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初めて技術同人誌を頒布して1年経ったので振り返る

この記事は 技術同人誌/技術を取り巻く様々な執筆 Advent Calendar 2024 14日目です。

2023年11月、初めて作った技術同人誌2冊を頒布しました。それから1年が経過し、作った本も6冊まで増えました。そこで、この1年を雑多に振り返ろうと思います。

作った本

まずは去年の11月から今年の11月で頒布した書籍を簡単に紹介します。

1年で作った本とそれらの初出イベント

オームの法則だけで理解するスイッチ・FET・IOポート

最初に完成した技術同人誌です。隠しノンブルが隠れていない、行間が広くてアホっぽいなど、体裁がぼろぼろです。教育に使えるのではないかとのコメントをいただきました。

最適化問題として考える開発と設計

最初に思いついたテーマの本です。開発プロセスとかソフトウェア工学とかが近い領域みたいです。なんで書こうと思ったかとよく聞かれます。

会社大爆散 残った人、辞めた人、アメリカに行った人

1シーズン限定で頒布した本です。初の合同誌でした。アメリカが気になる人が多かった印象です。表紙や本文のデザインは共著者のデザイナーにやってもらったので良い感じになってます。

最適化問題として考える組込み製品開発

最適化問題として考えるシリーズ第二弾です。組込み製品の開発プロセスにフォーカスした本です。

最適化問題として考える競馬ー理論編ー

初めてコミケに参加することになったときに作った本です。初めて100ページを超えました。ページ数が多くなると入稿条件が厳しくなることを知りました。割とありがちなテーマでしたが、好評で良かったです。

Typstで技術同人誌を書こう!すぐに役立つ20のトピック

競馬の本をTypstで書いている間に見つけたテクニックを整理した本です。これまでの本と異なり、基本的に見開き完結としました。また、初めて本文もフルカラーにしました。あと、技術書典の技術書アワードのファイナリストに選ばれました。

全体的な振り返り

技術同人活動を初めて1年余り、そのなかで気づいたことや思ったこと、考えたことを雑多に振り返ります。

テーマの選び方がわかってきた

最初の2冊を作るときは書きたいものと書けるものをテーマに選びました。その次、さらにその次を書くとき、たくさん案を出してそのなかからテーマを選ぶことをしました。

基本的に同人活動は書きたいものを書けばよいと思っていますが、それを書き上げられるかというと別の話だったりします。書き始める前にそのテーマが自分の中でどのような位置づけであるか確認しておくことは、テーマ選定の観点でも執筆の観点でも有用です。

私は思いついたテーマに対してつぎの3つの要素を考えています。

  • 書きたい

  • 書ける

  • 需要がある / 役に立つ

そもそも書きたいテーマでないと筆は進まないし、内容の8割くらいの構想が簡単に思い浮かぶくらいのものでないと作るのが辛かったりします。また、せっかく作るなら誰かの役に立つ本だと良いなと思ったりもします。案だしで出たテーマについて、これらの指標でマッピングして可視化するとわかりやすくなります。

参考として私のテーマのマッピングを載せておきます。色がついているテーマはすでに書いたものです。

私の技術同人誌のテーマのマップ

このマップを見てわかるとおり、3つの要素が揃っているテーマはあまりありません。ですから私は各要素に重み付けをしてテーマを決めています。
同人誌なのでやはり書きたいを優先したいのですが、実際には書けるが優先されています。締切がありますからね……。

3つの要素で考えていると述べましたが、正直、需要はほとんど考慮していなかったりします。だって、需要なんてわからなくないですか?作ってみて初めてわかるものだと思っています。とはいえ、自分が書きたいものは、面白そう、役に立ちそうなどの動機があるはずで、それに共感してくれる人はいるはずです。とりあえず書きたいものと書けるものでテーマを選んでおけば間違いないというのが現時点でのテーマ選定のポイントです。

本を作ってみて初めてわかることがある

どんなことでもやってみて初めてわかることがあると思います。本づくりも例外ではありませんでした。本の作り方・流れ、印刷の仕組み、校正のやり方などなど、たくさんありました。

技術同人誌はその作り方に関する技術同人誌や動画などの資料がいくつか存在します。また、一般の同人誌づくりに関する書籍にも、技術同人誌づくりに役立つ内容がたくさん含まれています。

しかし、いざ自分の本を作るとなると、どうすればよいかわからなくなることがあったりします。また、問題ないと思って作ったものの、間違っていたこともあります。例えば隠しノンブルが隠れていなかったりね……。

あと、自分の執筆にかかる時間や文のくせも新しい気付きでした。まとまった量を書くことで文のくせが見えてきたように思います。まあとにかく回りくどく、つまらない文を書くものだと(この記事も)。

この他にも、本って嵩張るんだ!という発見とか、イベントでの立ち回り方とか、いろいろあります。

一方、良い発見もありました。印刷所の人は想像よりずっと優しくて丁寧でした。ありがとう、ねこのしっぽさん。

たいだいのことはなんとかなる

本づくりは前述の資料で8割方はなんとかなります。

技術同人誌の頒布は技術書典や技書博といった技術同人誌即売イベントが主戦場となりますが、これらのイベントはサークル参加者に優しい設計となっており、困ることがあまりありません。

これらのレールから外れたところの不安もだいたい杞憂で終わります。

私が初めてイベントに参加する前に抱えていた不安というと、誰も買ってくれないかもしれない、イベントでうまく対応できないかもしれない、内容についてめちゃくちゃ批判されるかもしれないといったものがありました。こんな心配を抱えるのも同人活動だと思っても良いかもしれませんが、執筆やイベントの準備に集中したほうがずっと良いと思います。

なんとかする力が必要

本は印刷所で印刷してもらいます。印刷所には入稿の締切があります。その締切に間に合わないと、イベント当日、頒布する本が無いという事態になります。ですから、必死に締め切りに間に合わせるわけです。

その締切への間に合わせを、私は「なんとかする」と呼んでいます。まあ、これは本業でそう呼んでいるからなんですがね。

私は民生品の開発をしばらくやっていました。民生品は簡単に日程をずらせないんですよね。というのも私がやっていた民生品は決まった時期や季節にリリースします。それが必要となる時期があったり、売上が伸びる時期があったりするからです。その時期を逃すと利益が出にくくなり、事業継続が難しくなります。ですから、日程が遅れないように設計を進めたり、不具合対策したりするわけです。締切までになんとか仕上げることを「なんとかする」と呼んでいました。

これ、本づくりも同じでした。書きたい内容が山ほどあったとしても締切に間に合わず、本にできなければ意味が無いのです。本として成立させるために、締切までに書き上げ、意味が通る内容まで削り、校正し、表紙を作る。これはやはりテーマを決める、つまり企画の段階から制作、宣伝、頒布まで一貫して自分でやっているから、一冊を作り上げてなんとかする力が必要なのではないかと思っています。本づくりは、意外とそういうところが大事だったりするのではないかと思っています。

仕事に役立つ副次的効果があった

まず、文章を書くのが速くなった気がします。仕事でドキュメントを作成することは多々ありますが、以前よりさらさらと書けるようになりました。文章の構成がだいたいわかったことと、想定読者をはっきりさせてから書くようになったことなどが要因と思います。

つぎに、文章を書くのがうまくなった気がします。面白い文章という意味ではありません。伝わる文章という意味です。本づくりの工程のひとつに校正があります。文の誤りや表記揺れなどを検出し、修正する工程です。この工程を何度か経験し、伝えたいことに対する文の不足や冗長の発見が得意になった気がします。

そして、ある程度内容の多い長い文章を書けるようになったと思います。仕事で、ある技術についての解説書のようなものを作る機会がありました。分量は多めでしたがさらさらと書き上げられました。それを読んだ同僚から、いつか本を書きそうと言われました。

さいごに、印刷物の作成がうまくなったことをあげておきます。イベントの設営のために色々と印刷物を作りました。サイズやフォント、色使い、文字・図の配置など、色々と気をつけるポイントがありました。これらは職場の掲示物作成にも当てはまります。開発職といってもそこはやはりメーカー、4Sだとか色々うるさいのです。様々な掲示物や表示を作らなければいけません。最近は一発で所望のサイズの見やすい掲示物を作れるようになりました。

技術書典17の設営

1年で6冊は多いのか?

コスプレジャンルで活動する友人に、1年で6冊作ったと言ったら、「その執筆ペースは異常。文豪かなにか?」と言われました。ジャンルが異なるからそう思うのかもしれませんが、実際のところどうなのでしょう……?

ずっと書いてる感覚

1年といっても、それは初めてのイベントから最後のイベントまでの期間です。執筆を始めたのはもう少し早かったわけです。

作った6冊の制作期間
(小さくてすいません)

この図のとおり、最初の一冊を書き始めてからほとんどずっと制作しています。この期間、毎日ずっと書いているわけではありませんが、構想を考えたり、資料を集めたり、何かしら進めていたと思います。

辛いかというとそうでもありません。制作期間を長めに取っているためだと思います。

また、直近の2冊、競馬の本とTypstの本は制作期間が1~2ヶ月と、それまでの本と比べて短くなっています。執筆環境の改善などの要因もありますが、やはり書きたいことがはっきりし、執筆当初から構成が固まっていたため、スラスラとかけたのだと思います。制作自体に慣れるとこれくらいのペースでもなんとかなると思いました。

1イベント2冊は大変

慣れたと言っても、同じ締切を持つ2冊を同時に制作することは大変です。執筆、組版、校正、表紙制作などすべての作業が2倍になります。

私は一人サークルですから、並列で進めることもできません。1冊目と2冊目の制作を交互に進めるか、1冊仕上げた後、2冊目に取り掛かるかといった作り方になるでしょう。

自分の場合、1冊目を書き始め、行き詰まったら2冊目に着手し、しばらくしたら1冊目に戻るといった流れで制作しました。これまではなんとかなっていましたが、この進め方は2冊とも落とす危険性があります。また、1冊に集中できないので効率が悪くなったりミスが増えたりします。ある程度頒布する種類が増えたら1イベントにつき新刊は1種類にした方が良いかもしれません。

ベストは1シーズン1冊?

春秋の技術書典・技書博、夏冬のコミケ、それぞれに1冊の新刊を作るのが良いペースなのではないかと思ってきました。ぴったり4ヶ月間隔とはなりませんが、忙しすぎず良いのではないかと思います。

ただ、イベントの開催時期や印刷所の締切を考えると、1年の後半がややタイトになります。春のイベントの入稿が4月中ごろ、夏コミ入稿が6月末~7月初め、秋のイベントの入稿が10月中ごろ、冬コミの入稿が11月末ごろです。初夏のピークと、秋から年末のピークがあります。

ちなみに今度の冬コミには出ないので、いま私は暇です。来年の春か夏のイベントに向けて競馬の本の構想を考えています。

書きたいように書くが良い

結局、冊数ではないのかなと。書きたいことを書けばよいし、書きたいときに書けば良いのではないかと思います。書きたいテーマが見つければ書けばよいし、苦しければやめれば良い。

6冊が多いかどうかは知りませんが、自分の感覚ではまあよくやったかなとと思います。来年はゆっくり2冊程度書きたいなと思っています。

おわりに

冒頭に雑多に振り返ると書きましたが、本当に雑多に振り返ってしまいました。文章を書くのがうまくなったと書きましたが、あまりうまくなっていないことがわかりますね。すいません、精進します。

まとまりがありませんがこれで終わりにしようと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。

※本の詳細は技術書典のページでご覧いただけます

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