流行り神の感想(dis多め)
怖い話が苦手なんです。嫌いじゃないんですよ、大学の頃は2chのオカ板に張り付いてた時期もあるし、洒落怖まとめもずっと読んでたし。でも苦手。特にジャンプスケアー(突然びっくりさせてくるやつ)が苦手。
好きなのは短くて背筋が寒くなるような『プラスドライバー』とか、匂わせはあっても種明かしはされない『禁后』とかですね。
さて、流行り神は都市伝説を題材に、科学的アプローチあるいはオカルト視点からの真相究明を図る、1つのエピソードで2倍おいしいノベルゲーム。コンセプトは分かりやすいし、題材が好きな人にはしっかり刺さるいいセールスポイントですね、自分も無印は発売直後に新宿ヨドまで買いに走りましたし。その後もSONY系を中心に移植展開され、このところは真・流行り神としてリブートも果たしたシリーズの旧作が3作セットでswitchに登場と聞いたので、久しぶりにやってみようかと予約した次第。で、プレイしてみたんですが……。
システムの捻り方がいい
セルフクエスチョン:自問自答によって今までの情報を振り返りつつ、事象に対する判断や捜査方針を決定するもの。誰を犯人と推定するか、事故か他殺か、オカルトか科学かなど、その後の展開を大きく左右するだろう。
カリッジポイント:選択肢には勇気(カリッジ)を消費しないと選べないものもある。シナリオごとに固定のカリッジポイントを使い切ってしまうと、もうそのシナリオ中は勇気を要する選択肢は選べない。
推理ロジック:捜査の最後は人物相関図を埋めていき、その出来で評価が決定。その際、人物同士の関係や動機に関する空欄は本編中に取得するキーワードを使って埋めていく。選んだ選択肢、通ったルートによって取得するキーワードは変化するため、真相が分かっていても適切なキーワードが無いことも?
この他に200を数えるTipsもあり、都市伝説や主人公が所属する警察組織犯罪捜査への理解を助けてくれる。どれも単なる選択の連続によるツリー式ノベルゲーム化を避けるための施策で、うまく使えばゲームに深みを与えられるだろうとワクワクしたんですよね。……してたんですよね。
システムを活かせてない
前提として、そもそもこのゲーム、選択肢が多い割に展開の分岐が圧倒的に少ない。
セルフクエスチョンについても、自分は1回シナリオをクリアしたらおかしな選択肢を選んで別ルートやBADENDを回収するプレイスタイルなんですが、1週目と違う選択肢を選び続けても主人公が「いや、そうじゃない」と修正してしまい、結局1本道に立ち返ってしまう。なんとか別の結論に辿り着いた直後に主人公が翻意して前見た展開に戻った時には呆れてしまった。このシステムで展開が変わるのってせいぜいオカルト科学の分岐くらいで、実質1シナリオに分岐は1箇所だけとも言える。
酷かったのは唐突かつ強引にまるで関係ない人を犯人では?と疑うセルフクエスチョンで、どう見たって犯人じゃないと思って反対の選択肢を選び続けてるのに主人公がそれを裏切るような思考を進めて犯人と断定するところ(しかも、行動が変化するでもなくシナリオが進んで有耶無耶になる)。
物語に影響を与えない選択って意味あるんですか?
カリッジポイントは一見面白そうに見えるけれど、シナリオごとに設定されている数値が高めで、毎回カリッジを消費する選択をし続ける特殊なプレイでもしなければシナリオ終盤で足りなくなるなんてことはないし、そもそも基本的にどの選択肢を選んでも大筋は変わらないというところが虚しい。展開が変わるのはせいぜいBADEND直行の選択肢を選んでしまった場合だが、これが何故かカリッジを消費する選択肢の先にばかり用意されているため、はじめからこのシステムをまるっきり無いものとしてプレイしてもEDまでいけてしまう。
唯一の見せ場はどれを選んでもカリッジを消費する選択が続く最終話オカルトルートだけれど、これ逆説的にカリッジポイントってシステムはそもそも必要ないことを意味してますよね。
プレイヤーの理解度を図りシナリオの締めとなる推理ロジックもシステムを活かしているとは言いづらい。すべてのキーワードから空欄に当てはまる言葉を探すのではなく、空欄に対し複数のキーワードが候補として挙げられる形式で紛らわしいキーワードも無いから穴埋めの難易度が低すぎるし、シナリオ中の選択肢によって取得できるキーワードに殆ど差が無いから「真相は分かっているのにそれを示すキーワードが無い」なんて事態にも陥らない。正直、本編を一切読まずに人物紹介だけで解けと言われてもクリアに必要な及第点は取れるのでは?程度の出来で緊張感がない。
設定の問題
主人公は若くして警部補待遇で警視庁捜査一課に配属されたキャリア。都市伝説をめぐる不可解な事件に巻き込まれ、電話でヒントを与え導いてくる謎の人物や知り合いの民間人と協力して難事件の解決に漕ぎ着けたのをきっかけに、非公式の事件を専門に扱う謎の部署への異動命令が出された。オカルトが苦手な大男をパートナーに彼は今日も謎の事件を追う……。
いやまあゲームだからね、フィクションだからね、別にいいんだよある程度は。高校で起こった不可解な連続自殺事件で、死体の異様な状況に対して専門家として監察医の意見を聞くのはありそうな話だし、呪いを騙る脅迫者を想定して、大昔から祀られている狐塚が絡んでいるかどうかを民俗学者と一緒に調査するのも分からなくはない。
でもさ、誘拐事件があった時に「鬼に連れていかれた」っていう子供の目撃証言を信じて、捜査本部に断りなく独自に捜査を進めて自称オカルト専門ジャーナリストの大学生に捜査情報をペラペラ喋るのはファンタジーだよ。
これがね、逆転裁判だったら気にしないんです。アレはそういうぶっ飛んだ世界観のお話だから。
でも、都市伝説って日常に潜む怪異、あるかもしれないリアリティが肝じゃないですか。自分の知っている日常、共感できる人々を理不尽にあるいは無作為に侵食してくる非日常の恐怖。それこそが『オーメン』でも『チャイルド・プレイ』でもなく都市伝説じゃないですか。
それでも話が面白いなら百歩譲って、リアル系じゃなく退魔師が出てくるようなスーパー系の都市伝説なんだなと飲み込もうかと思ったけれど、最終話に関してはそんな擁護も出来ない。単純に短いうえ、今まで電話だけで主人公を導いてきた謎の男がヌルっと登場し特段絡みもせず退場するうえ、『悪魔の実験』だの『ある組織』だの思わせぶりな単語だけ並べて説明もこじつけさえも放棄したような都合主義で展開していく打ち切り漫画並みのスピード感。そういえば20年前もこの最終話で続編が出ても買わない決心を固めたことを思い出しましたね。
どうも続編(しかも3作目)で色々な設定が補完されるという話を見かけたのだけど、それが事実であっても、1本の作品として判断すれば伏線をほとんど回収してない1作目の評価が辛くなるのは仕方ない。大逆転裁判なんかも2作目まで遊んだ人と消化不良の1作目で離れた人とでは評価が異なるし、2作目まで遊んだ人もそれで1作目の評価を改めたりはしてないものね。
また、EDを迎えた後で解放されるEXシナリオはさらに意味不明・曖昧模糊の度合いが強まってる(これも疑問点は続編で回収されるらしいが……)のが辛い。シナリオ自体は主人公より魅力的なサブキャラクターの過去に迫ったり、本編で謎めいた存在のキャラクターの過去を匂わせたりと興味深い内容なのが惜しい。
そう。そもそも主人公に魅力を見出すのがなかなか大変で。悪い奴ではないんですよ。真っ当な正義感を持っていて、頭も回るし度胸だってある。
ただ、キャリアでありながら組織をないがしろにしたり、初めて会った人間に上司への不信感を煽られただけで裏取りもせず内面で上司を罵倒するようなキャラクターで好きにはなれなかったな。縄張り意識が強い課長や従来型の捜査会議を好む刑事をかなり露悪的に書いているものの、個人的にはどうしてもそっちに肩入れしたくなっちゃって……
他の問題点
・背景が暗くてよく分からないビジュアル多数
・話の都合とはいえ、ボルターガイストみたいな一般人でもそれは知ってるだろって用語を知らないってのは無理がある。
・メモリに負担かけるようなことはしてないのに2回もフリーズ。まさか操作設定でショートカットをどれに割り当てるかいろいろ試したり、どの選択肢を選ぶか迷っただけでメモリを食ってるのか……?
・「次の選択肢までスキップ」時のロードが長い→次の選択肢まで飛んでからバックログを見ると飛ばしたところも全部読めちゃう点から、ひょっとすると黒バックで「Now Loading」と表示してる裏で律儀に全てのテキストを読み込んでるのかもしれない。
・バックログ読もうと思ったら本編終了までスキップされた。操作ミスを誘発しかねないこのショートカット表示は誰も止めなかったのか。
率直にガッカリしたので、次は明るい雰囲気のRPGか、ゆったりどうぶつの森でもやりたい気分。ぶつ森ひとつもプレイしたことないけど。