある?笑

ニュースのタイトル自体の面白さはもちろんだけど、ちょっとした専門家(もちろん架空の人)のコメントに追加でやられる。

虚構新聞のすごさ

気持ち悪いほどのリアリティ。
時代を読み、時代に乗りまくった、虚構記事たち。

日頃、私たちがどこかで「面倒だな」「なんか変だな」と深層的に感じていることを見事にピックアップして、記事に昇華させて、その気持ちを消化させてくれる。

そして時に【誤報】と言う名の【真実】を突いてくる。
いや、突くのではなく、真実が追いついてくるのだろう。

実際、虚構新聞の記事を見て、追っかけてつくられたものもあるくらいだから。

虚構は、嘘。
つくられたもので、架空の事象。
でもそれは、本当に【嘘】と言えるのか?

信じられないことが起こる世の中。事実は小説より奇なり。
つくられた嘘のほうがまだ愛おしく思えることもある。

嘘をついてはいけない、と教えられ育ってきたけれど、「優しい嘘」が時に許されるように、笑える嘘、楽しい嘘、明るい嘘、励ましの嘘、あたりはもっと必要とされてもいいんじゃないかなぁ。

もちろん程度やタイミングはあれど。

これから、ちょっと寂しい時とか、落ち込んだ時とか、虚構新聞を読んで、クスリとしていきたい。

社主UKさんのお面をかぶって撮影もできる
空気イス、本当にあったら高校の部活は楽だったな。

この虚構記事たちは取材して書かれたのか、想像だけで書かれたのか、どういうシステムで作られているのかは謎だけど、とにかく私の創造力は掻き立てられた。

こんなオモシロを表現できるようになりたい。

24日まで開催中なので、是非。
1時間以内でさっくり見れるし、3時間以上じっくりも見れる。

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