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芸能人になるには。

 私の知り合いには「先生」いわゆる「教師」が多い。その理由は簡単。私は教育学部出身だから、大学の仲間は教員になる人が圧倒的に多いのである。教員にならなくても、大学院に進学し、教授を目指していたり、大学職員として働いていたりと、教育に携わっている人も多い。他には、消防士など公務員もいるし、体育学部なのでスポーツの選手として活躍した人もいる(過去形なのは現役でやっている人はほとんどいないから)。
 私のように一般就職をした人は少なく、さらに、芸能の世界に身を投じているなんてまさにマイノリティリポート。私の把握している範囲では。それでも、バレー部の先輩に役者として様々なドラマや映画に出演されている方(直接の接点はないのが残念)や、バスケ部の先輩でリポーターなどしている方もいらっしゃる。是非会ってみたいと思っている。

 はじめはこの芸能の道を歩んでいるということを周りに知られるのは恥ずかしかった。なぜなら歩いているつもりだが、仕事を全くしていなかったから。「松竹芸能(の養成所)に入りました!」とは言えても、「毎日アルバイトしています!」とはやはり言いづらい。「大学を卒業して、就職しましたが、一念発起して芸能人になるために頑張っています」と言ったところで、「スゴイじゃん!がんばれ!」と表向きに言ってもらっても、本当は「何をしてるんだ」「バカじゃないの」と言われるのが普通。親にも泣かれるのが普通。私の場合、親には泣かれましたが、友達は応援してくれました(表向きには?)。

 しかし、世の中のイメージとは恐ろしいもので、芸能界の中で例え隅っこの隅っこにいたとしても、ものすごく仕事が忙しそう、とか、ギャラが良いんだよね、とか、移動はタクシーでしょ、とかそんな認識を持たれることが多い。この私でさえ、電車に乗っていると驚かれることがある。本当のことを言うと、養成所に通っていた1・2年目は、バイト・バイト・バイト・スクール・バイト・たまにオーディション、そんな生活だった。とても芸能活動してますとは言えないことは分かってもらえると思う。まだ当時(10年弱前)はブログくらいしか自分を発信するツールがなかったから、たくさん芸能の仕事をすることを夢見ながら、日々バイトに明け暮れても許された時代でもあった。
 
 そうやって慎ましやかに暮らしていたにも関わらず、TwitterやFacebookといった、これまで接点のなかった人々を勝手に繋ぐ代物が出てきたもんだから、また流れが変わってきたのである。振り返ってみると、私はFacebookを2010年7月から、Twitterは2011年4月から始めている。いやぁ、実によく出来ている。この2010年から私はレギュラーの仕事が始まり、テレビにも出る機会もあり、イベントの仕事も頂けるようになっていたのだ。あー良かった。
 そして、このSNSを通じて、大学を卒業して以降、あまり関わりのなかった先輩や後輩の近況を知ることが出来るようになった。と同時に、私の状況も知られるわけで、私が今このような仕事をしていることを驚かれたわけである。あー仕事があって良かった。本当に感謝しかありません。

 そうなるとSNS上で私はとてもキラキラしているように見えるわけである。もちろんこちらもキラキラしていようと演じている部分もあるわけで、実は酔っぱらってトイレに籠って〇〇たり、いつも口を半開きで〇〇たり、たまにどうしようもなく陰気になって〇〇たりする(〇〇は想像にお任せ)ような、闇の部分は隠して、それはもうキラキラしている部分だけをSNSにアップするようになる。まぁそれは今でもしてるけど。だから裏アカウントなるものを作る人たちの気持ちも分からなくはない。一応断っておくが、私はない、はず。
 SNSでしか私を見ていない人には、芸能の仕事で忙しくて、色んな有名人やスポーツ選手と仕事をして、お芝居なんかにも出たりして、ちょっと贅沢な暮らしをしているように見えたかもしれない。見えていたなら成功だ。ふふふ。
 それは、一方では真実であるし、また一方では真実ではない。

 私はぶっちゃけたくてこの記事を書いているわけではない。そのSNSの私を見て、教員をしている知り合いから送られてくる「マリオみたいな仕事をしたい生徒がいるからアドバイスしてほしい」とか「どうやったら芸能人になれるのか教えてほしい」と言う質問に対して、ここできちんとお返事したくて書いているだけである。

 まず、芸能の仕事は幅が広い。ただこれは企業にも言えると思う。「会社員」と一言で言っても、営業・経理・総務・庶務・人事・マーケティング・システム系・法務・受付など、様々な仕事があるわけで、例えば進路指導で生徒が「〇〇会社に行きたいです」と言ったとしたら、必ず先生は「その会社で何の仕事がしたいんだ」と聞くはずである。芸能も同じ。「芸能界に行きたいです」と言われたら「何がしたいんだ」と聞くのが第一段階であるように思う。芸人なのか(さらに、コント、漫才、落語家、漫談、モノマネと細分化される)、役者なのか、歌手、ダンサー、アナウンサー、レポーター、ラジオDJ、声優、アイドル…まぁ無数にあるのだ。ただ、これが決まってないからと言ってなれないわけではない。〇〇さんみたいになりたい、でもいいし、とにかくテレビに出たい、でも、人前で話す仕事がしたい、でも、漠然としていても問題ないと思う。そこから、私のように芸能プロダクションが行っている養成所に通うという選択肢もあるし、専門学校に通う、誰かに弟子入りする、事務所やテレビ局が行うオーディションに参加する、などに分かれていく。
 
 ここまで説明しといて、と思われるかもしれないが、やはり最後は『本人がどうするか、したいか』だと思う。進路指導で先生に話すことは大切だし必要だが、
「先生タレントになりたいんです、どうしたらいいか教えてください」
と言うような子には難しい世界なのかもしれない。
 飛びぬけて可愛い子やスタイルのいい子はスカウトされる。自分が一番面白いと思っている子は誰に言われなくてもお笑い事務所の門を叩く。歌手になりたい子は一人でもギターを担いで路上ライブをする。落ちても落ちてもオーディションを受けまくる。ありとあらゆるコネクションを使う。そうやっても、仕事がもらえるのはごく一部で、売れるなんて一握り、そんな世界。だからやりたいと思えばやってほしい。これだけインターネットが発達しているんだから、養成所なり、専門学校なり、オーディションなり調べて行動してほしい。やってみて、ダメだったら別の方法を探せばいい。最初はアイドルになりたかった人が、なれなかったら芸人になってもいい。歌手を目指していた人が、役者をやってもいい。もちろん全部にトライしてもいい。そんな何でもありの世界だから。

 「なるのは簡単、続けるのが難しい、辞めるのはもっと難しい」なんて言うけど、本当にその通りで「私はタレントです」「僕は芸人です」って誰でも言えるし、言ったもん勝ちなところがある。だけど、芸能の仕事をたくさんしたい、いつか売れてやる、という強い思いを持ちつつ、タレントとかけ離れたアルバイトをしながら、モチベーションを保ち続けることはとてつもなく難しい。でも、辞めなければチャンスが巡ってくるかもしれない、その思いで歯を食いしばって続ける。そうすると周りが売れていく、と同時に、辞めていく。芸能界は引退も定年もないから、辞めるのは自分次第。辞めるという決断を下すのは死ぬほど勇気がいることだろうと思っている。でも、辞める=不幸、でもなければ、辞める=負け、でもない。よくテレビ番組であの人は今、的なものがよくあるが、芸能界を辞めて大成功した人はたくさんいる。
 だから先生方には、なる方法だけではなく、辞めるときのことについてまでしっかりとお伝え頂きたい。

 私が事務所に入ったのが25歳。はじめは30歳で区切りをつけようと思っていた。だけど気付いたら34歳。決して「売れた」わけじゃないけど、やりたいことがまだある。だから続ける。これは誰に頼まれたわけでもない、私が決めたこと。そうやって、それぞれの区切りで、節目で、歩んでいくだけ。そして、もう辞めてもいいなと思うか、他にしたいことが出来るか、結婚して家庭に入るか、など、何かが私の中で起きたら、また次のステージに進んでいくのだと思う。何回も言うけど気づいたら34歳で、まもなくこの世界に飛び込んで丸10年になる。あー電撃結婚して山口百恵みたいにマイク置いて電撃引退したい~なんて思えない。だって歌手じゃないし、売れてないし、三浦友和と出会ってないし。しかし、ここまでやるとは思っていなかった。まだやるとはもっと思っていなかった。そこまで売れてないのに。だけど、私はやるのだ。

 ひとつ言えることは、出会った皆さまに感謝をしなければいけないということ。今こうして好きなことをして生きていられるのは、親や師匠・先生、先輩、仲間、後輩、友達、お仕事で出会った皆さん、応援してくれる皆さん、関わってくれたみんなのお陰だから。関わること、繋がることはとても大切なことでもあるから、これからもSNSを使わせてもらって、プライベートにも仕事にももっと生かしていきたいと思う。34歳、ギリサーの女、まだまだ頑張ります!

 教員の皆様、少しでも参考になりましたら幸いです。

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麻利央書店
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