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#2 赤白黒の3色で勝負!昔の乙女のメイク術

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「白」のメイク

  • 白粉

いつの時代も共通する美人の条件は「美白」です。
(一時期、一部の女子高生の間でガングロメイクが流行りましたが、それをのぞけば、この国の美女の条件は色白です)

今は肌の色に近いクリーム色のファンデーションが手に入るので、自然な色にメイク出来ますが、昔の肌のメイクといえば、白粉おしろいです。

白粉ってどこに塗るの?

『婦久徳金の成木 うつくし木』 歌川広重


白粉は粉末状になっていて、水で溶いてから使います。
顔だけでなく、首や衿足、肩、 胸元まで刷毛を使って塗ることもありました。

江戸時代の女性のみだしなみ本には、

おしろいは顔だけに塗るものではありません。
のどから胸あたりまで、境目がないように塗りなさい。
白く残っているのは男性たちが最も嫌うものですので笑われますよ。

『女鏡秘伝書』(1650)

さすがに、胸のあたりまでファンデーションは塗りませんが、境目をなくすように塗るのは、今も同じですね!
「男子にもてないよ!」と付け加えているところがかわいいです。

↓こちらの本には、江戸時代のナチュラルメイク方法が書いてあります。

細かい白粉を薄く塗りなさい。
耳のあたりや鼻のわきに白く残ってるのはダメです。
白粉に限らず、紅も頬や唇、爪先に塗るのも薄く塗りなさい。濃い赤はダメですよ。

『女重宝記』(1692)

今もパウダーはきめ細かなものが重宝されますよね。
そして、鼻のワキ! ここはファンデーションがたまりやすいので丁寧にしないといけないところ!
白粉も同じのようです。

紅もうすーく塗ることが重要だったんですね。
昔の白粉メイクというと「歌舞伎のような濃いメイクだったのかな?」と想像しちゃいますけど、意外にも今と同じナチュラルメイクが良しとされてたんですね。
役者さんの舞台上でのメイクと、一般人の普段のメイクは全然違うので、当然といえば当然かも。

他の資料には、

白粉をむらなく美しく仕上げるには何回も根気強く塗っては落とすことを繰り返したので、まだらに白くなっているのも珍しいことではなかった。

と、書いてありました。

今のメイクでも、肌を整えるベースメイクが一番難しいし時間がかかると聞くので、昔も今もベースがメイクの決め手ですね。

ちなみに、一般的に、京都と大阪は濃いメイクで、東京(江戸)では薄いメイクだったそうです。
京都と大阪は貴族と商人がいるから華やかに、江戸は武士が多いから薄いのが良かったのかも?
(武士は質素倹約するのが良しとされていました)


白粉の材料は?

白粉の原料は時代によって違うようですが、江戸時代の白粉は、なまり白粉・貝殻の粉・米粉・天瓜粉てんかふん(植物性の白粉)など。
なかでも、鉛白粉はツキ・ノビ・ノリがよくて安かったので大人気でした。

「あれ? 鉛って体に悪かったよね?」

そうなんです。鉛って体に悪いんですよ。

明治時代に鉛白粉による中毒事件が起こってしまいました。
中毒になってしまったのは、歌舞伎役者の中村福助さん。女性たちがあこがれた若い女形です。

歌舞伎役者は顔どころか、腕から指先、脚から足先まで、ほぼ全身に白粉を塗ります。
9歳の初舞台からずっと全身に白粉を塗りたくっていた福助さんは、22歳ころから激しい胃痛と吐き気に悩まされました。
舞台を休んで5日ほどすると治まりましたが、舞台に立つと手足が震えだし、関節や筋肉が痛みました。

明治20年4月、明治天皇がご覧になる特別な歌舞伎で、福助さんは左足がガクガク震えだしました。
それを見ていた人たちは、最初は「緊張のせいかな?」と思ってましたが、いつまでも震えて止まらなかったので、緊張ではなく鉛中毒だったと気づいて騒ぎになりました。

それから、鉛入りの白粉の危険性が知れ渡り、その13年後、国産の無鉛白粉が完成しました。


なんで美白がいいの?

日本で「色白の肌の女性が良い」とされたのは、その女性の背景にみえる暮らしぶりを狙ってのことだと思います。

ここからは私の想像なんですけど、肌を白く保つシンプルな方法って、紫外線(陽の光)を浴びないことですよね。

日本は農耕民族なので、畑仕事をしないと生活していけない。
しかも、お米作りはとても大変な作業なので一人では無理。
家族だけでも無理。村全体でみんなが協力して米作りをしないと無理。

一日のほとんどは、男性も女性も外に出て日光の下で作業をするわけです。
今みたいな日焼け止めはないので、手ぬぐいを被ったところで紫外線は浴びてしまいます。

生活していくためには、家の中で閉じこもってはいられないので日焼けは必然。
農民である限り、日焼けしない白い肌を保っていられるはずがないんです。

では、農作業をしない貴族や富豪は?

外に出て重労働をする義務がないので日焼けしません。
お屋敷にひきもって、物語を読んだり、絵巻物を見たり、和歌を詠んだり、楽器を演奏したりして過ごします。(羨ましい暮らしですね)

ロイヤル階級はひきこもりの特権が与えられてました。
楽で贅沢な暮らしを放棄する人はいません。

白い肌は、外に出なくてもいい暮らしをしている高貴なお姫様の証でした。

江戸男子「あの娘、肌が白い! どこかのお屋敷のお姫様かも!?」

だから、白い肌の女性(お金持ちのお嬢様)が好まれたのかもしれません。

紫外線を浴びる機会が少なければ、肌のダメージも少ないから老化もゆるやかだったでしょうし。

ちなみに、白粉を肌に塗ると、紫外線を防いでくれるので、本当に肌が白くなる効果もあったそうです。


続きます。


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