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9年目のキッチンタイマー

今やスマホでなんでも完結できる時代。目覚ましやタイマーなんて、早々にスマホに取って代わられたものの代表ではなかろうか。

持ち物を減らして身軽になるべく、恐ろしいまでの厳しい目線で、時に断腸の想いで、「え、それも手放すの?」みたいなツッコミも振り払いながら、多くの物を断捨離してきた我が家だが、なぜかキッチンタイマーは結婚当初に買ったアナログなものをかれこれ9年も使い続けていることに今更気がついた。こいつは、あの何度も繰り返しやってくる魔の断捨離月間を9年間潜り抜け続けてきたんだな。それはそれは、感慨深い。


愛用のダルトンのキッチンタイマー・アイボリー


ダルトンのラウンドタイマーというもので、55分まで計測可能。仕組みはシンプルで手でぐるりとねじって、あとはカチカチとタイマーが切れるまでねじりが解けていくようにして時間が進むタイプ。電気は一切使っていないので電池交換も必要がない。裏面には強力マグネットがついている。ある時の賃貸では大きなレンジフードに、ある時の賃貸では冷蔵庫の壁面に、そして今はコーヒーグッズなどの収納場所になっているイケアのスチール棚の側面にちょうどよくくっ付いている。

アナログのタイマーは、いつもは鍋で玄米を炊く時に使うことが多いのだが、他にももちろんパスタを茹でたり蕎麦を茹でたりする時にも活躍する。キッチンの必須アイテムだ。なんでもスマホ1台で事足りるとはいえ、手が濡れていたりするタイミングでさっとタイマーをかけたい時に、スマホスマホと探すのも逆に面倒だし、多少の汚れがついても拭き掃除をすれば壊れる心配もないしという気軽さがダルトンのアナログタイマーにはある。日に何度もスマホを触るのもなんだか疲れるなとも思う今日この頃。ますますこのアナログタイマーは手放せないものになっている。

物の断捨離をするときの考え方の一つとして、専用品を手放すというものがある。何かと兼用できる方法はないかと考え、なるべく専用品を少なくすることで、物量をコンパクトにしていくのだ。その方法に当てはめるとキッチンタイマーは全く理にかなっていない。なにしろ55分までの時間を計ることしかできないのだ。

ではなぜ、理詰め大好きな私がこのキッチンタイマーを手放さずに来たのか。それは多分、このキッチンタイマーが好きだからだ。思い出があるだとか、誰かからもらっただとか、そういう理由では一切ない。単純に自分がこのキッチンタイマーを手に持った時の微妙に重い重量感やアイボリーの色、文字盤や残り時間を示すレトロな赤い針、カチカチとタイマーが進む音、すぐ手の届くところにマグネットで貼り付けておける手軽さなど、色々な要素が組み合わされて私の好きを構成している。そして、ここがイマイチなんだよなあ、という点があまり見当たらない。もちろん無理に探そうと思えば、ないわけではない。タイマーが終わる時のジリジリと鳴る音がちょっと大きい。時間帯によっては近所迷惑なんじゃなかろうかとヒヤッとすることもある。そういう時はもうすぐ鳴るなというタイミングで厚手のタオルの上に置いたり、両手で包んでしまったりしている。そうまでして使いたいのか、と考えれば、そうつまりは、使いたいのだ。好きだから。

多分、違う国に引っ越しても、これは持っていくような気がする。微妙に重いし嵩張るけれど、多分、持っていく。

これを買ったのは鎌倉にあるお気に入りの雑貨屋さんで、我が家の細々としたものは大体この店からやってきていることが多い。店員さんは男性の日と女性の日があり、どちらの方も物静かで店内には落ち着いた空気感が漂い、私にとってまた行きたくなるお店の条件を全て備えている花丸印の店なのだ。私もいつかどこかでお店を開く機会があったら、こんな感じもいいなあと思える、私の中での「エモい」店なのである。その店で買ったものだからという理由が手放していないことに繋がっているかはわからないのだが、あの店で買うのは確かに、何度も食材の買い物のついでに店を通りかかっては吟味した上で、ものすごく気に入って買っているものばかりだから、結果的にどれも長く使っているということになるのだろう。

ちなみにその店の名前はHMT。鎌倉駅から歩いて行ける場所で、八幡宮に参拝するための参道とは反対側の駅の出口から出て、御成通り沿いに少し歩いた場所にある。お店の公式サイトなどは見当たらないし、今時インスタもない。それもまた、なんだかあのお店らしいなと思える。気になる方は「鎌倉 御成通り HMT」で検索すると色々な記事が見つかると思う。

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MariKusu
温かいサポートに感謝いたします。身近な人に「一般的な考えではない」と言われても自分の心を信じられるようになりたくて書き続けている気がします。文章がお互いの前進する勇気になれば嬉しいです。