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【 DC申請 】
博士課程での学振申請:戦略的にDC-1に立ち向かった話
「どうせ修士行くなら博士まで進学しよう」
4月、研究室に配属されてまだ間もない頃。指導教員から渡されたのは分厚い申請要項。「これ、出してみたら?」という言葉とともに。
その時の私の頭の中:
「研究テーマはまだぼんやりとしかない」
「博士後期の3年間の計画なんて立てられるのか」
「そもそも、なにをどう書けばいいんだろう」
「というか修士論文もまだ1文字も書いてない」
ネットで検索してみても:
「独創的な研究計画を立てましょう」
「実現可能性を示すことが重要です」
「研究の意義をアピールしましょう」
どれも正しいけれど、具体的にどうすればいいのかわからない情報ばかり。
そんな状態から始まった私の学振挑戦。結果として:
DC-1:書類審査は通過したものの、面接で不採用
↓
DC-2:書類審査のみで採用
という道のりを経験することになります。
実は、DC-1の不採用は今となっては貴重な経験でした。なぜなら、
書類審査と面接での評価の違い
研究計画の見せ方の勘所
審査員の視点
これらを、身をもって学ぶことができたからです。
いまはもう面接採用はなくなり、書類だけのようですが。
この記事シリーズでは、特にDC-1、DC-2の申請に焦点を当てて:
研究計画調書の作り方
申請書の書き方の具体例
つまずきやすいポイント
採用に至るまでの試行錯誤
を、できるだけ具体的にお伝えしていきます。
あなたの研究室に学振採用の先輩がいなくても大丈夫。
この記事が、DC申請に挑戦する誰かの道しるべになれば嬉しいです。
研究者を目指す人にとって、避けては通れない関門の一つ。それが「学振」こと「日本学術振興会特別研究員」制度です。
そもそも、学振特別研究員とは?
端的に言えば「若手研究者のための給付型研究支援制度」です。 採用されると:
研究奨励金(給与)の支給
研究費の支給
科研費応募資格の付与
という3つの大きな支援を受けることができます。
主な区分と対象者
DC1(博士前期課程/修士課程2年向け)
対象: 博士課程進学予定者・博士前期課程/修士課程 2年次
支援期間: 3年間
申請時期: 例年4-6月頃 ※所属大学によって異なります。確認ください。
研究奨励金: 月額200,000円
研究費: 年間1,500,000円まで
DC2(博士後期課程以上向け)
対象: 博士後期課程 1年次以上
支援期間: 2年間
申請時期: 例年4-6月頃 ※所属大学によって異なります。確認ください。
研究奨励金: 月額200,000円
研究費: 年間1,500,000円まで
なぜ学振特別研究員を目指すのか?
1. 経済的な安定
安定した収入が得られる
DC採用で月20万円という金額は、博士課程学生にとって非常に大きな意味を持ちます。多くの博士課程学生が直面する経済的な不安を大きく軽減してくれます。特に、地方から都市部の大学院に進学する場合、家賃や生活費の心配が減るのは大きなメリットです。また、大学によっては学振採択者は学費の免除もあります。研究に専念できる環境が整う
収入が安定することで、研究以外のことに時間を取られる心配が減ります。例えば、実験が長引いても経済的な心配をせずに取り組めます。また、学会参加や研究出張の際も、経済的な理由で参加を諦めるということが少なくなります。アルバイトに時間を取られない
多くの博士学生は、生活費を稼ぐためにTAやRAなどのアルバイトを掛け持ちしています。学振に採用されることで、そういった副業的な仕事に時間を割く必要が減り、より研究に集中できる時間が確保できます。ただしこういったアルバイトも禁止されているわけではないので、継続できます。
2. 研究者としてのキャリア形成
研究費を自分で執行できる
年間最大150万円の研究費は、自分の裁量で使用することができます。MAXでいただけることは殆どありませんが、これは単なる金額以上の意味があります。研究費の執行を通じて、教授と同じように予算管理や研究計画の立て方を学べる貴重な機会となります。また、必要な機器や試薬を自分の判断で購入できる自由度は、研究の進め方にも大きく影響します。研究者としての実績になる
学振特別研究員という肩書きは、研究者コミュニティーではある種のステータスとして認識されています。実際に、学振を採択してから周りの扱いが変わったと感じることが度々ありました。
3. 就職・進路への影響
アカデミックポストへの応募で強み
多くの大学や研究機関では、教員や研究員の採用時に学振経験を高く評価するようです。特に、若手研究者の採用において、学振経験者は研究能力と研究費獲得能力の両面で期待されるようです。私はまだここまでの進路につけていませんが、残っている先生たちをみると「元・学振特別研究員」であることも少なくありません。
申請から採用までの流れ(2024年まで)
応募準備(4-5月頃)
研究計画調書の作成
指導教員との相談(加筆修正)
業績の整理
書類提出(6月頃)
申請書類一式の提出
電子申請システムの利用
書類審査(7-9月頃)
専門委員による審査
書面審査結果の通知
採用内定(9月末頃)
採用内定の通知
受入研究機関の選定
採用手続き(3-4月)
各種書類の提出
研究開始
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閑話休題:博士前期課程の皆さんへ
〜業績作りという未来への投資〜
なぜ今から業績作りが重要なのか
博士課程の皆さんにとって、最も大切なのは「今やっている研究をパブリッシングすること」です。
論文を書く、学会で発表する、研究会で討論する―これらの活動は、単なる実績作りではありません。
業績が示すもの
業績の真の価値は、「過去の実績」を示すことではありません。
それは「未来の可能性」を示すものなのです。
審査員が業績を見る時、以下のようなことを読み取っています:
研究を完遂する力があるか
成果を形にできるか
研究者として着実に成長しているか
つまり、業績は「この研究者は必ず成果を出すだろう」という確信を与えるものなのです。
今からできること
現在進行中の研究を論文化する具体的な計画を立てる
学会発表の機会を積極的に探す
研究室内の議論に活発に参加する
指導教員と論文化について相談する
研究成果の公表は、時として勇気のいる挑戦かもしれません。
しかし、その一歩一歩が、確実にあなたの研究者としての基盤を築いていきます。
今取り組んでいる研究を大切にし、必ず形にしてください。
それが、あなたの未来の可能性を広げることになるのです。
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このページで紹介している内容はたしかに私の個人談を多く含むものです。しかし同時に、敵を知るという意味では、『できる研究者の科研費・学振申請書 採択される技術とコツ (KS科学一般書)』を読むのがベストであると私は思います。持っていない方は、こちらの購読の前にアマゾンで是非購入してください。
それでは、下記からは実際に、具体的な内容に入っていきます!
「2.【研究計画】適宜概念図を用いるなどして、わかりやすく記入してください。なお、本項目は1頁に収めてください。様式の変更・追加は不可。 (1) 研究の位置づけ 特別研究員として取り組む研究の位置づけについて、当該分野の状況や課題等の背景、並びに本研究計画の着想に至った経緯も含めて記入してください。 」
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