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#くらしきで暮らす 協力隊 森芸巡りに 県北へ|2024.小雪・虹蔵不見


虹蔵不見(にじかくれてみえず)

最近、取材先や講演先に行くと「どこに行けば真梨子さんに会えますか?」と尋ねてもらえるようになった。とても嬉しい。

がしかし、わたしは在宅でライター業をしているので、執筆日は基本的に自宅。それ以外の日は、取材や協力隊の活動で倉敷市内をウロウロとしているので「ここに来てくれればいつでも会えます」という場所がない。

そんなわけでいつも返答に困りながら「イベントなどがあるときにはいつでも誘ってください。いつでも会いに行くので!」と答えるほかなくて。

でも、倉敷の街はとんでもない大都会ではないので、自転車を漕いでいれば知り合いとすれ違うし、スーパーで買い物をしていても知り合いとすれ違うし、取材先は知り合いの知り合いだったりするので、偶然誰かに会える確率も高くて。そして、そのタイミングであちこちにお誘いいただいて皆さんと再会する……というながれがここ最近ではデフォルト。

今月はクリスマス会や忘年会に呼んでもらえて、ニマニマしている。イベント月間、最高!

今日は、庄地区にあるドミニカ共和国料理を中心としたお食事が食べられるお店「アルモニア」のオーナーから「まりちゃん、明日って空いている?ウチのお店でリモートワークしない?」と誘ってもらってアルモニアにいる。

サンコーチョを食べる

たった一人で関東から倉敷へ移住してきて、12か月目。まさか、学生時代に旅した中米での思い出がご縁で、倉敷の中南米料理屋さんの店休日にお店でリモートワークをすることになるだなんて、本当に不思議すぎる人生。

ちなみに、アルモニアでは本当にただただ仕事をしている。朝から市役所に出す報告書と企画書を書いて、とことこの記事の編集作業をして、関係各所とメールで打ち合わせをしながら取材依頼書を書いたりこのnoteを書いたり。

味見したエンパナーダ

合間にオーナーとお喋りしながら、アルモニアが週末に出展するマルシェメニューの味見をしたりメニュー名を一緒に考えたり。こういうときに「メキシコ→パナマ便で食べたこの料理は、もっとチーズの味がしたかも!」なんて記憶が役に立つんですよ。人生、いろんなことを経験しておいて正解。

そんなわけで、呼んでもらった場所にはタイミングさえあれば飛んでいきますので、いつでも高石真梨子をお呼びください!人と一緒にお仕事をするのも、家に引きこもるのと同じくらい(笑)好きです!!

【小雪】雪が降りはじめるころ
初侯:虹蔵不見(にじかくれてみえず)11月22日~11月26日
次侯:朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)11月27日~12月1日
末侯:橘始黄(たちばなはじめてきばむ)12月2日~12月6日

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」のおかげで、県北を堪能した2024秋

この秋は、9月28日(土)~10月24日(日)に開催された「森の芸術祭 晴れの国・岡山」を巡るべく、県北へ何度も足を運んだ。

普段は倉敷市をはじめとする高梁川流域が活動圏なので、自然と県南を中心とした生活になりがちなわたしにとって、県北を知る良いきっかけになったなと思う。

特にこの森の芸術祭(通称:森芸)は、12の市町村が開催地域ということもあってなかなかの広範囲。岡山県に暮らすからこそ、観光のような詰込み型の鑑賞ではなく、じっくりじわじわと自分のペースで森芸期間を楽しめた。

2023年12月に関東から倉敷へ移住して半年以上が経過し、倉敷をはじめとした高梁川流域に馴染んできたタイミングでの開催というのも良かったのかもしれない。今までは瀬戸内海を中心とする「うみぐらし」の魅力にばかり取りつかれていたけれども、山や盆地、森のある緑豊かな岡山県を味わえる絶好の機会。

3日間の行程

わたしは一つひとつの作品を味わうのに時間がかかるのと、あんまりのもたくさんの作品をたくさん見ると感情が追いつかないタイプなので、以下のように3日間に分けて鑑賞しました。

【1日目】
GREENable HIRUZEN→満奇洞→ふれあいセンター満奇
【2日目】
奈義町現代美術館→すぱーく奈義→グリーンヒルズ津山→衆楽園→城東むかし町家
【3日目】
PORT ART & DESIGN TSUYAMA→城西浪漫館→作州民芸館→奥津渓

ちなみに、以下のような条件です。

・全行程倉敷発着の車移動
・基本、高速道路は使用しない
・障害者割引を使ったので、鑑賞は無料
・関東でミュージアムめぐりが趣味だったわたしと、芸術祭初心者の県北出身者で鑑賞

GREENable HIRUZEN

ゴールデンウイーク振りの蒜山!同行者は「そこ、行ったことあるじゃ~ん」との反応だったけれども、「芸術祭だからこそ味わえるおもしろみがあるんだよ」と説得してスタート。写真好きとしては、川内倫子さんや上田義彦さんのお写真は見逃せないですし。

「やまぐらし」ならではのヒカリの捉えかたが、なんとも言えなく良い。ついたり離れたりしながら、大きく引き伸ばされた作品をまじまじと眺めてきた。

同行者も「このお祭りは知っているよ!プロが撮るとこんなに魅力的になるんだねぇ」とご満悦な様子。わたしはアートに、同行者は題材となっている県北の風景や暮らしに興味があるので、違った視点で鑑賞できそうでワクワク。

満奇洞

満奇洞は、蜷川実花さんの作品。わたしはお花が好きなので、蜷川実花作品も、絶対に観るぞ!と思っていた作品のひとつ。

それから、高校時代に全国の高校生の10%しか履修しないという地学を履修していたJKだったので、鍾乳洞はテンションが上がる。

自然を舞台にした芸術祭って、作品にたどり着くまでの過程も楽しめるのが良いなと思う。

洞窟内に広がる彼岸花は圧巻の景色。

蜷川実花って写真家のイメージが強かったから、こういう空間作品は新鮮だったな。

ふれあいセンター満奇

満奇洞に入るタイミングから雨が降ってきてしまったので、土砂降りのなかの移動。しかも、センター内は薄暗くて物静かで「これはハズレスポットだったかも……」と思いながら向かった展示室。

でも実際に杉浦慶侘さんの作品を見て、呆気にとられた。

森の芸術祭公式HPより

最初は真っ暗に見える写真作品も、じーっと眺めれば眺めるほど県北の山々の景色がじわりと浮かんできて。まさに、作品と対話ができる場所。私たち以外誰もいない静かな空間だったからこそ堪能できた作品。

多分、この日鑑賞した作品の中で一番好きだったと思う。
雨の中、ふれあいセンターまで足を延ばして本当に良かった。

奈義町現代美術館

奈義町現代美術館は元々アート施設ということもあり、見ごたえのある作品が多く、とても盛りあがっていた。

岡山に来て広い空に惚れこんでいるわたしにとって、空の景色を題材としたAKI INOMATAさんの作品はもちろんのこと、磯崎建築ファンにとってはミラーを使ったお部屋がとにかくツボで。好き。

アートって言葉にできない「感じる時間」がなんとも言えないものなので、こうやってnoteに残そうとしていることがもうナンセンスだなって思っちゃう。

まぁ、わたしはライターだから言葉にできないものも言葉にしないといけない場面は多々あるんだけれども。

すぱーく奈義

金沢21世紀美術館の「スイミング・プール」に代表されるレアンドロ・エルリッヒの大型作品も、良かった。奈義、なんでこんなにも反射する作品ばかりなんだろう。

大型作品ばかりなので、自分自身も作品になれる体験ができて子どもたちもワイワイ楽しんでいたのが印象的。

グリーンヒルズ津山

またまたここも、体験型作品。芸術祭らしい展示方法でアート初心者もアクティビティ感覚でアートに触れられるのも◎

作品で使われる素材が生み出す曲線は、重力とバランスがこの関係性をとりもつ媒介的要素となっているらしく。

なるほど、わたしが動くと作品が変化し、誰かが動くとまた作品が変化する。誰かと一緒に鑑賞しているからこそ、作品に深みが増す。

昨今、「映え」ブームでほかの人が写真に入る「写り込み」をマイナスに捉える人もいるけれども、ほかの人が写り込んでくれるからこそ楽しめるアート作品ってアート鑑賞とは何かを問い直してくれるような気がする。

豊洲とかでやっているチームラボとかも、誰かが動くことで作品が変化していくよね。

衆楽園

お茶をやっていることもあって、日本庭園が好き。なので、津山に来たら衆楽園は外せないスポット。

ここも衆楽園のお庭や建物を生かした作品ばかりで、景色のひとつとして作品を楽しめるのがよかったな。

個人的に、東京でも東京都庭園美術館という庭園と旧朝香宮邸の洋館を生かした美術展が大好きなので、お庭と日本家屋を生かした衆楽園は好みだったのかも。いろんなアートを見てきたからこそ、自分の「好き」の傾向が分かるようになって本当におもしろい。

衆楽園にいる時間自体が心地よい時間だった。

城東むかし町家

ここは、コンピューターアートで作られた音楽美術。聴覚障がいのあるわたしには作品のすべてを味わえなかった感があるのだけれども、水が滴り落ちると音が反響する様子を視覚的に鑑賞できたので、それはそれでおもしろかった。

この町家自体が、明治・大正・昭和と三つの世代で増改築を重ねてきた町家なので、建物を鑑賞するという観点では興味深いところだったかな。

PORT ART & DESIGN TSUYAMA

本当は2日目で終わりの予定だったのだけれども、奥津渓の紅葉が見頃を迎えたとのことでもう一日鑑賞に行くことに。

PORT ART & DESIGN TSUYAMAは、岡山県指定重要文化財。赤レンガタイルで敷かれた中庭、神社仏閣を想わせる木造の本館、石造りの金庫棟、赤レンガ倉庫が建ち並ぶ構成、味があって良い。

わたし、建築も好きなのかもしれない。特に大正期あたりの建築。前出の東京都庭園美術館も、昭和初期に完成した建物ですしね。

豪奢な天井に映し出された志村信裕の光の映像作品は、永遠に飽きずに眺めていられる。

パオラ・ベザーナのテキスタイルアートも、布だけでなくほかの材料と布や意図が織りなす複雑な形に思わず見入ってしまう。

建物も作品も、単純なようで複雑な作りをしていて、どこを見ていても飽きさせない会場だったな。

城西浪漫館

こちらは、中島病院の旧本館。大正6年に旧中島病院として建築された、正面にドームを配し、屋根や窓の細かい装飾が特徴の木造建築。内部の病室には部屋ごとに異なるデザインの暖炉があり、国の登録有形文化財になっている。

またもや、好みドンピシャ建築でうっとりしてしまう。

こちらは、アフリカやインドのアーティストの森や自然をモチーフにした作品群。夕方、薄暗い時間帯に足を運んだこととも相まって、どれも神秘的に見えてくる。

明るい時間に観に行ったら、きっとヒカリが入ってキラキラしたんじゃないかなとも思うので、ここはもう一度行っておきたかったかも。

作州民芸館

こちらも、明治レトロな建物に五人のアーティストの作品が並ぶ館内。

既存の砂の線に新たな砂の線が引かれていくムハンナド・ショノ《意味を失うことについて》や、幸せ・日常をモチーフにした作品が並んでいて、改めてこの芸術祭がパンデミック後のアートなんだなと実感する会場。

日常が、芸術祭のある風景が、この世界に戻ってきてくれて本当に良かったなと実感する。

奥津渓

クライマックスは、奥津渓へ。

ここは、森芸に行くと決まる前からずっと気になっていた紅葉スポット。
森芸期間は紅葉シーズンなのでは?と期待していたので、最後の最後にちゃんと紅葉が見られて本当に良かった。

春は桜、夏はおいしいソフトクリーム、秋は紅葉、冬は温泉や雪景色が楽しめる県北。倉敷からは車で2時間近く、公共交通機関だと3時間近くかかる距離だけれども、週末の小旅行も県内で済ませられちゃう岡山県、最強なのでは?とも思ったり。

2025年は、瀬戸内国際芸術祭が開幕予定。今年は森を攻めたので、来年は海を攻めるんだ。楽しみ。どちらにもひょいと遊びに行ける倉敷も、アート好きにとっては最強です。







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