配信ライブ12ヶ月3〜天空の夏〜
プロデュース
7月。4月からの配信にも少し慣れてきた。持続化給付金の申請もしたことだし、ここらで自分の出ないライブも企画してみようと思った。裏方に回ってみればこれまで見えなかった何かが見えるかも。
演者は決めていた。出雲市在住でピアニストの歌島昌智(うたしままさとし)さんだ。歌島さんのピアノは美しい。ピアノ同士なのでわたしがご一緒することはなかったが、企画をすればその演奏を間近で聴ける。歌さんのピアノとMarinoのサックスのコラボを聞いてみたい。きっとこの2人は合うと確信があった。
実はツイッターで歌島さんが配信の試行錯誤をしているのを見ていた。どうやら1人でされているようで、手が足りず困っている様子も見られた。わたし自身、配信をやってみて1人でやるのは難しいと感じていたので(本人が演奏する場合はよけいに)、機材ややり方の情報を交換したらいいのじゃないかと思った。配信ライブをやりませんかと声をかけてみたら「やってみたい!」とのことだった。
歌島昌智配信ライブwith Marino@music bar Birthday
歌さんとMarinoの配信ライブは7月6日(月)と決めた。この日までに一度出雲の歌さんのおうちにMarinoを連れて行って初顔合わせをする。素敵な古民家で、いいピアノがある。ここからも配信できそうだ。
森田社長
本番当日のスタッフには、音響に奥田隆さん、そしてスイッチャーにMくん、そしてこの日は初めて映像カメラマンの森田裕典さんを誘った。以前出雲のケーブルテレビの番組に出演していたときのディレクター兼カメラマンで、その後独立、現在はウエディング映像を撮影する会社U1createの社長である。
4月の配信を終えたばかりの頃、森田さんから連絡をもらった。彼は独立したばかりだったが主業務のウェディングの撮影がコロナのため軒並み中止になって困っていた。「マリコさん、手伝えることがあったらなんでもやります!」と言っていた。わたしにとっても渡りに船で喜んだ。そんな森田さんだったが、あれよあれよという間に配信の世の中になって、今では一番忙しい人になった。
この日、9月に配信会場として予定のbar NUの3人衆(飯塚博、松浦賢、後藤健太)も見学に来ていた。初顔合わせ同士でも、機材の話をしているとすぐに仲良くなっていく様子がおもしろい。みんなオタクで最高(笑)。
チャット
さあ役者がそろったところで歌さんとMarinoのライブ。素晴らしい。目の前で見ながら、わたしはYouTubeのチャットに参加した。あ、そうか、これもおもしろいな。と頭に電球がついた(昭和な言い方ですいません)。次回は自分のライブのチャットに自分で参加しようと決める。
第4回配信@カフェ&ベッドうづい通信部
暑い夏でMarinoは沖縄出身なのに夏バテしていた。宮古島は常夏というが、気温はいつも30度程度なのだそうだ。冬はマイナス、夏は40度というような寒暖差のある気候には慣れていないよね。
配信は島根県のおへそのあたり、A級グルメで有名な邑南町(おおなんちょう)へ。2018年の暮れに廃線となったJR三江線の天空の駅こと旧宇都井駅近くの「カフェ&ベッドうづい通信部」のオープン記念だ。
三江線
↑歌声列車(笑)(2016)
ああ懐かしの三江線。島根県江津市と広島県三次市をつなぐ路線だ。ここは2018年の廃線を前に歌声列車イベントや(2016年)、年越し歌声列車イベント(2017年暮れから年明け)で「ゆく年くる年」に出演(市民枠で笑)した思い出の地だ。
↑「ゆく年くる年」(笑)
その旧宇都井駅のそばの旧服部医院を改造して、カフェ&ベッドうづい通信部はできた。もともとはオープン記念のこけら落とし有観客ライブということでオファーをいただいていたのだが、このコロナ禍である。お年寄りも多い集落なので人をあまり集められない。かといって配信のみでは、せっかくのオープンを知ってもらえない。カフェの管理人の井上英司さんと呼びかけ人の森田一平さんと相談して、初日は町民対象有観客ライブ、翌日は無観客の配信収録とすることにした。初の泊まりがけとなる。
収録・プレミア公開
懸案の通信環境問題だが、収録して編集してあとで配信すればよいことに気づく。コロナ禍での配信黎明期には、自宅待機の人も多い中で一体感を感じるために生で配信することが大事だったけれど、もうそこにはこだわらなくてもいいような気がした。それより、配信内容の質を上げていくことが大切だと思った。また、YouTubeにプレミア公開(生配信のようにチャットも楽しめる)という機能があることも知った。Marinoは編集作業のソフトfinal cut proXを買って編集の勉強を始めてもいた。
浴衣
このときの衣装は藤崎コウイチさんが手配してくれた浴衣で中原淳一の復刻デザインのものだった。みんながセッティングをしている間に1人で着付け。汗だくになって帯を結んだ。まあまあうまくできたと思ったものの、ライブの途中でほどけてもいけないので「あまり帯は写さないでね」と頼んでおく。
報道カメラマン
この日のカメラマンは、出雲市在住の杉原真司さんにお願いした。杉原さんはフリーの映像カメラマンで地元のニュース映像や、また東日本大震災以降は福島の映像をずっと撮り続けている。スクールMARIKOのゲストでお話をしてもらったこともあるベテランだ。メインカメラをお願いしてあとは定点に置いたカメラを使うことにする。画面一杯のアップ映像が多めにあるのは目の奥にあるものも写すぞといわんばかりの杉原さんの報道精神かもしれない。
旧宇都井駅
↑駅舎からの眺め
収録後、地上20メートルの旧宇都井駅に上がってMarino担当のショートムービーの撮影をする。廃線になってしまったけれど、ここは地域の大切な場所として地元のNPO法人江の川鉄道がトロッコ列車を走らせたりして守り続けている。カフェのうづい通信部もだが、古いものを守るとは、ただ何もせず放っておくことではなく、アイディアを出し仲間を増やし資金を集めるといったエネルギーのいる行為でもある。
第5回配信@自宅
8月の収録はお盆あけの17日で配信日は20日。夏なので隠岐の島から配信をしようと思っていた。が、これまで低く抑えられていた島根県で感染者が増えた。松江市内でクラスターが出たのである。それで遠出は控えて、配信の場所を自宅にすることにした。狭い家なので少数精鋭で、奥田さんとMarinoと3人で。邑南町は泊まりがけで行ったけど今回は家から一歩も出ず。たまにはいいよね。
朝からCDの棚を片付けてきれいに並べたりした。YouTuberって大変ね。ずいぶん前に父に作ってもらった棚、CDの重みでちょっとたわんでいる。かっこ悪いけど、ま、いっか。電話が鳴ったり、母が「ご飯だよー」とか言わないようにしっかり伝えて3人でもくもくと作業をした。
椰子の実
夏なので「椰子の実」を歌った。故郷を思う島崎藤村の詩だ。
名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実ひとつ
コロナ禍でずっと宮古島に帰れずにいるMarinoの歌みたい。配信を見ている人にもそういう人がいるかもしれない。都会で暮らす人が田舎に帰れないとかね。つらいですね。みんな早くご家族に会えますように。
「まちあわせ」を歌っているとき、部屋に飾ってある父の写真が目に入って泣けてきた。泣きながら歌ったらだめなのに。お盆だから戻ってきていたのかな。きっと大好きな機材や配線の具合を、おもしろそうだなとじろじろ眺めていたことだろう。
収録後はいつもならテイクアウトのお弁当だがこの日は母の作ったとんかつを3人で食べた。家でバンド練習やってる高校生みたいな気分だった。
第6回配信@bar NU
NUと書いてニューと読む。若者の集まるおしゃれなお店だ。先日見学に来ていた3人が自身の仕事をする傍ら週末にbar を営業、DJイベントをしたりしている。ここは出雲ビルといって、松江で一番古いビルヂング(大正4年施工)。ビルの名前が右から書いてあるのさ。
デザイナー
久保田麻琴さんはinstagramを通して、ジャケットや、フライヤーのためのデザイナーをいつもチェックしている。わたしの以前のアルバム「Lounge Roses」も、カメリアレコーズのウサギとサメの絵もブラジル人のTainá Limaさんのデザインで、instagramで久保田さんが探してきた人だ。
カメリアレコーズのロゴの相談をしたら、久保田さんにはこのごろ気になるデザイナーがいるらしい。「どこの誰かと調べたらなんと松江の人だったんだよー」だって。驚いて「誰ですか?」と聞くと「@nu_minimalという人なんだけど、知ってる?」と言われる。うわー、知ってます。それが、bar NUの飯塚博さんだった。世界中を探して見つけたのが松江の人って、偶然にもほどがある。
NU スタッフ
NUには配信機材もあるし、経験もあるので、NUスタッフに撮影、音響は全部お任せすることにした。あとでデータをもらってMarinoが編集することに。20㎏はあるわたしの重いキーボードを階段で3階まで運んでもらいみんなでセッティングをする。
エフェクター
お店のスタッフが3名もいるのでMarinoは演奏に専念してエフェクターも使ってみるそうだ。エフェクターとは音色をさまざまに変えることができる「足で踏むやつ」(笑)のことだ。ミラーボールもあるお店の雰囲気に合わせてちょっとドリーミーな「うたかた」をやろうかなと言ったら考えてくれた。
バースデーケーキ
収録は9月27日(日)、配信日は9月29日(火)だった。翌30日はわたしの56回目の誕生日。それで、音響担当の松浦賢さんが、収録後にサプライズでケーキを用意してくれていた。なんだかみんな挙動不審だと思っていたんだよ(笑)。ケーキを出すタイミングを目で合図しあっていたんだね。くぅー、おまいら、嬉しいぞー涙。
↑キャンドルの数よ(笑)
↑左から後藤健太さん、マリノ、マリコ、松浦賢さん、飯塚博さん
工房もくもく
5月から投げ銭をいただいた方の中から毎回10名様にささやかなお礼としてプレゼントを送ることを決めた。最初はCDを送っていたが、既に持っているからいらないという人が多かった(苦笑)。それで福島県相馬市の作業所、工房もくもくのグッズを選ぶことにした。代表の佐藤定広さんにはスクールMARIKOの講師に来ていただいたこともある。あまびえや、カメリアレコーズの缶バッヂやグッズなどもここに注文している。
感想
配信12ヶ月も折り返し。通常のコンサートやイベントもできるようになってきてなんだか忙しい。8月には、文化庁の助成金の申請も出してみた。まー、大変だったわ、書類とか。事業計画書も生まれて初めて書きましたよ。こういう書類作業が得意ならそもそも音楽家にはなってないのではという疑惑がありますが、今はコロナ禍。マルチタスクでいかないといけないね。
コロナが流行してからというもの初めはライブハウスの経営が厳しくなり、やがて観光業、飲食店と、負の連鎖が始まる。ああ、暗い時代になった。一条の光になれるだろうか、わたしの音楽。神様どうかわたしに力を。
お守り
↑ 隠岐神社のお守り from なかむら旅館
↑天草の下浦玩具の弁天様 ピアノバージョンは特注 from 久留米の上田さんより
いろんな方がコロナ退散そして配信がんばってとお守りをくれた。ありがとう。ありがとう。あと6回がんばります。
覚書
Mariko Hamada presents 歌島昌智 Live Stream #1
日時:2020年7月6日(月)
出演:歌島昌智(pf)
Special Guest : Marino(sax)
会場: Music Bar Birthday
音響:奥田隆
撮影:森田裕典
デザイン:Marino
Mariko Hamada Live stream vol.4〜vol.6
vol.4
日時:2020年7月23日(木)
出演:浜田真理子(key,vo)
会場:カフェ&ベッドうづい通信部(島根県邑智郡邑南町)
音響:奥田隆
撮影:杉原真司(メディアファーム)
デザイン・Movie:Marino
衣装協力:藤崎コウイチ
中原淳一デザイン浴衣:ひまわりや
選曲:1セクシィ
2君に捧げるLove Song
3月に聞く
4機関車
5Treasure
6胸の小箱
Mariko Hamada Live stream vol.5
vol.5
日時:2020年8月20日(木)
出演:浜田真理子(key,vo)
会場:自宅
音響:撮影:配信:奥田隆 Marino
デザイン・Movie:Marino
選曲:1Ain't misbehavin'
2椰子の実
3愛の風
4骨董屋
5まちあわせ
6ケサラ
Mariko Hamada Live stream vol.6
vol.6
日時:2020年9月29日(火)
出演:浜田真理子(key,vo)
ゲスト:Marino (s.sax)
会場:NU(松江)
音響:NU (飯塚博、松浦賢、後藤健太)
撮影:NU (飯塚博、松浦賢、後藤健太)
デザイン:NU (飯塚博)
Movie:Marino
選曲:1十五夜
2ミシン
3うたかた
4Since I fell for you
5あしくび
6月の記憶
歌島昌智 solo with Marino live stream
☆まだまだ続くよどこまでも。
(「配信12ヶ月4〜配信山盛りの秋〜」に続きます。)