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熊本・五家荘へインバウンド視察に行ってきました

「インバウンド」。
その言葉を聞くだけで、日本人の観光客すら来ていないし、外国語対応できないから無理無理〜〜〜という反応が、三陸あたりではよくみられる。
それでも、観光業界では「インバウンド」が当たり前になっていて、私もインバウンドにとりかかりはじめて少し「いけるかも?」と思えたところで、コロナ。
コロナ禍の間に観光コーディネーターとして仕事をする自治体も変わってしまった。

コロナ禍のなか、視察に行けないし、勉強会もなくなっているし、人もお金も動かないしという言い訳ですっかり外の世界をみる機会をつくらず、勉強もしてないことに気づいてはいたが、この秋に行動制限が緩和され、外国人観光客が戻ってきて急にこれはやばいぞと焦る。

そんなとき、以前コーディネートしていた地域の「漁師さんの船で行く養殖いかだ見学」を気に入っていただていた、インバウンドのエージェントのTさん(欧米の会社)から3年ぶりに連絡があった。
近況を話しながら、インバウンドについて悩んでいるということをお話ししところ、11月にアメリカ人グループを熊本県の「五家荘」に案内するので、見に来ないか?と誘っていただいた。
「五家荘」は熊本県八代市から車で山道を2時間の秘境にあり、広い山々の中に約100世帯ほどの家が点在している。海こそないが、不便なアクセス(公共交通機関なし)、鹿をメインとしたジビエ料理を出す民宿、養殖のヤマメ、山の幸などがあり、大槌町に似ているところがあるとのこと。
日程を伺ったところ、ちょうど大阪出張のあとそのまま合流できるスケジュールだったので、思い切って行くことにした。

五家荘について

ツアーは、九州や関西をまわるもので、そのなかで熊本県でのスケジュールは、
1日目 大阪から新幹線で熊本へ。熊本城見学。熊本泊
2日目 熊本市観光。熊本泊
3日目 熊本市から五家荘へ。五家荘観光 五家荘「佐倉荘」泊
4日目 五家荘観光&体験。五家荘「平家荘」泊
5日目 五家荘から八代市へ。私はここで離脱。
参加者は、アメリカ人4名(本当は、3グループ6名の予定だったが、旅行直前に2名がコロナ陽性となり来られなかった)。
母子ペアの母のほうは大学教授。日本大好きで何度も日本へ来ている。五家荘も2度目とか。クリエーターの息子さんは、たぶん2度目で今回のコースは初めて。
年配の夫婦は、どちらもお医者さんで日本初旅行とのこと。
2グループは同じ趣味で繋がっているが初対面という参加者構成。
そして、コーディネーター兼通訳のTさんと、英語力なし(ボディランゲージ専門)の私という珍道中となった。

私と同じく新大阪から九州新幹線に乗ってきたアメリカ人グループとコーディネーターのT氏と熊本駅で落ち合う。駅降りるとすぐに路面電車に乗って町の中心部へ。まずはホテルにチェックインして、熊本城へ向かう。
熊本城へ歩く途中途中で、ホテル近辺の日本特有のお店を紹介するT氏
熊本の歴史などもレクチャーしながらお城へ。熊本に来たことがある方は、「マリ、ほらカトーよ」と教えてくれた。「カトー」が加藤清正だと気が付くのにしばらくかかった私(笑)。
熊本城の下にある城彩苑「桜の小道」では、試食しませんか?と声をかけられては食べて買い物してと、なかなか進まず。お店の人たちは、買い物に必要な英語だけを片言で話している。インバウンドのために覚えた英語。これでいいのだ
熊本城についてのレクチャー
熊本城でパチリ
熊本県には、外国語対応看板がたくさんあった
どこでもWi-Fiがつながる。初日はこのあとホテルに戻って少し休んで、T氏おすすめの居酒屋さんで夕食をとった(写真なし)。
翌日は路面電車に乗って、水前寺公園へ。外国人に人気のきものレンタルやさん。私たちはレンタルしなかったが、インバウンドは戻ってきていて、この日香港からのお客さんの予約があると言ってた
美しい日本庭園にみんなご満悦
昼食は、熊本ラーメンの要望多くこの店へ。ガイドと別テーブルでも、ちゃんと自分たちでオーダーし、会計していた(みなさん、日本語できません)。
午後はアートが好きな参加者の要望で、「熊本市現代美術館」と「熊本県伝統工芸館」へ。
このあとホテルで休んで居酒屋で夕食。熊本はどこも人で溢れて人でいっぱい。
翌日はホテルにお迎えが来て、いよいよ五家荘へ。ホテルに迎えの車が2台来て、1台は参加者、もう1台は荷物専用者(みなさん荷物がすごく大きくていっぱいあるの)。私は荷物専用車の助手席に乗せてもらったので、車中での参加者の様子わからず。
驚いたのが、迎えに来られたのは、八代市の観光担当の職員さんたち。車も役場の車。
役場の方たちも五家荘での3日間、泊まりで一緒に行動する。
いつもそうなんですか?と聞いたら、インバウンド事業の一環で、基本的に役場が送迎をしているとのこと(五家荘の道はほぼ山道で細く、バスで行けないところが多い)。
写真は、五家荘の入り口にあるお食事処。
あいにくの雨(泣)。
車で2時間。山道に入ってからが長く、昔の人(平家の落人)はここまで歩いて来たの!と驚く。五家荘でのガイドは、五家荘在住、外国人向けガイド会社を立ち上げ、九州をメインに活躍している橋崎さんにバトンタッチ。英語は独学で日本で覚えたという。すごい。
五家荘は「轟」と呼ぶ滝があちこちにあり、観光も滝めぐりがメインとなる。
私は車の都合で滝1カ所ワープして、次は平家の里。雨あがりの紅葉がきれい。
みなさんの関心は、こんなプライベートがないおうちで、どうやって子供をつくったの?
だよね〜〜と私も興味津々。ガイドさんのお話に納得


本日のお宿は、民宿「佐倉荘」。源氏の血筋の緒方さんの家です。
夕食会場。よい雰囲気。
山の民宿らしい夕食
ヤマメのお刺身
鹿肉のロースト
珍しい食べ物にみなさん興味津々
かぼちゃのスープが絶品!
ヤマメの姿焼き?(名前忘れました)
鹿肉の甘唐揚げ
翌朝、宿の方と記念撮影をして観光へ
梅の木轟公園吊橋へ
五家荘エリアはとても広く、山々に生活のための吊り橋がところどころにかかっている。
が、ここは幻の滝があると噂されていた滝が発見され、観光用につくった橋だとか。
ここにも外国語看板。
かなり歩いたあと、ようやく滝に到着!
つづいて、せんだんの滝
軽く滝の入り口にある食事処で食事。猪肉のおそばをいただく
ここから山道がきついとのことで、年配の女性パットさんは待機
これはなんですか?とひとつひとつに興味をもつみなさん。英語ができずすみません(だが、たぶんこれは日本語でも説明できないぞ)。
ハードな道でしたが、豪快な滝をみることができた
このあと、みんなが楽しみにしていた「書道体験」と「木工体験」。会場は、昔の小学校を活用したコミセンみたいなところ
書道とはなんぞや?という説明を受ける
まずは一を書いてみる
アートな彼は、ただの「一」では物足りなく装飾を入れ、すでに「作品」になっていた
本番は、永久の「永」の字。外国人にとって漢字は「イラスト」なんだな。ロゴにしたい
自分の名前もカタカナで書いて出来上がり!
木工体験では、竹の筒をつかって好きな用途の容器をつくるというもの。
自分で竹を切って、磨いたりくっつけたり。さすがDIYをやり慣れているアメリカ人。みんな躊躇いなく電動工具や刃物をを使いはじめ、制作に夢中
写真のビアカップのほか、揺れると音がでるモビールというか風鈴のようなオブジェをつくった方も
すっかり暗くなったところで、本日のお宿「平家荘」
夕食会場には囲炉裏。これは日本人も気分があがります
いくらではなく、ヤマメの卵とヤマメの燻製
ニジマスのお刺身と卵
竹筒に入れた熱燗
ヤマメの塩焼き
鹿南蛮(うまうま〜〜〜)
猪汁
どれもこれも素晴らしいお料理だった
真っ暗のなか宿についたので、朝のお散歩
ヤマメ、ニジマスの養殖をしているので、お刺身や卵など新鮮なものが食べられる
朝食は、炭火でパンを焼いて食べるのだが、写真がなかった!
最後にみんなで記念撮影。英語できないのに、なんだかとても仲良くなって、最後はウルウル。
みなさんの九州旅行はまだまだ続きますが(平戸にも行くらしい!)、私は、ここでお別れ。八代市の職員さんに新八代駅まで送っていだだき、無事岩手に帰れた

この視察で、外国の方と一緒に彼らの目線で旅でき、今後ために本当に勉強になった。写真キャプションでは書かなかったが、そのほか気がついたことや感想を箇条書きで。
▶︎荷物のほとんどがお土産ではないか?と思うほど、どこに行っても彼らはお世話になった方々にアメリカから持ってきたお土産を渡していた。お菓子やジャーキー、絵葉書など、けっして高いものではないが、彼らの気持ちはとても嬉しく、「ホスピタリティ」精神を逆に教わったような気がする
▶︎空き時間に、教授の息子さんがひとりで「床屋」や「メガネ屋」に行っていた。外国人観光客に日本の「床屋」は人気と知っていたが、「メガネ屋」はびっくり。すぐ作れるのは珍しいのか?
▶︎山のなかの民宿なので、どちらもガスや電気の使用においては注意が必要で、共同のトイレや洗面所はお湯がでない。「不便」と感じるかもしれない。が、アメリカ人の方々はまったく気にしてない
▶︎コーディネーターやガイドがお風呂の入り方、和室の部屋の使い方など、事前に丁寧に説明していた。その場所のやり方に驚きつつもちゃんと守っていた。
▶︎ヤマメやニジマスを養殖しているので、新鮮な刺身が食べられた。大槌町のサーモンと同じく、刺身はとても人気だ。
▶︎鹿や猪のジビエ料理が郷土料理なので、家庭料理としていろいろな料理を食べられた。どれも美味しかった。
▶︎年配の方も含め、みなよく歩く。けっこうハードな山道もあったが、疲れた様子も見せない。それよりもその土地ならではの自然を見られることのほうが重要だという。

岩手県はアジア系(とくに台湾・中国)のインバウンドに力を入れているが、花巻温泉や安比高原から遠い三陸にとって、旅行の目的が「買い物」「スキー」「花見」「温泉」「グルメ」が上位にくるアジア系の団体ツアーが三陸に来るには、距離だけでなく収容能力においても、厳しいと感じている。
魅力的なコンテンツがあれば遠くても来ると言われればそのとおりだが、そこはちょっとおいといて(笑)。

そのなかで、旅行の目的が「自然」「文化(食も含む)」が上位に来る欧米の観光客はどうだろう?
三陸の魅力は自然であり、不便さであり、沿岸ならではのさまざまな文化である。

今回の視察でも、いままでの欧米人の受け入れでも感じたのは、彼らは「驚き」「不便さ」「意味のわからさ」を旅の醍醐味と受け止め、なんでもチャレンジして楽しむ。言葉が通じないことに対してもそれを楽しさに変えている。

昔むかし、まだ私が大学生だったころ、沢木耕太郎さんの「深夜特急」に憧れて、バイト代を一所懸命ためてヨーロッパと南米を貧乏バックパック旅行した。
日本の景気がまだよくて円高だったので、どの国に行っても学生ながら「安い!」と感じた。
宿代や移動のお金はかなりケチったが、旅行先での食や現地エクスカーション、お土産はかなり奮発したと思う。
言葉が通じないのに、旅の途中で会った現地の人の家に泊めてもらったり、「勝手にガイド」してもらったり、いろんな方に親切にしてもらったことはいまでも鮮明に覚えている(騙されたこともあったがそれもいい思い出)。
そのとき思ったのが、日本って国は外国人観光客に(何度も言うが、言葉が通じなくても)こんなに「優しくて」「おもてなし」している?ということと、観光ってどんな人に出会うかでその国の、その地域の印象がまったく変わるということ。
(余談だが、私はバックパック旅行で、もっともいろんな人に出会い、いちばん面白い経験をしたスペインに、その後語学留学をした。こんなに面白い人たちとちゃんと会話がしたいと)

「自然」と「人」は三陸の最大の魅力。
いま、円安で外国人が日本は「安い」と旅行にくる。そのなかに、かつての私のような、どんなに遠くても自力で旅をする個人旅行も増えるのでは?と期待している。

話のなかで、大雑把にアジア系旅行客は団体、欧米系は個人旅行というような書き方をしたが、傾向としてざっくり分けただけである。アジア系の個人旅行客もたくさんいるだろうし、今後も円安でもっともっと来てくれるようになると思っている。

日本も景気がよくなって収入が上がって、若い人たちがちょっとバイトすれば海外旅行に行けるという時代になってほしいもんだ。

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