ボールペン使い倒したい熱（本当は捨てたい熱）

数年前に夫の実家の片付けをした。
とにかくものが多く、そして亡くなった親族が片付けが苦手な方だったのか、本当に大変だった。ホコリってシート状のフェルトになるんだね、とその時初めて知った。

実家の片付けという話題は、本当に大きな問題らしく、色々なところでよく見かける。
使っていない物を処分できない親をどうやって説得するか苦労するという話が多いように思うのだが、我が家の場合は説得すべき相手はもう亡くなっていたので、話は早かった。
左手にゴミ袋、右手で物を鷲掴みという要領でどんどん処理していく。
中古ショップに引き取ってもらえそうなものと、明らかにゴミなものと、明らかに重要書類（銀行の通帳や保険に関連したものなど）に分類していく。それだけでも大変だった。

私は父が亡くなった後、多少父の思い出のような物質を持っていたのだが、ある時全てを捨てた。今も全く後悔していない。むしろ捨てて良かったとさえ思っている。
物にはどんどん澱のようなものが溜まっていき、どんどん重苦しくなっていく。
父との思い出は物質も含めてちゃんと心の中の思い出として記憶されているし、忘れてしまうならその程度のことだったという話なだけだと思ったら、ちゃんと処分できた。

さて夫の実家の話だが、その時気がついたのは、私よりも夫の方が物を捨てられない人だったということだ。私はてっきり、私の方が物を捨てたり片付けたりするのが苦手なのかと思っていた。夫は実家から発掘された両親や祖母に関連した思い出の品を次々に持ち帰った。正直「それどうするの？邪魔だよね」と喉まで出かかったが我慢した。必要か不要かは夫が判断すべきことで、私の問題ではない。

しかし家の中は圧迫されるのである。
実家から持ち帰った思い出のものが押し入れの余白を消し去った。どうしたものか。
その中でも凄まじいのは、筆記用具である。とにかく一生使いきれないほどのボールペンがある。それもそれぞれ思い出がどうやらあるものらしく、記名されたボールペンとか、何かの記念式典でもらっただとか、そういう処分するのにややこしい曰く付きなものが多い。私はまず、夫が知らぬ間に、明らかに思い出の記名などがなさそうなものの中から、明らかにもう書けない状態になっているボールペンや蛍光ペンなどをせっせと処分した。そして残ったボールペンを綺麗に整理整頓して、箱に片付けた。

最近その実家発掘の大量の筆記具箱を開けた。ちょうど使っていたボールペンがインク切れになったので、次のボールペンをその箱から発掘しようと思ったのだ。
そこで私が以前見落としていた、擦ると消える系のボールペン類を発見した。4色や3色が1本で使えるボールペンがなぜか複数本入っていて、それらのどれもが中途半端な使い方だった。一つは黒だけがインク切れ。一つは赤だけがインク切れになっていたりとバラバラな状態。ちょうど替え芯も同じ箱に入っていたので、きちんと書けるかを確認しながら、新しいインクのカートリッジに交換していく。
どうにか全てのペンで書ける状態にまで整理したところで、じゃあ1本使ってみようかと英語の勉強に使い始めてみれば、なんだか手が真っ黒に汚れる。あれ、おかしい。しかもその汚れはちょっとネバネバする。なんだろうと思い、あれこれ見て見れば、ボールペンを握る部分にあるラバーの滑り止めが劣化しているようなのだ。そんなことあるのかと驚いたが、私の指にベタベタとくっつくのは間違いなく、その肝心の握る部分なのであった。
中指と人差し指についた黒い物質は石鹸でこすり洗いしても落ちづらく、とてもイライラした。あまりにも腹立たしかったので、そのペンを容赦なく捨て、他のペンもラバー部分が劣化していないか血眼になって検分した。

自分がちゃんと使い切れる分だけの筆記具だけを所有したい。
どこかに寄付するという案もあるようなのだが、寄付をするにはあまりにも状態が悪いものしか残っていないし、個人の名前がついているものを寄付っていうのも、なんだかなあと思う。何よりも夫が嫌な顔をするだろう。

いつも家が散らかっているように感じていて、そして毎日家事をこなしているのに一向に終わらない。私は毎日家事の奴隷になり、毎日へとへとになって眠りにつく。朝はドロドロに疲れた体を叩き起こして、夜中に私の知らないうちになぜか山盛りになったキッチンの使用済み食器類を洗って綺麗にするところから家事が始まる。辛い、疲れた。これは私の体が老化して、体力が減ってきているからなのだろうか。
お金が大量にあったら、賃金を払うから全部誰かに交代してほしい。そして私は、ちゃんと寝たい。