いつかホエーが尽きるとき
チーズづくりがやめられない。
まずスーパーで148円くらいの400gのプレーンヨーグルトを買う。ボウルとざるを重ねて、キッチンペーパーを敷き、ヨーグルトをドバッと流し込む。流し込んだらまたさらにキッチンペーパーに、そして重石。うちではポリ袋に入れた水。
そうして数時間放置しておくと、水切りヨーグルトが出来上がる。固めで味の濃いヨーグルトだ。
しかしここからが本当にすごいところで、ざるの下に入れたボウルにはヨーグルトから出た汁が溜まっている。こいつがすごい。ホエーと呼ばれるこの汁は、栄養満点のヨーグルトの絞り(?)汁。だいたい400gのヨーグルトからは150mlくらい取れる。それを鍋に入れて火をかける。沸騰直前に同じく150mlくらいの牛乳を入れて、火を止めて混ぜる。
だんだん、白いブツブツがたくさん浮いてきたら、混ぜるのをやめてしばし放置。また水切りヨーグルトの要領でボウルとざるを重ねて、キッチンペーパーを敷く。鍋の中のものをそこに流し入れて、同じくキッチンペーパー、そして重石。
それで一晩冷蔵庫の中で放置しておくと、自家製リコッタチーズが完成する。そしてボウルには、さらにそこから出た汁、つまりホエーが溜まっているのだ…。
この工程を繰り返すと無限にリコッタチーズを作ることができる。とはいえできるホエーの量は毎回少しずつ減っていくのでいつか終わりは来るのだけど…。
水切りヨーグルトもチーズも、特に好きなわけではない。
むしろふたつともちょっと苦手な味だ。
でも、たった148円のヨーグルトと少しの牛乳を使ってこんなに次々とチーズが作れるという事実に興奮が止まらない。
このチーズづくりの工作的興奮が食べ物の好き嫌いを圧倒的に上回っている。
だから毎日作られていくチーズをとにかく消費するために、まるでおまけのような自炊をしている。ほうれん草とベーコンと一緒にパンに載せたり、チーズと塩胡椒を混ぜてトマトと食べたり。
美味しいとか美味しくないとかではなくて、私にとってはチーズを作っていくことが大切。なんだか心が落ち着く。
いつかホエーが尽きるときに、私はチーズづくりをやめることができるのだろうか…。