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秋ですね いくらの醤油漬け

四連休の初日に夫が商店街の魚屋さんで新物の筋子を買ってきた。本当は当日処理してしまうのがベストなところ、先に控えていた栗に順を譲って翌日に漬けた。

実家では、何でも目分量にやる母が適当にお酒とみりんと醤油をジャバジャバ入れて漬け込んでいたけれど、子どもも食べるしちょっとお酒が立ち過ぎてしまうことがあるから、白ごはん.comのレシピに沿って漬け汁は一度煮切って冷ましたものに漬ける。

筋子は温かい塩水で、卵を潰さないように優しく腹の皮から粒を外していく工程が好きだ。温水の中で白っぽく濁った卵がゆらゆらと漂いながらほぐれて指の間をすり抜けていくのがなんとも気持ち良い。料理家の土井善晴さんが、料理は自然に直に触れること、と言っていたけれど、確かに日常生活を振り返ると、人が作った製品以外の有機物に触れるタイミングはあまりない。

大学生の頃、がら空きのモスバーガーの店内で遅くなってしまったランチの注文をぼーっと待ちながら、今この自分の視界に入っている、ほとんど全てが売り物なんや、、この壁に掛かってる変な額縁も、ていうか壁も、壁紙も、机も、床の素材も、窓ガラスも、外を通る車も、この服も、靴も、みたいに急に目の前が「ヒトが作った売り物で作られた世界」と強烈に認識されて、ゾワゾワしたことがある。

筋子も、大きな流通の流れに乗り、機械化された作業で親の雌鮭の腹から取り出され、パッキングされてきた製品ではある。でも、筋子はやっぱり自然が作った物体で、自然の手ざわりがするし、命の生臭さがある。

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筋子から、わたしの手を介して「いくら醤油漬け」になったものを、夫の実家で義父母と実母と一緒に手巻きのネタにして食べた。売り物のいくらにありがちなネチャっと感とは真逆の、弾けてするっと溶ける命の味がなんとも旨い。敬老の日にみんなで囲む食卓は愉しくて、老いも若きも笑顔になった、いい時間だった。

✴︎食材ノート

・いくら 地元商店街の、最近贔屓にしているお魚屋さんで購入した北海道産の新物

・漬け汁 醤油は愛媛の田中屋の驚くほど雑味のしない純正濃口醤油。みりんは愛知の角谷文治郎商店の二年熟成の有機本格三州みりん。お酒は福島の大木大吉商店の純米酒、こんにちは!料理酒で。



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