
高齢者の血圧が急変したときの対処法
冬場は寒さの影響で血管が収縮しやすく、高齢者の血圧が急激に変化することがあります。血圧の急変は心臓や脳への負担を増大させ、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な症状を引き起こすリスクもあるため、介護現場では迅速で適切な対応が求められます。
今回は、高齢者の血圧が急変した際の基本的な対処法や日常で気を付けたい予防策について解説します。利用者の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。
高齢者の血圧が急変する原因
1. 冷えによる血管の収縮
寒さで血管が収縮し、血流が悪化することで血圧が上昇しやすくなります。特に冬場の朝や夜は冷え込みが強く、血圧変動が起きやすい時間帯です。
2. 突然の体勢の変化
椅子やベッドから急に立ち上がると、一時的に血圧が低下する「起立性低血圧」が起きる場合があります。これは高齢者に多く見られる現象です。
3. ストレスや緊張
精神的な負担や緊張によっても血圧が急上昇することがあります。介護施設では環境の変化や緊張が影響することも少なくありません。
4. 水分不足や脱水
高齢者は水分摂取量が不足しがちで、脱水が進むと血圧が低下する場合があります。冬場は喉の渇きを感じにくいこともあり、注意が必要です。
血圧が急変したときの対処法
1. 血圧が急上昇した場合
血圧が急激に上がった際は、心臓や脳への負担を軽減するために次の対処を行います。
安静にさせる
利用者を無理に動かさず、座らせるか横になって安静にします。深呼吸を促す
呼吸を整えることで血圧が安定しやすくなります。深くゆっくりした呼吸を促しましょう。衣服を緩める
衣服がきつい場合はボタンを外したり、体をリラックスできる状態にします。医師に相談する
血圧が非常に高い場合や頭痛、胸痛などの症状が見られる場合は、すぐに医師に連絡してください。
2. 血圧が急低下した場合
血圧が急激に低下すると、めまいや立ちくらみ、意識障害が起きることがあります。以下の対応を行いましょう。
横にならせる
頭を低くし、足を高くすることで血流を心臓や脳に戻します。水分補給を行う
意識がある場合は少量の水を飲ませ、脱水を改善します。暖かくする
体温が低下している場合は毛布やカイロを使い、体を温めます。経過を観察する
状態が改善しない場合や意識がはっきりしない場合は、速やかに医療機関へ連絡してください。
3. 救急対応が必要な場合
血圧急変に伴い、次のような症状が見られた場合は、緊急性が高い可能性があります。すぐに救急車を呼び、医療機関へ連絡を入れましょう。
激しい胸痛や頭痛
意識がもうろうとしている、または失神
体の片側に力が入らない、しびれがある
呼吸困難
血圧急変を防ぐための予防策
1. 冬場の室温管理を徹底する
適切な室温を保つ
寒さによる血圧変動を防ぐため、室温は18~22℃程度を目安に設定します。外出時の防寒対策
外出する際は帽子や手袋、マフラーなどで体を温める工夫をしましょう。
2. ゆっくりとした動作を心掛ける
立ち上がる際にゆっくり動く
急な立ち上がりは起立性低血圧を引き起こすため、少しずつ体勢を変えるよう促しましょう。準備運動を取り入れる
朝起きた際や長時間座っていた後は、軽い準備運動で体を慣らすと血圧変動を防げます。
3. 規則正しい生活を送る
バランスの取れた食事
塩分を控えめにし、野菜や果物を積極的に取り入れることで血圧管理をサポートします。適度な運動
軽いウォーキングやストレッチは血流を改善し、血圧を安定させます。
4. 定期的な血圧測定を行う
毎日の血圧記録
血圧の変動を把握し、急変の兆候を早期に発見できるようにします。医師との連携
血圧が安定しない場合や異常が見られる場合は、早めに医師に相談しましょう。
60歳から介護職を選ばれた方々へ
60歳から介護職を始められた皆さんにとって、高齢者の血圧ケアは少し専門的に感じるかもしれません。しかし、基本的な知識と日常的な観察を通じて、利用者の健康を守ることができます。
例えば、血圧測定の習慣を取り入れたり、利用者が寒さを感じたら「少し暖かくしましょうね」と声を掛けるだけでも、血圧変動を防ぐ効果があります。焦らず、自分のペースで利用者との信頼関係を築きながら、安心してケアを提供してください。
まとめ
高齢者の血圧急変に対処するために、以下のポイントを押さえましょう。
血圧が急上昇または急低下した際には、安静にし適切な対応を行う。
室温管理や防寒対策、規則正しい生活で血圧の安定をサポートする。
定期的な血圧測定や観察で、異常を早期に発見する。
血圧管理は高齢者の健康を守る重要なケアの一つです。日常の小さな気配りと知識の積み重ねで、利用者が安心して過ごせる環境を一緒に作り上げていきましょう!
