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イースⅧ~Lacrimosa of DANA~の感想

 イースですよイース。
 シリーズに初めて触れたのは小学生の頃。友人がFC版2をプレイしてるのを後ろから見てました。
 時は1990年、横スクロールACTはキャラの大型化や背景の描き込みが増えてリッチな印象になり、RPGもボスモンスターが画面いっぱいに表示されるようになった時代ですから、小さなキャラ同士がぶつかるイースはいかにも「ちゃち」な印象を受けました。
 ただ1点、BGMを除いては。
 
 画面は上から下への滑り台が多い、青みがかった真っ白なフィールド。そう、舞台はノルティア氷壁。曲は『Ice Ridge of Noltia』です。

 苦手なアクション要素を含むゲームをプレイする気にならなかったため長らくBGMの良さだけを心に仕舞ったままでしたが、この曲はずっとゲームBGMのオールタイムベスト。ずっと後年、Wiiを買ったときバーチャルコンソールでPCE版のイース1・2を遊びましたがやっぱりいいなあと思ったものです。
 
 その後もイース7、フェルガナの誓い、ナピシュテムの匣etc……発売される度に買おうかな、でも難しかったら嫌だなと悩んでスルーしてきたんです。なんといっても前述の1・2はレベルMAXまで上げてもクリアできず、攻略ページをガン見してなんとか終わらせた状況だったので。

 更に時は流れて2024年夏。RiJで披露されたイース8のバグありRTAの出来が良かったこと、プレイ中の雰囲気が楽しげで好きな感じのキャラもいたことから「まあいずれ買えたらいいな」くらいの軽い気持ちでお気に入りリストに突っ込んでたんですよね。それが年末に目を疑うような割引されてたもんですから、これやんなきゃ嘘だわ!と思った次第。


 今作は約3週間、難易度はnormal→easy、48時間でクリア。自分はクリアしたゲームを☆1~☆5で評価してるんですが、最後まで評価☆3か4かで迷いました。いや、つまらないわけではないんですよ。ただ強烈にのめり込む時間もまたあまり無かったというか、没頭をゲーム側からちょいちょい妨げられたというか……。

仕様


無人島に残る苔むした遺跡。いいですね。

 とにかく背景が綺麗。
 最近、HDリマスター(HDを「スゴく綺麗」くらいの意味だと思ってます)を謳ってるちょい前のゲーム多いじゃないですか。このイース8こそHDで出して欲しい、と強く思いました。漂着した絶海の孤島が舞台ってことで砂浜やら岬やら高山やら、雰囲気変わって古代マヤアステカ風の建造物やら……。それだけにオリジナルの発売は10年前ってことでエッジがダルかったり遠くの方がカクつくのがすごく残念。

波濤の表現の稚拙さに時代とか技術力を感じる

 
 イベントシーンにおけるキャラの動きの不自然さも、伝わるか微妙ですが、プレステ時代の3Dモデリングみたいなんですよ。
 話していた相手が走り去る際、歩くモーションをしながらその場で180度回転し、走るモーションで向こうへ平行移動していく感じというか……この辺の古さは最後まで気になりました。
 
 ただ、そのおかげか知らないけどもロードは爆速。ロード中に表示されるtipsが読めないレベルで、画面切り替えで0.5秒以上待ったことほとんど無いんじゃないかと思います。
 ゲームの進行は、ツタをクライミングしたり沼の上を歩いたりと技能が解放されるにつれ行動範囲が広がっていくスタンダードなアクションアドベンチャーという感じですが、助けた漂流者の力借りて途を切り開いていく仕掛けはみんなで協力している感があって楽しい。

漂流者を探す誘引にも繋がる


 新しいエリアに進むたび仲間たちが話しかけてくれるので一緒に冒険している感覚が味わえるのも○。冒険を進めると目を奪われるような絶景が各地に用意されていて、それらを集める楽しみもある。

竜血樹だこれ。こういったロケーションは豊富で探索意欲が湧く。


収集要素としてはほかにも魚釣り(この手のゲームだと定番)、素材を集めて作る料理のレシピなども。

 マップは広域詳細の切り替え以外にもマップ間の繋がりやアイテムポイントの表示もあって見やすく便利。そして先の収集要素に加え踏破率も一定のラインを越えるごとに報酬が貰えるのも、もっと集めよう、色んな場所に行ってみようという気分を盛り上げる。
 実際にマップ自体はかなり広いけれどファストトラベルの拠点もそこそこあるし、チェックポイントが無料の全回復も兼ねてるのでどんなピンチに陥ってもひとっ飛びで体勢を完全に立て直せるのもストレスにならない。この辺のゲームデザインは爽快かつ親切で非常に良かった。

マップは情報が多くとても便利。ズームで更に詳細な表示も。


キャラクター

  ファザコンでショートパンツ着用でクラシックスタイルのツンデレでPTを知識面でサポートしつつ周囲との交流を経て成長する没落貴族のお嬢様とか、急にそんなものお出しされたら、驚いてしゃっくりが止まりますわ。

最初から最後まで常に可愛い。見張り台のイベントとか最高ですよ。

 
サブキャラもことごとくキャラが立ってるんですが、個人的には一部キャラクターのお気楽なノリについていけない部分も多々ありました。

(イラッ☆)

難易度

  これは完全に自分が悪いんですが、ノーマルではじめたら大型モンスターがキツすぎたのでeasyにしたんですよね。ただ被ダメージが減って死亡のリスクは下がるものの攻撃を見切ったわけではないから、ゴリ押し&ゴリ押しで爽快感が無い。 敵にハンディを押しつけて勝ってるような(ようなも何も事実なんですが)空しさが残りました。
 ただ、大型モンスターは回避かガードをきっちり決められないと追尾性能が異様に高い突撃で転ばされ、起き上がる前に追撃を食らって体力の半分を持っていかれるような状況もままあるので、パリイかドッジを決められないとゲームにならないんですよ。
 それでも普通の戦闘なら薬がぶ飲みで突破できなくもないんでしょうが、波状攻撃で襲ってくる敵から陣地を守り続けるという『防衛戦』を突破できなかったであろうことは想像に難くないから、なかなか。
 

音楽

  流石に名曲揃い。明るめの曲や疾走感のある曲も多く、個人的に好きなのは爽やかなSunshine Coastline、曲名が「First step towards wars」を想起させるNext Step toward the Unknown、ドラムが好きなのでGens d'Armes、透明感のあるEroded Valleyもいいですね。当然、開始1秒のかっこよさに全振りのICLUCIAN DANCEや、変わったところではCorridor of the Lost Agesなんかは最近のゲームBGMっぽくなさが印象的。
 カッコいいBGMを聴きながら走り回って適当にバシバシ剣を振ってるだけである程度以上の楽しさが保証されるからイースは偉い。

設定・ストーリー

  アドルたちが乗船中、巨大生物に襲われて難破した先は無人島。そこは見たこともない古代種(恐竜)が闊歩しており、漂流者たちは身を寄せ合いながら脱出の糸口を探る。
 ところが、少しずつ探索範囲を広げ、漂流者もかなりの人数が揃い、集団として機能しはじめた折、仲間が不審なケガを負う事態が起こる。
 姿亡き犯人は大陸で恐れられる切り裂き魔を名乗ったメモを現場に残し、次の犯行を予告。村の中の誰かが犯人なのか?捜査線に浮上してきたのは意外な人物だった。

凶器やアリバイを捜査。ここまで力を合わせてきた他人同士に募る疑念。


 ……というのが物語前半。仲間集めと無人島の開拓、獣からの襲撃に備えたり、生活手段や脱出の手がかりを探して奔走するお話。
 だんだん集まってくる漂流者と、サブクエストを通じて彼らの好感度が高くなるにつれゲームに慣れてきて、彼ら全員を助けて島から脱出するんだなという前提が飲み込めた頃、殺人事件を皮切りに3人が離脱して一気に冷水を掛けられる落差が見事。
 嫌われ者のカーラン卿でさえ好感度が設定されてるから安泰だと思ってたんですが、脱出用の小舟で一人逃げ出すのはかなりアウトな行動じゃない?とのんびり構えてたら海の藻屑に。「えっ、そんなのアリ?」と動揺してる間に頼れる船長と優しいお医者さんも一気に喪って落胆する展開には引き込まれました(まあカーラン卿は最終盤で再加入するんですが)。

 それが後半になると、
 島の北部には大量の古代種が生息しており、強大な樹と寄り添うように打ち棄てられた古代の遺跡があった。アドルたちは遺跡の中で目覚めた古代エタニア王国の巫女ダーナと出会い、失われた彼女の記憶を遡りながら王国崩壊の謎に迫る。

中南米っぽい意匠が多い古代エタニア王国(過去編)。


 やがて見届け人を名乗る4人組が現れ、大樹が世界に進化を促し、均衡を保つためにしばしば淘汰を繰り返してきたこと、今度は人類種が淘汰される運命(ラクリモサ)にあることを告げる。果たしてアドルたちはラクリモサを止めることができるのか、古代エタニア王国を滅ぼしたラクリモサをただ一人生き延びながら自身を現代まで封印していたダーナの真意とは。
 
 というお話が主軸になる。いや、これどう考えても別々に作ってた2つのシナリオを1本にまとめましたよね?王国滅亡の謎に迫っていく後半の流れの中で唐突に、幽霊船に乗り込んで海賊の霊を鎮めて脱出のための航路図を得るってシナリオが挿入されたり、お互いの噛み合ってなさがスゴい。

最終章でいきなり出てくる4人組。いまさら四天王ポジションか……。

 
 一応、前半から伏線は張ってるんですがね。アドルがダーナのことを夢に見たり、夢の中で過去のダーナを動かす機会があったり。ただ、これらはシナリオがある程度進むたび定期的に挿入されるもんだから、「アドルの冒険を早く先に進めたいのによく知らない昔の人の話が邪魔をしてくる」というネガティブな気持ちになることの方が圧倒的に多かったのが残念。

ダーナはいい子なんですよ……いやしかしスゴいカッコだな。

システム

  気になったのは武器の強化システム。バランス云々ではなく、大陸でも名の知れた名工の孫が難破した船にたまたま乗ってて、章ボスを倒すたびに炉の火力を上げるアイテムが手に入って、初期装備は錆びた剣なのに最終的には天剣ハイペリオンなどという強そうな剣まで鍛えてくれるのはやり過ぎ。 
 シナリオ上のラスボスが進化を司るシステムなんていうとんでもない相手だから仕方ないかもしれないが、個人的には隔絶された島内の小規模な冒険を期待していたので。

なんでそんなアイテムを怪物が持ってるんだとか高熱に耐えられる炉なんてどう構えたんだとか。

 
 また、定期的に挿入される防衛戦・制圧戦も探索がマンネリにならないように味変を狙ったのかなと思うけれど、個人的には探索を進めていたらいいところで拠点に呼び戻される邪魔な展開にしか思えなかったのが残念。
 防衛戦で発生する仲間のサポートは狙って戦略に組み込めるものではないし、敵が次々に迫ってくるのも、実質的な時間制限があるうえ戦い方でランク付けされ報酬に直結するのも、それらが原因でゲームスピードがここだけ極端に早くてスキル連打のレバガチャになりがちだったのも個人的な評価を下げてます。

 他には属性持ちの敵に対しては斬・打・突のうち該当する武器を持ってるキャラクターだと有利に立ち回れる……というか有利属性で攻撃を続けてブレイク状態に持ち込むまではそれ以外の属性の武器だと碌にダメージが通らないので、3人PTの構成が固定されがちなのはいただけない。
 特に割を食うのは主人公のアドルと属性が被ってるダーナでしょうか。自分の場合は突属性のラクシャも確定でスタメン、となると打属性の担当はスキルが強くて使いやすいサハド……ということで、結局初期3人からまったく変えずにクリアしてしまいました。他の動画を見るとヒュンメルもリコッタも強いみたいですね。
 

総評

  細かい点が気になったり、LIGHT-CHAOS寄りなアドルの性格が好きではなかったりと自分に刺さらない部分も多いんですが、それでもゲームの評価としては、最低でも良作としないわけにはいきませんね。
 当初は本筋(自分にとっては「人類の存亡」ではなく「島の脱出」)と関係ないから微妙に感じたダーナ側もアクションパズルめいたダンジョン攻略は楽しかったし、巫女の修行中から何年も支え合ってきたオルガと、互いを尊重して別れの言葉もなく決別するシーンはとてもいい。

 今後シリーズをプレイするとしたら、3と4(トンキンハウスのSFC版)が手元にあるんですが、一番やってみたいのは7、あとはプレイする手段が極端に少ない5なんかも興味ありますね。特に7はSteamだと遊べるらしいので、なんとかswitchに移植されないかなあ。

聖堂のパズルは楽しい。フェックスのギミックは嫌い。

 全然関係無いんですが、アフロカ大陸とかグリークとかロムン帝国とか、ネーミング捻る気が全然無いなと苦笑しながらプレイして、クリア後に公式HP見たら世界地図が現実のそれと一緒で思わず声が出そうになりました。
 ああ、ロムン帝国と戦争してるアルタゴって本当にカルタゴがモチーフなんだ……。
 そのうち中央アジアの荒野をモチーフにしたイースが出るかもしれないし、そうしたら買いたいですね。何といってもアドルくんの冒険記って100冊以上あるって公式設定だから、お願いしますよ日本ファルコム。

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