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#3 赤白黒の3色で勝負!昔の乙女のメイク術

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黒のお化粧

  • 黒髪

  • 眉墨

  • お歯黒

『都風俗化粧伝』

↑江戸後期から明治時代のメイク本。
体系ごとの着こなし術だったり、髪や体のケア方法が載っている。
100年くらい刊行された大ベストセラー。

髪の「黒」(ヘアメイク)

「髪は女の命」と言われたように、つややかな黒髪は日本女性の魅力の一つ。

平安時代では長ければ長いほど美人とされていたので、生まれてからほとんど髪は切らずに伸ばし続けて、自分の身長よりも長い2メートルくらいの髪の人が多かったようです。
髪を洗うときは河原に行って一日がかりで洗っていたそうです。
2メートルもあったら一日かかりますよね。

江戸時代には髪を結いあげて、びんつけ油という固く練った油をつけて、髪の毛をぜんぶ固めていました。
その名のとおり油なので、汚れやすくて大変だったみたいです。

江戸時代の女性が、首の後ろの衿を大きくあける(抜く)のは、髪につけた油がついて汚れないためにという理由です。
なので、日本髪にしていない現代の着物女性は、そこまで衿を抜く必要はありません。

眉の「黒」(アイブロウ)

「今様三十二相 気まへのよさ相」 三代歌川豊国


眉墨(アイブロウ)の原料は、黒土・油煙・真菰まこもなど。
(真菰:イネ科。池や沼に群生する2mにもなる水草)

眉以外には、髪の薄くなったところを隠すためにも黒く塗ったそうです。
平安時代は眉を全部剃って毛抜きで抜いて、白粉ぬってから眉をかいてました。いわゆる、まろ眉です。

江戸時代では、結婚してお歯黒、妊娠したら眉を全部剃ってました
なので、眉メイクは娘時代から出産前まで

上流階級の眉メイクは、階級や年齢を区別するために細かく描き方が分かれてましたが、庶民には決まった眉の形がなかったので、自分の顔に似合う眉メイクを楽しんでいました。

歯の「黒」(お歯黒)

当時の西洋人にも、現代の私たちにも、まったく良さがわからない不思議メイクです。

なんで、わざわざ歯を黒くするの?
歯が白い方が健康的だしキレイなのに。

お歯黒は色が濃ければ濃いほど良いとされていました。
黒が何色にも染まらないことから「貞節」を意味し、既婚女性の象徴とされたのだとか。
(別のことで貞節を表現できなかったんでしょうか……歯じゃなくて爪とか……)

お歯黒の歴史

実は、このお歯黒、いつごろ生まれた風習なのか正確には分からないそうです。

平安時代にはもうあったそうで、この頃は貴族の男女がお歯黒にしていました。
江戸時代になると男性でお歯黒にするのは公家だけで、お歯黒は女性専用になります。

江戸時代の女性は、一目見ただけで、その人の身分、既婚か未婚か、子どもがいるのかいないのかが分かりました。

・身分:着ている着物の豪華さ
・既婚か未婚:髪型(未婚は島田まげ、既婚は丸髷まるまげ)とお歯黒
・子どもの有無:眉(子どもあり:眉を剃る)

結婚しているのか、子どもがいるのかいないのか、プライベートなことが周りの人に一目で分かってしまうのは、同じ女性としては「ちょっと嫌だなあ……」と思っちゃいますね。
結婚相手が欲しい男性にとっては、すごく便利でしょうけども。

お歯黒の塗り方

お歯黒水という水を温めてから筆につけて歯に塗ります。
塗った上から、ふしの粉と呼ばれる樹のコブを粉砕したものを塗って、またお歯黒水を塗る。
これを交互に繰り返していくと、だんだんと歯が黒くなっていく。

本でお歯黒の女性を見ましたが、黒い漆のお椀のような、おせち料理の黒豆のような、つやっつやな黒でした。

お歯黒水のつくり方

このつくり方が、とても衝撃的です!

お歯黒水は基本的には、お家で手作りします。

  1. 壺を用意する

  2. 壺の中に、お米のとぎ汁・うどんのゆで汁・お茶の汁・お酢などを入れる

  3. さびた釘や折れた針などの鉄クズを入れる

  4. 密封して冷暗所(床下など)で保存

自分の歯に塗りたくるのに、鉄クズを入れるなんて!
衛生面は大丈夫なんでしょうか?

この時点でも衝撃的なのに、人によっては、あめやタバコの吸い殻も入れていたのだとか!

こ、こわい……。

お歯黒水はとても臭かったそうです。
そりゃあ、そうですよね。こんなのを入れていたらそうでしょう。

臭いにおいのする水を毎朝、歯に塗って、ふしの粉を塗ってを繰り返して、歯を真っ黒にする。
……デメリットとしか思えないのですけど。

メリットとしては、漆のように黒黒とした歯と白い肌のコントラストがキレイに見えたとか、虫歯予防になったそうです。
女性は妊娠すると虫歯になりやすかったそうなので、お歯黒は理にかなっていたとか。

うーん……それでもなんだかなぁ。

外国人には、めちゃくちゃ不評

紅を点している女性 P. サビオ (イタリア/1870年)


お歯黒メイクは、外国人には人気がありませんでした。
当時の記録は、こんな感じです。

既婚女性がいまわしいお歯黒をしていることをのぞけば、日本女性の容姿は悪くない。
若い娘は美しくて、立ち居振る舞いも活発だ。

『ペリー提督日本遠征記 』M.C. ペリー (アメリカ人/1856年)

黒船で来航したペリー提督は「お歯黒さえなければ……」と語り、

日本の妻は夫につかえるために、自分の美しさを犠牲にする。
眉は剃り落とし、歯は黒く染めるのだ。
この容貌の変化は日本人からするとなんでもないらしいが、我々の目には奇怪なものにうつる。
未婚の娘たちは美しいだけになおさらである。

『イタリア使節の幕末見聞記』V.F. アルミニョン (イタリア人/1869年)

イタリア人は「未婚の日本女性は自然のままで美しいのに!」となげいて、

唇を開いて気持ち悪い口の中を見せられるたびに、 思わず後退りしてしまう。

『江戸幕末滞在記』E. スエンソン (デンマーク/1869年)

デンマーク人はお歯黒を見て恐怖で後ずさりし、

不可解なことは、結婚した日本女性が自分の眉を剃り落とし、漆の塊のようなもので自分の歯を黒く染めることである。
この風習ほど醜悪なものはない。
結婚式の翌日に、これがあの娘なのかと見分けるのに骨が折れるほどである。

『モンブランの日本見聞記 フランス人の幕末明治観』C.L. デュパン (フランス/1868年)

フランス人は醜悪すぎて別人のように思えると、おおむね散々な評価です。

日本の伝統文化を愛し、大和なでしこになりたいと学び続けている私ですが、さすがにお歯黒は受け入れがたいです。

現代にこのメイク術が残ってなくて良かった!!
歯は白いのがいいですよね!


続きます。


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