神倉万利子
これまでのあらすじ 明治時代に建てられた山手の古い洋館に住む伯母を訪ねた姪のマリカは、居間に飾られた金髪の異国の少女の絵に強く惹きつけられる。その後友人達と行った資料館で見た写真から、その少女が百年前に実在していた事を知って驚く。早速写真を提供した写真館を訪ねてみると、当時の店主が少女とは家族ぐるみで親しかった事を知ってさらに驚く。その後店主親子の協力のもと少女の新たな写真も見つかり、少女の実像が次第に明らかになって行く。興奮するマリカと仲間たち・・・やがて少女の父親が書い
1.過去の写真 一ノ瀬写真館には、既に咲と広介が到着していた。 店主は穏やかな笑みを浮かべ、マリカと薫を迎えてくれた。 薫は店主とは初対面だった為自己紹介をし、その後、彩が皆の前に進み出て 挨拶をした。 「初めまして。本日はようこそいらっしゃいました。 私は一ノ瀬彩と申します。先日父から話を聞いて、皆様とお会いするのを 楽しみにしておりました。今日は私も参加して父の手伝いをして参りますの で、どうぞよろしくお願い申し上げます」 (・・・へえー、あの店
1.手紙 「手紙、一体どこにあるんだろう?まさかもう捨てられてしまったとか ・・・」 高祖父に宛てて書かれたラチェット氏の手紙がどこを探しても見つから ず、彩は悲観的な気持ちになりかけていた。そんな時、しばらく家を留守に していた母親から連絡が入った。 「もしもし、彩?おはよう」 「あれえお母さん?久しぶり。どうしたの?こんな朝早くに」 「それがね、こっちの方もようやく一段落したから、今夜にでもそっちに 戻ろうかと思って・・・」 「ホント
15才のマリカは、伯母の住む山手の古い西洋館に掛けられた一枚の異国の少女の絵に強く惹かれる。その後、マリカはその少女が約百年前に実在していた事を知って驚き、親友咲とその兄の広介とともに調査を始める。そんな折、広介はその屋敷には良くない噂があり、山手に古くから住む住人たちの間では”いわく付きの家”と密かに囁かれている事を知り不安になるのだが・・・?塔のある西洋館の謎がいよいよ明らかになって行く。 1.咲の提案 広介が一ノ瀬写真館の店主から連絡を受けたその夜、思い
これまでのあらすじ マリカは山手の古い西洋館に移り住んだ伯母の家で、金髪の異国の少女を描いた絵に何故か強く惹かれてしまう。その後友人達と出掛けた展覧会で偶然、その少女とそっくりな女の子が写った古い写真を見つけて驚嘆する。その写真を撮影した写真館を訪ねたマリカは、その少女が昔実在していた事を知り、少女についての新たな情報を得ようとする。いっぽう友人咲の兄、広介は山手に住む先輩からその家にまつわる、ある噂を耳にする。しかしそれは不吉なものだった・・・ 1.不吉な噂 11月
これまでのあらすじ 15歳のマリカはある秋の日、横浜山手の古い西洋館に住む伯母の家に招かれる。マリカはそこにあった金髪の異国の少女の絵に何故か強く引きつけられてしまう。そしてそこに描かれている古い塔にも・・その絵を描いた画家は以前そこに住んでいた人であり、しかも既に死亡していると聞いたマリカは、友人らと共にその謎を追う事にする。そしてある展覧会で見た一枚の写真から、少女が昔実際に生きていたことを知るのだが・・・横浜山手を舞台に、歴史をたっぷりと盛り込んだ物語。 1.一
第一章までのお話 ある日、マリカのもとに横浜に住む伯母の薫から庭の秋バラを見に来ないかとの手紙が届く。大好きな伯母からの誘いに喜び勇んで出掛けて行くマリカ。優雅なお茶会の後、その家に不思議なものがあることに気付く。それは古ぼけた塔と異国の少女が描かれた何枚もの絵。その少女の瞳は妖しく輝き、何故かマリカは強く引きつけられてしまう。その事をマリカは親友の咲に打ち明けてみることにするのだが・・・横浜山手を舞台にした、ミステリー風物語の第2章。 1.親友 週明けの月曜日。
港町、横浜。 そこが私の大好きな街です。 今では国際都市として誰にも知られるこの街も、 江戸時代まではわずか50世帯ほどの寒村に過ぎませんでした。 その小さな村が突然歴史の表舞台に躍り出たのは 1854年のこと。ペリー来航によって開国を迫られた江戸幕府は、 諸外国に向けて遂にその門戸を開く事にしました。 その取り決めをする場所として選ばれた場所、それが 横浜村だったのです。 「日米和親条約」が締結された、その記念すべき日の様子が 描かれた一枚の絵が
1.秋の便り 『秋バラを見に来ませんか?』 横浜に住む伯母の薫から手紙が届いたのは十月の、ある 小雨降る午後のことだった。マリカは二階の自室の張り出し窓の 下でその手紙を読んだ。薄い水色の便せんに青いインクで綴られた 文字は細く繊細で、華奢な容姿を持つ伯母の印象そのものだった。 『 親愛なるマリカちゃん お久しぶりです。ここ山手の丘の家に引っ越して来てから 早2年。お陰様でようやく落ち着きました。 ずっと手入れを続けてきた庭の花々たちも無事