S.ロズニツァ監督

近年ロズニツァ監督の映画作品が立て続けに公開されている。
昨年日本で公開された「ドンバス」、「バビ・ヤール」も鑑賞したが、
昨年末に1991年にソ連より独立したリトアニアを描いた「ミスター・ランズベルギス」(2021年製作)、そしてこの前1991年ソ連が崩壊するきっかけとなった8月のモスクワ・クーデター直後のレニングラード(現サンクト・ペテルブルク)の様子を写した「新生ロシア」(2015年製作)を鑑賞した。

どちらも当時撮られたフィルムを再編集する形で構成されている。
前者はリトアニアの初代大統領となったランズベルギス氏の現在のインタビューを通して、1989年~1991年までのリトアニアの変遷を描いている。
リトアニアがいかにして独立を勝ち取り、今があるのか。
すでに高校生だったとはいえ断片的な記憶しかない私にとって、バルト3国が今日あるのは、30年以上前の人々の信念と勇気、行動力があってのことであり、そしてランスベルギス氏のようなリーダーがいたことも大きかったのだと知ることができた貴重な鑑賞体験となった。
流された血、失われた命があったとはいえ、彼らの歴史の歩みは日本人からみても「それでよかったんだ」と思えるのである。

それに対して「新生ロシア」は、1991年8月のモスクワ・クーデター直後のレニングラードのイサーク広場や宮殿広場の市民の様子を映している作品で、町中に動揺や不安がうずまく中(当時のソ連でもテレビなどで白鳥の見湖の音楽が流れていたが、本作品でも同じく白鳥の湖が使われている)、クーデターに対して拒絶の姿勢をとったエリツィン氏(当時ソ連のロシア共和国大統領)に賛同したレニングラード市長サプチャーク氏も登場し、だんだんと市民は新しい時代が訪れることを受け入れ、それにある種の希望を見出しているようにもみえる。
少なくとも、当時そこには光があったはず、、、でも今はどこへ行ってしまったんだろうというのが、ロズニツァ監督が言いたかったことだろう。
私自身も同じように感じた。

1人の監督による1991年を描いた2つの作品だが、作品から受ける印象は真逆であった。

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