自由を手に入れるために改名をした話

突然の自分語りですが、私の家は機能不全家庭でした。

父親は機嫌がよければ不倫を繰り返す口実に私を使い、機嫌が悪ければ恫喝・兄への暴力・しつけという名の兄妹への虐待を繰り返しますし、「ここは俺の家だ。嫌なら出て行け」「誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ」と私たち家族を日々脅していました。

兄が生意気だと暴力を受けるのを母親が止めようとして殴られるのを、1番小さい私だけは痛いことをされないからと、率先して父親と兄の間に体ごと割り込み、母と兄を守ることが幾度かあったのが記憶に残っています。

父親はアルコールと謎の赤いカプセル薬を飲んでいて、赤い薬を飲んだ日は明らかに異常だったので私たち兄妹は怯え、日々、二階の寝室から逃げる方法を考え、木に飛び移る練習やはしご訓練をしていました。

そんな生活から解放されたのは兄が中学に上がって柔道部に入ってから。力をつけた兄が中年になって少し弱った父を寝技で絞め殺そうとしました。それを機に、父親は父方の実家に帰り、別居することになりました。

めでたしめでたし。

とはいかず、兄は年を追うごとに父親のように私に振る舞うようになっていきました。包丁を突きつけられて、スマホと定期だけで遠くの駅まで逃げたこともあります。殺すと宣言されて、荷物をまとめて夜中に家を出て、安全なところに行ってから友人の家に電話をして泊まらせてくれと懇願したことも。

私にとって兄は父親よりも恐ろしく、いつでも私の命を奪える驚異的な存在になりました。

今日のお話は、そんな機能不全家庭出身の私が兄から解放されて自由になるために改名の決意をした話になります。


自由になるために必要だったこと

①支援措置

兄からの暴力で家出をした私は兄が私の居場所を突き止めて殺しにくるのが怖くて仕方ありませんでした。そのため、ずっと住民票を実家から動かさずにいました。

生活するにあたって、住民票を動かさないのは限界を感じたため、まずは支援措置という住民票の閲覧制限をかけることにしました。

支援措置を受けると、決定通知書が発行されます。これが発行されると、住所が記載されている全ての公的文書を本人でさえなしに閲覧することができなくなります。とても不便ですが、本人でさえ決定通知書が必要であるという点はとても安心できます。

支援措置を受けるためには、自治体によりますが、警察の生活安全課などで相談歴をつける必要があります。私は支援措置を受けたいと市役所に申し出たところ、最寄の警察署に相談歴をつけるように言われたので、冒頭に書いたような兄からの暴力や暴言、兄への恐怖心について相談しました。

この相談歴は名の改名のところでも役に立つので、必ず警察署で相談歴をつけましょう

②分籍/転籍

住民票の閲覧制限では、戸籍謄本に閲覧制限をかけることができません。したがって、誰かと婚姻した場合、戸籍に相手の名前が残ることになります。そうすると、私の居場所を突き止める方法が私だけでなく配偶者について調べることで居場所を特定することもできてしまいます。

名の改名も同様に、戸籍にそのまま私の改名後の名前が記載されてしまいます

これはとても危険なので、戸籍に何らかの変化をさせる前に、実家の戸籍から自分の戸籍を分離(分籍)して、独立戸籍になります
分籍する際、本籍地を新しく自由なところに設定できるので、現住所とは異るアクセスの良いところへ本籍地を移します。

これで分籍は完了ですが、これだけだとまだ新しい本籍地を元の本籍地から辿って追いかけてくることが可能です。自分の戸籍から元の実家の戸籍の痕跡を完全になくすには、分籍して本籍地を変えたあと、さらに転籍をして本籍地を移動させます。分籍と転籍で本籍地を2度変えることで、実家の戸籍の痕跡を限りなく排除することができます
(転籍の数を増やすほど安全性は高まります)

③名の改名

兄への猛烈な恐怖心を持つ私は分籍と転籍をしただけでは、安心できませんでした。
また、私の希望職種はインターネット上に本名や本名と住所のセットを記載することが必須です。せっかく閲覧制限をかけていても、本名を検索したら住所や職場がバレてしまうのでは元も子もありません。

私は希望職種を諦めるか、名前を変えて兄の知らない人間として生まれ変わるしかありませんでした。

父や兄の恐怖に支配されて生きてきたのに、この先もその恐怖のせいで好きな職すら諦めないといけないのは我慢できませんでした。そこで、名の改名について調べたところ、私のような人は思ったより簡単に名の変更ができるのでは?と思ったので、名の変更申請をすることにしました。

名の変更に必要な条件は1つです。

戸籍法第107条の2
 「正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得てその旨を届け出なければならない」

この「正当な事由」というのが曖昧ですが、名の変更届けには事前に8つの具体的な項目が設けられています。

* 珍奇な名
* むずかしくて正しく読まれない
* 同姓同名者がいて不便
* 異性とまぎらわしい
* 外国人とまぎらわしい
* 神宮・僧侶になった(やめた)
* 通称として永年使用した
* その他

こうしてみると拍子抜けすると思います。「正当な事由」って、この程度の理由なんです。この具体例の中には私のような命に関わるような犯罪防止のためという事由は含まれていません。含まれていないのは、あまりにも突飛で想定外だからです。

「家族が自分に危害を与えるために住所を変えても追いかけてくるため。職業の関係で名の公開が義務であり、非常に危険なため。」

この理由は、上であげた具体例のどの事由よりも名の変更に「正当性」を与えます。上の具体例は要は「不便な名前だから」変更が許可されるわけです。不便な名前の改名より、防犯のための改名のほうが正当性が高いのは誰でもわかります。

名の変更届けの「その他」を選択し、具体的にどんな被害にあってきて、これからどんな被害に合いそうで、名の変更がその防止にどう役に立つのかを書くことができれば、改名することができます。

申請書には名の変更事由を証明できる書類の添付が必要です。私は市役所で受けている閲覧制限の支援措置の決定通知書のコピーと警察の相談歴を開示請求して得た書類を添付しました。

申請書を提出すると、家庭裁判所での面談日が指定されます。その日に面談をして、その後、決定通知書が郵送されます。手続きはそれだけです。

面談はどんな厳しいことが聞かれるのだろう?とドキドキして臨みましたが、拍子抜けするほど和やかなものでした。どんな仕事に就きたいのかを基本的に聞かれ、兄は今どんな生活状態でどのくらいの危険があるのかを聞かれ、心底心配され、今後の仕事での活躍を応援されて終わりました。

この記事を書いている時点ではまだ決定通知書をもらっていませんが、面談の中で、許可が出た後の手続きの説明もあったので、おそらくこのまま許可が出るのだろうと思います。

追記:2019.8.24 名の変更許可がおりました。

④苗字の変更

苗字の変更方法はいくつかあります。名の変更と同様に家庭裁判所に申請する方法と結婚する方法が代表的です。

家庭裁判所での苗字の変更は名の変更より難しいとのことでしたので、私ら入籍による苗字の変更を選択しました。
特に結婚願望はないので、入籍後、離婚すれば元どおりの生活になります。離婚届を提出する際に、苗字をそのまま使うか旧名に戻すか選択できるので、そのまま使う方を選択すれば入籍→離婚の流れで苗字を変更することができます。

ほとんどの場合は名の変更さえしてしまえば安全かと思いますが、私は特殊な苗字だったので一般的な苗字に変更する必要がありました。一般的な苗字でも、変更しないと不安な人はパートナーや苗字の変更のためだけに入籍と離婚をしてくれる人を見つけることができるなら変更は簡単にできます。

もちろん、入籍後そのまま結婚生活を送る人は離婚する必要はありません。


まとめ

以上が機能不全家庭出身の私が自由になるために必要だったことです。
簡単にやることをおさらいして終わりにしようと思います。

警察へ相談歴つける
→住民票の閲覧制限の支援措置をうける
→戸籍を分離して本籍地を変更する
→本籍地もう一度転籍する
→警察の相談歴の開示請求をする
→名の変更届けを記入
→警察の相談歴と支援措置の決定通知書と名の変更届けをまとめて、名の変更申請をする(郵送可)
→家庭裁判所で面接をうける
→決定通知書が届くのを待つ
→苗字を変える


以上です。
私と同じような境遇のみなさんが、自由な職業選択と安心した生活を手に入れられることを願います。

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