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7月26日(日)泣いた夜|生後4日目

今日、ついに泣いてしまった。

生後4日目。
入院生活にも慣れた。

夕飯を済ませたわたしは、
また搾乳の前に会っておこうと思って
スマホとICカードだけ持って
NICU(新生児集中治療室)に向かった。

手を洗ってアルコール消毒をして、
スマホも除菌シートで拭く。
円座クッションを借りて、ぽんたの前に座る。

すやすやと眠っていてかわいい。
我が子は何時間でも眺めていられるものだな。

「ぽんた、会いに来たよ」

声をかけておしりをぽんぽんすると、
ひざをぐいーんと伸ばして
うつ伏せで寝ているおしりを高く持ち上げるから
思わず笑ってしまった。

手足が長い。
そう感じるほどに、細い。

産まれたときの体重は1891g。
予定日より2ヶ月近く早く、31週5日で産まれたわりに
大きくて、よく動くねと看護師さんに言われる。

でも、からだじゅうにたくさんの管。
肺はまだ乾いていないし、
母乳は胃まで直接チューブで送っている。

こんなにちいさなからだで、がんばって……。 

ごめんね、と言いそうになってぐっとこらえる。
それはぽんたにかける言葉じゃない。

「産まれてきてくれてありがとう」
「会えてうれしい」
「大好きだよ」

産まれた日から、そうやって話しかけてきた。

でも。
今日はなんかうまくいかない。

「産まれてきてくれてありがとう」(ごめんね)
「会えてうれしいよ」(ごめんね)
「大きくなってね」(ごめんね)
「ありがとう」(ごめんね)(ごめんね)

先週の金曜から、産休。
だからって週末どちらも出歩くことなかったのに。
もっと家でゆっくり過ごせばよかった。
新しい家具を組み立てたりしなきゃよかった。

わたしがもっと自分のからだに気をつけていれば
そうすれば、
この子がこんなにがんばらなくてもよかったのに。
急かしちゃったね。

「安藤さん、こんばんは。赤ちゃん……」
ふいに看護師さんに話しかけられて目が合った。

あ、やば。

「……大丈夫ですか?」

あーもう。
ギリギリだったのに。
こみ上げた涙はもう溢れて止まらない。

「もしかして、ずっと我慢してました?」

看護師さんがやさしく声をかけてくれるけど
別に我慢してたわけではない。

予期せぬ早さに戸惑いはしたけれど
クリスマスが早く来ちゃった!という感覚だったし

一番安い4人部屋の病室を希望したのに
他の人が全然こないことに
気を遣われているのかな…平気なのにと思ってた。

ちょっと悩むとすれば、
これから職場などに出産報告するとき
文面どうしようかなーっていうくらい。

わたしがつらいんじゃない。
他のママや赤ちゃんがうらやましいんじゃない。
ただ、この子に…
ぽんたにかける言葉につまっただけ。

あさって、わたしは退院する。
でもぽんたはここ(NICU)に残って
大きく健康に育つよう、
お医者さんや看護師さんたちにみてもらう。

わたしにできるのは、母乳を届けるだけ。
そして、1日たった3時間の面会にくるだけ。
世の中の状況次第では面会もできなくなるかもしれない。

1日のほとんどを
赤ちゃんのことを考えて過ごすんだろう。
これから2ヶ月以上、そんな日々が続くことになる。

しっかりしなくちゃ。

せめて入院中はしょっちゅう会おう。
また会いに来るからね、ぽんた。

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